開拓民のコート

 

白石ちえこ

 
 


北海道札幌市 旧山本理髪店

店の外から馬車の行く音や、活気のある、通りの喧噪が聞こえてくる。
山本理髪店にはお客さんが一人。横たわって顔を剃ってもらっている。
カミソリの歯が鈍く反射している。
理髪店の片隅に、一着のコートがかかっていた。
黒くて、分厚くて、ずっしりと重そうなコートだ。
祖父のコートもそうだった。

店に入ったときは薄曇りだったのに、外はいつのまにか吹雪きになっていた。
辺り一面、白く霞んでいる。
町には、もう誰もいなかった。

 

 

 

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