島影 22

 

白石ちえこ

 
 

千葉県 久留里

城のある町へ向かった日。房総半島旧道。
白い鳥がたくさんとまっている樹が遠くに見えて、近づいてみると鳥ではなくて大きなモクレンの花が咲いていた。
その近くにあった樹は土に埋まった蹄のある動物の頭部にも見えた。
幹がぐんぐんとのびた角に見えたり、または、木肌を押し破って出てきた白猿が東に向かって頭を下げ、手を合わせて拝んでいるようにも見えた。
鏡の中の、もうひとつの国に迷い込んでしまったような奇妙な一日だった。

 

 

 

島影 20

 

白石ちえこ

 
 

山形県 朝日町

大沼

山岳修験者によって開かれたという、1300年あまりもの長い間、守り伝えられてきた大朝日岳の神域です。
沼を浮遊するいくつもの小さな島々の不思議な動きで国の吉凶を占い、歴代の領主や政権の祈願所でもあったといいます。
時の支配者の願いを叶えてきた神池。沼を囲む森を歩いているとどんどん時間がさかのぼっていくようで、今、自分がここにいる不思議を思いました。

 

 

 

島影 19

 

白石ちえこ

 
 

愛知県 佐久島

一色の港から定期船で佐久島へ。
地図をたよりに、島のことをよく知らずに渡った。復路の船の時間まで、静かな島を歩いていると草はらに気持ちよさげに草を食む山羊がいて、目が合った。
ずいぶん後になって、この山羊の名はビリーだと知った。
島にはもう一頭、山羊がいて、名はノン、というらしかった。
たしかにのんびりとした島だった。
この写真を撮ったのは2007年。
もうずいぶん前のことだ。

 

 

 

島影 16

 

白石ちえこ

 
 

山形県 鶴岡

朝、鶴岡の町から月山をぬけて山形駅へ向かう。
橋をわたるとき、まっ白なかたまりがゆっくりと川に沿い、上流からおりてくるのが見えた。
車を停めて橋に戻り、山からくだる霧を眺めていた。
十分たらずのうちに霧はあとかたもなく消えてしまった。
なにごともなかったような景色に戻った。

 

 

 

島影 14

 

白石ちえこ

 
 

千葉県 鋸南

房総半島へ行くたびに挨拶していた、国道沿いの大きなサボテン。
ズズ、ズ、と夜中に散歩していそうに思えた。
昨年、姿が見えなくなった。
とうとう、旅に出たのだ。
誰もいない遠くの夜の海岸で、
月の明かりに照らされて
そっと海を眺めているこのサボテンを
わたしは想像している。