島影 28

 

白石ちえこ

 
 


長崎県諫早

田んぼといえば、里山の田園風景思い描いていたが、長崎県諫早には、どこまでも続くまっすぐな道と大きな四角い田んぼが広がっていた。
地平線のむこうから洋犬も走ってきて、ここには、いつか雑誌で見たオランダのような異国の風景があった。

 

 

 

島影 27

 

白石ちえこ

 
 


千葉県船橋市

ある年。
団地の交差点にあった竜舌蘭。放射状の葉の真ん中から、みるみる茎がのびていき、
あっと言う間に団地の三階に届くほどになった。
やがて大きな花房に黄色い花が咲いた。その巨大さは大昔の恐竜時代の植物を思わせた。
竜舌蘭の開花は30~50年もかかり、そのあとは枯れる、と新聞で知った。
この年、関東のいたるところで竜舌蘭の開花が見られ、新聞の記事になっていた。
火星大接近の年だった。

 

 

 

島影 26

 

白石ちえこ

 
 


千葉県市原市

ある日。
ずいぶん前に撮影したネガフィルムをようやく現像した。乾燥のため、濡れたフィルムをリールから引き出すと、見慣れない生きものの姿が写っていた。ものすごくしっかりと写ってはいるが、撮った覚えのない、知らない動物のようだった。気持ちがざわっとした。

 

 

 

島影 25

 

白石ちえこ

 
 


大阪 木津川 渡し船

大阪の渡船。
周辺には工場や造船所。川は静か。
どこからか自転車の青年、買い物かごをさげたおばあさん、喪服の女性。
小さな船に一緒に乗りこみ、陸を離れた。
対岸の船着き場はすぐそこに見える。
ほんの数分、水の上。船を降りれば
みんなまた、別々の方向に向かってゆく。

 

 

 

島影 22

 

白石ちえこ

 
 

千葉県 久留里

城のある町へ向かった日。房総半島旧道。
白い鳥がたくさんとまっている樹が遠くに見えて、近づいてみると鳥ではなくて大きなモクレンの花が咲いていた。
その近くにあった樹は土に埋まった蹄のある動物の頭部にも見えた。
幹がぐんぐんとのびた角に見えたり、または、木肌を押し破って出てきた白猿が東に向かって頭を下げ、手を合わせて拝んでいるようにも見えた。
鏡の中の、もうひとつの国に迷い込んでしまったような奇妙な一日だった。

 

 

 

島影 20

 

白石ちえこ

 
 

山形県 朝日町

大沼

山岳修験者によって開かれたという、1300年あまりもの長い間、守り伝えられてきた大朝日岳の神域です。
沼を浮遊するいくつもの小さな島々の不思議な動きで国の吉凶を占い、歴代の領主や政権の祈願所でもあったといいます。
時の支配者の願いを叶えてきた神池。沼を囲む森を歩いているとどんどん時間がさかのぼっていくようで、今、自分がここにいる不思議を思いました。