島影 41

 

白石ちえこ

 
 


群馬県桐生市

 

暑かった夏の日
いつまでも分かれ道を右へ、左へ、
うろうろした
団地の先に、ふと、古い消防署が現れた
見たことのない火の見櫓、監視塔
半円の通路
ファインダーを覗くと、時代も場所もわからない夢の中の風景のようであった

 

 

 

島影 40

 

白石ちえこ

 
 


千葉県旭市

 

旧道沿いの食堂のテレビ。
ふいに目を疑うような映像が飛び込んできた。
ビールを飲んでいたおじさんが、チャンネルを野球に変えろ、と言った。
そこにいた誰もが、現実のことだと思わなかった。
2001年9月11日のこと。

翌朝、窓から太平洋を見ていた。
水平線が見えた。
海の向こうには空しか見えなかった。
いつもと同じ。
胸が苦しくなった。
今も、胸がざわざわしている。

 

 

 

島影 39

 

白石ちえこ

 
 


北海道札幌

 

冬の動物園。
凍ってすべる坂道を、柵にしがみつきながらようやく下って、
小さなプールにたどりつく。
ぐるぐると同じ方向に向かうペンギンたち。
天からは雪。
空を飛ばない鳥は水の中を飛んでいた。
印画紙に現れたペンギンは、群れになって暗い海峡を渡っていった。

 

白石ちえこ写真展

 

『銀の影』

2022年1月29日〜2月9日
東京 ギャラリー ユニコ
http://gallery-unico.com/

『町の光景、島の風景』 1998 – 2021

2022年1月14日〜2月23日
大阪 G&S根雨 
https://www.gsneu.info/

『À la Frontière des Songes』

〜2022年1月30日
フランス パリ galerie Écho 119
https://www.galerieecho119.com/

 

 

 

島影 38

 

白石ちえこ

 
 


沖縄県金武町

 

夕暮れ時。
一人トボトボ、カメラをさげて歩くとき。
わたしはここで、一人で、一体何をしているのかな。
ふいに物寂しさが襲うとき。
窓から灯りがこちらを覗き込み、
「早くおうちへお帰り」。
少しユーモラスに。

 

 

 

島影 35

 

白石ちえこ

 
 


新潟県新潟市

その浜辺には、時間が止まったような静けさと真昼の明るさがあった。
すべてのものが長く影を引きながら、静かにじっと、砂の底に沈んでいくのを待っていた。
ところどころの木の柱はどこかの部族のまじないのようにも見えた。
砂には、わたしが歩いた足跡だけが浅く残っていたが、やがてそれも消えていった。