白石ちえこ
窓
ここは海だった場所
窓から見える空
いつかこの空を分断する、人工スキー場があっただろうか
蜂の羽音のようなオートレース場のエンジン音ももう聴こえない
まぶたを水がひたしていく
その小さな岬にたどり着いた頃、日はすでに傾きかけていたと思う。
遠浅の磯にはごろごろとした石ころがころがっていて、なにか珍しいモノが見つけられそうで、下を向いて歩いた。
海と空の間にふと、一本の白い線が見えた気がした。
辺りが暗くなりはじめると、線は次第にくっきりと強くなってきて、それが小さな灯台からの光線であったと気がついた。
まっすぐに一点を照らしている。
おもたい雲が空を覆い、日が沈むと星も月もなく、海も真っ暗になった。
光線はますます力を増すようにまっすぐにのびる。
灯台と光線と海は不思議な三角形を作り出す。
時間が止まったような暗がりで、小さな灯台が照らし出す波頭がうごめいていた。