島影 50

 

白石ちえこ

 
 


新潟

 

海からの強風で国道に砂が押し寄せていた。
誰もいない浜を歩くと捨てられた冷蔵庫や季節外れの海の家が半分砂に埋まっている。
こんなに埋まってしまうまで、どのくらいの時間がたったのだろう・・。
立ち止まってぼんやり景色を見ているうちにも砂は吹き寄せる。
わたしも足元から砂に埋まっていく恐怖がわいてきて足を踏み出す。
歩くうち、轍がついた浜辺に出た。遠くに紺色の海が鈍く光っている。
ヒトの気配に触れて、少しほっとした。

 

 

 

島影 48

 

白石ちえこ

 
 


栃木県足利

 

暑い夏だった。
渡良瀬川にかかる橋から町を眺めていたら、ひょろっとそびえる給水塔が目に入った。
給水塔は古い団地の中心にあった。
足もとから見上げる給水塔は、巨大な花のめしべのようであった。
自分が小さな虫になったように感じた。

 

 

 

島影 43

 

白石ちえこ

 
 


北九州市小倉

 

雨。小倉昭和館で映画を観る。
二本立て千円だったか。
一本目の『舟を編む』を観終わると、灯りの戻った客席に匂いがたちこめた。
お客さんが幕間の休憩時間にお弁当やお惣菜の包みを開けていた。
近くの市場で買ってきたものに違いない。
わたしは二本目を観るのをやめた。
映画館を出て、旦過市場へ向かった。