飼育

 

塔島ひろみ

 
 

郵便局で用をすませ家畜を連れて帰路につく
たまった洗濯物がまつ 43号棟にむかい
首に括りつけた紐を引く
家畜は太って重く膝が悪い
家畜にあわせてゆっくり歩いた
旧棟解体後放置された空地のまん中を
ふれあい通りという名の道が通る
両側に旧棟があったときについた名だ
空地には雑草が咲き乱れ 小鳥たちの絶好の遊び場となっている
疲れたので少し休む
「今日もラーメンでいいね」とぼっそり言うと、家畜が笑った
ふいに思い立ち 紐を後ろに強く引く
家畜は首が締まり、苦しそうに咳をした
ここは私達が50年ほど住んだ16号棟のあった辺りだ
広大な地面の上に空は大きく
ずっと先に11階建ての新棟が見える
黄色い花がいっぱい咲いていた
スズメが棒杭の上に立ち 歌の練習をするように 大きく長く鳴いていた
投げ込まれたゴミをカラスがボリボリと食っていた
どこかに池があった気がする
池の場所をぼんやり探しながら
私は家畜のそばににじりより 
もう使い物にならなくなった尻を叩く
肩を抱く
家畜はイヤイヤをしてそっと逃れた

 

(5月某日、高砂で)

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です