障子の張り替えが連れてきた闇と温もり

 

ヒヨコブタ

 
 

強くなりたいと
思うときがある
こころの芯のぶぶんで

猫が破り散らした障子をはりかえていたら
母にされた嫌なことが次々と思い出されてしまった
なにくそとのりを剥がすのだが
一度よみがえった悲しさが
蓋を開けたのか次々と

のりをごりごりむしりとる
なにくそと黙々作業をする

母にはその記憶はないらしい
腹が立ってくる
なにくそとその度に手を動かす

わたしを産んだそのときに
彼女にはつらいことがあったらしい
だからってとごりごりむしりとる
剥がした障子紙を破る

夕暮れも同じときがある
とても美しいその時刻
外に出されて不安だったこと
なぜ怒りをかったのかわからず
さみしさと不安との戦いだったこと

見かねた近所のおばあちゃんに
部屋に招かれるとき
あとでさらに怒られることに怯えながら
緑茶をゆっくり飲んだ
静かにそのひとの暮らしを覗く

そのおばあちゃんが好きだったチョコレートを
時々もとめる
一口ずつ頬張る彼女は
もうこの世にはいないのだけれど

たまにしか帰ってこないその人の息子家族を母は
親不孝だといった
冷たいと
けれどもそのひとたちは
とても優しいひとたちだった
静かでガミガミなにかをいうような人でもなく

個人タクシーの車をみがくおじいちゃんは
もっと穏やかで
ずっと傍で眺めているとニコニコして話しかけてくれる

こどもじだいには
そんな大人たちに観察されては
わたしも彼らを思っていた

大人のいう評価とことなる思いを持っていた

夕暮れの美しさとこころぼそさには
温もりもある
さみしいところにつれていかないで
わたしはこころのなかでいまも時々唱える
美しさのなかのさみしさ

 

 

 

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