村岡由梨
私は、人間をやめた人間だった。
私は、死んだ小鳥の化身だった。
私は、金色の神だった。
私は、7色のビンの精だった。
私は、白黒のキャンバスだった。
私は、分娩台にのった処女だった。
私は、傷ついた少女だった。
私は、母親だった。
私は、3色の立方体だった。
私は、瀕死の猫だった。
私は、私の過去を燃やしてしまった。
小さな上映開場の一番後ろの席で、
娘の花が泣いていた。
スクリーンに映る私(たち)の物語を見て、
薄暗闇の中、小刻みに肩を震わせて
花が、泣いていた。