車椅子の少年

 

有田誠司

 
 

独りぼっちで死ぬのは怖いから
君が死ぬ時には僕も死ぬよ

息苦しくて目が覚めた
マスクもしてないのに
呼吸するのが苦しいんだ

僕は家の中の酸素が少なく感じ
フラフラしながら外に出る
大きく息を吸い込むけど息苦しくてたまらない

また同じ夢を見た

小学校の時の友達 坂本君だ
僕は思ってる事が上手く言葉にして喋れない
人が普通に出来る事が出来ないんだって

お母さんや学校の先生がそう言ってたよ
僕のたった一人の友達だった坂本君

小さな頃は生きてる事って不思議でさ
死んだら人はどうなるんだろ
この感情はこの感覚は
何処に行くのかな
怖いよ怖くて怖くてたまらないよ

そんな話をして震えてた

坂本君は僕に言ったんだ
独りぼっちで死ぬのは怖いから
君が死ぬ時には僕も死ぬよ

坂本君の車椅子を押しながら
いつも一緒に学校から帰ってた

動物園みたいな学校で
少し人と違う姿をしてる人ばっかりだった
皆んな仲間だからねって先生は言った
仲間なんかじゃないよ
僕はそう思ってたけど
誰にも言えなかった

独りぼっちの僕に
優しくしてくれたのは彼だけだった

繰り返し同じ夢を見る
あんなに怖いって言ってたのに
一緒に死ぬよって言ってたのに

息苦しくて目が覚めた

坂本君の車椅子を押しながら
話をしてる
また同じ夢を見た

車椅子の少年はもう居ない

 

 

 

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