閑さんから教えてもらった
リヒテルの弾く
シューベルトのピアノソナタ第21番変ロ長調D960の第2楽章を
繰り返し聴きました
閑さんは言いました
シフも名演です
最近のものでは内田光子
ホロビッツの最初の録音も好きですが極めつけはリヒテルでしょうか
繰り返し聴きました
31歳で死んだ男の死の2カ月前の9月に書かれた
曲を繰り返し聴きました
第2楽章は
暗く沈んで始まって
だんだんと透き通っていって
一人の男の死の後に残すべき曲と思われました
リヒテルという
ロシア人の弾くピアノを聴いていると
広大な大地が見えてきました
小鳥の気持ちがわかるのだと思われました
リヒテルには
わたしは
休みの日には
モコと浜辺を歩きます
わたしは休みの日にはモコと浜辺を歩きます
風が通り抜けます
風が胸を通り抜けます
もうわたしはいなくなって
浜辺をモコがひとり歩いていくのを見つめます
もうわたしはいなくなって
浜辺をモコがひとり歩いていくのをうしろから見つめます
風が胸を通り抜けます
磯ヒヨドリが遠くで鳴いています
わたしはすべてが始まってしまったと思いました
わたしは浜辺でもうすべてが始まってしまったと思いました
※この作品は以前「句楽詩区」で発表した作品の改訂版です。