「はなとゆめ」09 静かな所

 

静かなとこ
静かなとこ

静かなとこ

には

ケージのHarmony XIII for Violoncello and Piano が聞こえていた

繰り返し聞こえていた
繰り返し聞こえていた

階段をゆっくり降りていった

死んだ祖母が
日焼けした皺くちゃの祖母が

着物を着て窓際に立って
いた

笑っていた

にんまりと笑っていた
静かにわたしを見て笑っていた

静かなとこ
静かなとこ

静かなとこには

わたしの寝たきりの母も繋がっている

きっとわたしの姉も繋がっている
わたしも繋がっている

静かなとこ
静かなとこ

静かなとこ

には

花が咲いていた
静かなとこには白い花が咲いていた

ラッキーが吠えていた
ヒバリが空高く鳴いてた

ヒトは
特別な動物でなく

ほとんどほかの動物と異なるところはありませんが
ひとつだけ異なるのは

ヒトは他界を夢見る動物だということです


谷川健一さんは語っていました
老いた谷川健一さんが他界ということをテレビで語っていました

津波で東北のヒトたちがたくさん亡くなりました
津波で東北のヒトたちがたくさん亡くなりました

津波で小舟がたくさん流されました

静かなとこ
静かなとこ

静かなとこ

には

たくさん小舟が流れ着きました
たくさん小舟が流れ着きました

たくさん小舟が流れ着きました

死んだ祖母が
笑ってました

日焼けした皺くちゃの祖母が笑っていました
着物を着て窓際に立っていました

にんまりと笑っていました
わたしを見て笑っていました

静かなとこ
には

白い花が咲いていました
静かなとこには白い花が咲いていました

 

 

 

※この作品は以前「句楽詩区」で発表した作品の改訂版です。

 

 

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