静かなとこ
静かなとこ
静かなとこ
には
ケージのHarmony XIII for Violoncello and Piano が聞こえていた
繰り返し聞こえていた
繰り返し聞こえていた
階段をゆっくり降りていった
死んだ祖母が
日焼けした皺くちゃの祖母が
着物を着て窓際に立って
いた
笑っていた
にんまりと笑っていた
静かにわたしを見て笑っていた
静かなとこ
静かなとこ
静かなとこには
わたしの寝たきりの母も繋がっている
きっとわたしの姉も繋がっている
わたしも繋がっている
静かなとこ
静かなとこ
静かなとこ
には
花が咲いていた
静かなとこには白い花が咲いていた
ラッキーが吠えていた
ヒバリが空高く鳴いてた
ヒトは
特別な動物でなく
ほとんどほかの動物と異なるところはありませんが
ひとつだけ異なるのは
ヒトは他界を夢見る動物だということです
と
谷川健一さんは語っていました
老いた谷川健一さんが他界ということをテレビで語っていました
津波で東北のヒトたちがたくさん亡くなりました
津波で東北のヒトたちがたくさん亡くなりました
津波で小舟がたくさん流されました
静かなとこ
静かなとこ
静かなとこ
には
たくさん小舟が流れ着きました
たくさん小舟が流れ着きました
たくさん小舟が流れ着きました
死んだ祖母が
笑ってました
日焼けした皺くちゃの祖母が笑っていました
着物を着て窓際に立っていました
にんまりと笑っていました
わたしを見て笑っていました
静かなとこ
には
白い花が咲いていました
静かなとこには白い花が咲いていました
※この作品は以前「句楽詩区」で発表した作品の改訂版です。