「はなとゆめ」10 闇取引

 

この
世の

闇のなかで

手を
握っていた

この
世の

闇のなかで

女のヒトの手を握っていた

震える手を握っていた
懐かしい匂いに鼻をうずめていた

懐かしい
懐かしい

懐かしい


わたし思った

懐かしい匂いを嗅いでいた
懐かしい匂いを嗅いでいた

もう死にたいと女のヒトはいった
もう死んでるんだと

わたし
思った

女のヒトも
わたしも

この世に生まれてしまったから
この世に生まれてしまったから

もう死んでるんだとわたし思った
もう死んでるんだとわたし思った

この
世の

あちらとこちらで

闇取引は
あり

この
世の

かたすみの闇の
なかに

星を
見ました

いくつも星を見ました
いくつも星を見ました

懐かしい

思いました
わたし懐かしいと思いました

わたしいくつも星がひかっていました
わたしいくつも星がひかっていました

 

 

 

※この作品は以前「句楽詩区」で発表した作品の改訂版です。

 

 

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