木洩れ日のなかに
モーツァルトの地獄があります
ブレンデルは
幻想曲 ハ短調 K.396から
ロンド イ短調 K.511の小道へ抜けていきます
チキンスープ食べました
今日もチキンスープ食べました
コンソメと
チキンと
舞茸と
漂白剤を買わなきゃ忘れずに
木洩れ日のなか
小道へ抜けていきます
アスファルトのうえにモコはしゃがんで放尿して
上目遣いにわたしを見ます
ブレンデルの瞳がわたし好きです
ブレンデルの瞳がわたし好きです
木洩れ日のなかこの世に起こったこと
すべてを見た
瞳で
沈黙して
口籠って
ブレンデルはそして笑いました
アルフレート・ブレンデルの眼鏡の奥の瞳が笑いました
子供の
日の
夏の
雄物川の
川底の
魚たちと
川底から水面を見上げたとき太陽が光っていました
川底から水面を見上げたとき水面に太陽は光っていました
水色はすべてだと思いました
光り
輝やいていました
そして
わたし口籠って
笑いました
そしてわたし笑いました
※この作品は以前「句楽詩区」で発表した作品の改訂版です。