「はなとゆめ」12 水色

 

 

木洩れ日のなかに
モーツァルトの地獄があります

ブレンデルは

幻想曲 ハ短調 K.396から
ロンド イ短調 K.511の小道へ抜けていきます

チキンスープ食べました
今日もチキンスープ食べました

コンソメと

チキンと
舞茸と
漂白剤を買わなきゃ忘れずに

木洩れ日のなか

小道へ抜けていきます
アスファルトのうえにモコはしゃがんで放尿して

上目遣いにわたしを見ます

ブレンデルの瞳がわたし好きです
ブレンデルの瞳がわたし好きです

木洩れ日のなかこの世に起こったこと
すべてを見た

瞳で

沈黙して
口籠って

ブレンデルはそして笑いました
アルフレート・ブレンデルの眼鏡の奥の瞳が笑いました

子供の

日の
夏の
雄物川の
川底の

魚たちと

川底から水面を見上げたとき太陽が光っていました
川底から水面を見上げたとき水面に太陽は光っていました

水色はすべてだと思いました

光り
輝やいていました

そして
わたし口籠って

笑いました

そしてわたし笑いました

 

 

 

※この作品は以前「句楽詩区」で発表した作品の改訂版です。

 

 

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