みえてみえない、あなたと

 

藤生すゆ葉

 
 

私には大切な山がある
暑いといえば風が吹き
寒いといえば陽が照らしてくれる

こころがグレーになると鳥が音楽を奏で
こころがグリーンになると風と木が手を繋ぐ

一枚の水音 ありのままの姿が濃淡をつける
一瞬の静穏 自然の先端が目前を通り過ぎる

 
人工の音が 聞こえる

 
他の声が身体に溶け込み こころの色調が変化する

鳥が音楽を奏で始め 陽が照らされる

 
人間の音が近づく 近づいた
やわらかい挨拶とともに空気が前進する

人間の音が遠のく 遠のいた
小さなひと粒の光から言葉が渡される

漂う空気のなかで泡に変わり
風を纏わせ 色をも遊ばせる

いつの間にか 風と木が手を繋ぐ
足元の青みずの子供も

自然が
人が
あなたが
寄り添う 山がある

 
平らな地面に足をのせる

 
笑って 笑って

 
無限の気配が
遠く彼方のほうから
微笑みかけた

 

地上の姿から抜け出した
あなたのような気がした

 

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草花は虹を映し
時を連ねる木々が佇む
大切な 山

 
自然が創り出す色彩を感じながら足を進める
自然の中にいる私なのか
私は自然そのものなのか
境目がどこかへ去った時間があった

一粒の雫が落ちるように スマートフォンが鳴る
祖母の訃報の連絡だった
行年100歳 だった

身軽になった彼女は
最期にどこを散歩しているのだろう、か

浮かぶ道を景色が横切り
離れた自然を体感する

私は今生きている
そう思った

 
葉擦れに新しい音がそっと重なる
親子が通り過ぎた

私を追い越し見えなくなる寸前で
お姉さんも頑張って
と香る響きをくれた

もちろん自然も

太陽と入れ替わるように
瞳を交わした方々が集まる
内緒で宴を計画してくれていた

笑い声が絶えない時間を 共にした

ふと空を見上げる

煌めきあう星たちが
見守っているようだった

どんな時もたくさん笑うのよ

そんな言葉が寄り添っていた

 

 
ありがとう

 

 

 

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