透明な風

 

有田誠司

 
 

ラムレーズンの様な星屑が
とりとめもなく散らばる丘を歩いた
ギリシャ神話を語る
中古品の三日月 

恐ろしい程の孤独な夜に
羽根のペンで書いた言葉
それは何の概念も持たない
昇っては沈む太陽の軌道

僕は文脈と行間の中で
静かに息をしていた
欠落した感性が脱落を纏い
理不尽を抱き企みを育てる

僕が間違えたドアを開けたとしても 
誰一人として気が付かないだろう

そもそも間違えなんてものは存在しない
僕は書き上げた小説を封筒に入れ
火を付けて燃やした

それで全ては完結する
動も静もなく 文字に切り取られた
時間だけが 其処に横たわっていた

目には見えない透明な風の様に
通り過ぎてゆく 

石造りの塔の下に流れる水で
喉を潤おす野良犬の目には
あの日の星が映っていた

 

 

 

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