鳩尾マンバ

 

道 ケージ

 
 

あなたがこうなったのは
私のせいでもあるが

キモい、うるさい、しつこい
息のように繰り返す
バリバリマンバ
「この貧乏人が!」

子鹿のような
華奢なあの人はいない
まぁ、フサフサの凛々しい男も
いないのだけれど

救う術の
ハグしたら
鳩尾
うずくまり
トシャ、トシャ、トシャ

気がふれて
呟き続けている

ご飯作らなきゃいいんだ
掃除しなきゃいいんだ
期待しなけゃいいんだ
あー、作らなきゃよかった
あー、生まれなきゃよかった

何度も何度も
聞かされて

シャワーを止めにくる
水もったいない
お湯もったいないとガスを切る
カーテンをシャーッと
カッターで身を翻す
目が怖い

この頃、人を殺す夢を見る
やたら乱射するから
当たらない
そんなことにホッとして

風呂場に多くの人がいる
網戸のあたり
彫りが深いので見惚れる
なぜ君たちは
絵画から抜け出せたの

セスを求めて
ベランダで叫び
布団を飛ばす
色んなものが落ちていく
当たらなきゃいいが

植木に語る時
正気を取り戻す
「いい子ね」
水をやる手が優しい

朝寝すると起こされる
「なぜ休んでんだよ
 こっちゃぁ一生、安らげないんだよ」

妬む嫉む羨む
「なんで留学しなかったのかな
 留学してたら
 アンタと会わずにすんだ
 もう何で生きてるかわかんない」

人は人。生きたいように生きれば
「一ミリも喋らないで
 いいことなんてない
 死んでやる」

私のせいではあるのだが
互いに嘘に嘘を重ね
互いに狂いあう

帰ってくると舌打ち
お笑いでバカ笑い

キモい、うるさいを
息のように繰り出している

 

 

 

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