ドクス

 

爽生ハム

 

 

話術にたけた人と帰り道が一緒になり、SONYのイヤフォンを外す。
狐になりたいと思いますかって聞いてくる奴だったので、小指切り落とすぞって返す。
笑いながら、その人は加工された肉を頬張り、頬骨を鋭角に発達させ外国人になりました。
最近、如何ですかとか言うな。近況報告は此の世でいちばん嫌いな文字の並びだ。それがはじまりなのも許せないが、頭切り落として平謝りで金銭を得るだけの理由は私にもある。
二人のはじまりをはじめる為に、実在しない近況を語る。
白い狗が私の中に入ってきた一夜の事を伝えます。それを今、振り返る。

色彩が窮屈になってきたのを感じ珊瑚を食べていましたら、実装した軍人が海から歩いてきて、私に、
「いつ終わるんですかね。辻褄あわせは。」
と聞いてくる、何処から来たのかもわからない軍人に話を合わせようと口を動かしても、ノイズしかでてこず、恐る恐る海の水にうつりそうな顔を見れば、私は白眼の御影に化けていた。化けた私は軍人の骨をしゃぶり続け、軍人の口を封じた。そして、お互いの残された毛が波に飲まれ、吐くほど飲まれていったのを裏側にあった黒眼で、小さな穴から覗いていた。
思い出せる時点までを話し終え、少し安堵する。あの頃の私。

「カヌーが水を切ってゆくのは、よくある方向への眼の置き方ですね。」
「そうですね。」
「だいたいの人は見開いたページを求めますから。」
「似てますね。」

指定修理工場に向かうバスの中で、納得のできない作業員が水に浸かって錆びつくのを待ってる。けど、そんなもんは坂道に負けて、後方の窓硝子から大量の水を街角まで流すし、街の最後の角に辿り着くまでに乾いて斑点になっちゃう。
それはもう気持ち悪い斑点で、虫がいるって想像しやすい感じ。
虫がいる人はほんと不幸だね。虫を飼って体に植えつけている、虫がいなくなるのは何年後か、わからないまま整える。
バスが坂道を登る度に傾斜を削り塔を造る。塔のくびれに見惚れる行きはいいが、帰りは落下するだけ。
過ちを繰り返す、繰り返しては偏狭な姿に私を寄せて近況を遺そうとする、そうだろ、私の話術は今日も。そして明日も、健全に違いない。

 

 

 

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