工藤冬里
線路内で傘を差した女が土筆を採っていた
男も久米土と思える線路脇の泥を裏返した袋で掴んで走って逃げた
移動が思わしくなくなった世界で未だに観光を続ける群れがいると旅の不可能が際立ってくる
シャブ喫茶も値上げして暮らしにくさと移動しにくさが定点を襲う
観測はプルーストが得意としたものである
その男は旅に行けない、と「私」は書く
その男の走り方はよくなかった
歩くほうがまだましだった
日の果ては
近づいてくるものではなく
満ちていくものだからだ
つぎつぎとクリアしてゆく障害走のようなものではない
一歩ごとに地雷を踏んで、と女は呟く
#poetry #rock musician