原田淳子
どっどど
と風が唸るとき
ふあんふあん
発作のように胸が疼く
きみと丸くなり
嵐が過ぎ去るのを待つ
ふあんふあん
あれは葉が揺れているだけ
ふあんふあん
かなしみが泣いてるように聴こえるのは
ふあんふあん
わたしの哀しみのファンが回っているのだろう
わたしのふあんが漏れたのか、
きみはさいきん、遠吠えをするようになった
あおーんあおーん
猫であることを忘れたように
あおーんあおーん
わたしがみえなくなると
難破船のように部屋を彷徨う
あおーんあおーん
あいごうあいごう
애호애호
猫の認知症があるという
きみをひとり哀号の船に乗せないように
わたしはいつもきみといよう
嵐のあと
窓をあける
風を残した
隣の畑にアラセイトウが揺れている
春だよ
18かいめの春だね
もうすこしで
地めんもあたたかくなる
きみはいつまでも
陽ざしのなかにいて