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今井義行
これから、型式的なことを、書きます。
将来性など、ゼロの、僕が
24歳エス嬢に、婚姻を申し込む──。
「こんな、真正エムの僕ですが
100分間だけ、夫婦になってください」
「まあね、良いわよ!」
グループホームのベッドの上が聖なるチャーチ。
「僕は、生涯に1度だけ、結婚してみたいんです」
「分かったよ。何度も、うるせえ、な」
聖なるチャーチの中で、僕は
なつめさん、の左の薬指に銀の指環を嵌める。
なつめさんは、身長170cmのスレンダーな美貌の人。
「真正エムは、先ずわたしの指令通りに徹底的に御奉仕すること!」
仰向けになっている、なつめさんの上へと、僕はしなしなと跨がってゆく。
「よしゆき。わたしの股間を
これから、徹底的に、お掃除しなさい!」
「はい。なつめさん!」
「それから、お尻の穴を、徹底的に、お掃除しなさい!」
「はい。なつめさん!」
「まだまだ、御奉仕の仕方が足らないね。では、千切れるほど乳首を噛みなさい!」
「はい。なつめさん!」
僕は、ことごとく、なつめさん、の指令に従ってゆく。悦びの、ひと時。時々、烈しい蹴りや平手打ちなど浴びながら…。
「今度は、倍返しで、わたしが、よしゆきを嬲ってやる番!真正エム野郎!」
── エスエムなんて、あまりに型式的なプレイだということは、もちろん承知しているつもりだ。けれども、僕は、なつめさんにどうしても躰を委ねてしまうのだった。全方位的に、誰かに躰を委ねてもよい空間なんて、この世には、滅多に存在しない、と思うからだ。
「お前、アナルセックスは好きか?真正エム野郎!」「はい。大好きです、なつめさん!」なつめさんは、僕の首根っこを摑んで繰り返す。「お前、アナルセックスが好きなんだな。真正エム野郎!」「はい。大好きです、なつめさん!」「じゃあ、四つん這いになって、わたしの方にケツを向けて、なつめさん、ください!と、心からお願いしろ!」「はい。承知致しました、なつめさん!」
「なつめさん!お願い致します。僕のお尻の穴をめちゃくちゃに犯してください!」
「ペニスバンドにローションをたっぷり塗って今からめちゃくちゃにしてやるから、大きな声を出して、よがれよ!」「はい。承知致しました、なつめさま!」……………
それから、僕は、突かれて突かれて、躰が、どうにかなりそうになり、「あーん、あーん!」と烈しく啼いてしまった…。
そんな時、僕は…ふっと思い出してしまった…のだ。グループホームの優しいスタッフ、山神さんのことを。
山神さんは、僕と同年代の御婦人で、毎週木曜日の午後2時に僕の居室に来てくれて僕の渡したメモに添って近所のスーパーで1週間分の食料品の買い物代行をしてくださる方だ。その山神さんが、今の僕の姿を見たら「醜態」だと思って、僕のことを永遠に毛嫌いすることになるだろうか。「福祉」のちからは、個人の至極プライベートな「性癖」までもは、守り切ることはできないものなのだろうか?僕には、山神さんに烈しい悲鳴を浴びせられない、自信というものがない…。
100分間だけの結婚期間の終わりを告げるベルが鳴った。
「なつめさん、どうもありがとうございました。とても嬉しい時間でした。結婚期間は終わったので、銀の指環は外して、そこら辺に放り投げていただいて結構です」
「いえ、わたし、この指環、いただいておくわ、今日の記念に。こちらこそ、ありがとう!」
それから、僕たちは、着替え、手を繋いで、デリヘルの営業車の待つ駐車場へ駆けていった ──。
(2024/04/10 グループホームにて。)