芦田みゆき
逃げるように陽が落ちて、
湿ったベルベットの夜が、
あたしの皮フを締めつける。
その日、
あたしは衝動的にバラの花束を買った。
バラは冷たかった。
あたしは、バラと一緒に夜の公園へと入っていく。
一枚、
また一枚と、
闇の中であたしは白を脱ぎすてる。
するとひりひりと痛むのだ。
バラの棘が。
あたしの皮フが。
擦りあうほどに震える表面の曖昧な境界。
痛みこそがあたしのかたちだ。
ベルベットの夜にうまれたほつれ目は、
闇に溶けることはないだろう。
あたしは立ちあがる。
そして、
光へと帰ってゆく