蝉を詰める

 

正山千夏

 
 

アスファルトの間から
のびる草が
あまりに鋭く空を突き上げる
月影

短い夏にさようなら
道に蝉たちが転がる
あたしが蹴飛ばす
慟哭

いくつものあいた穴に
ひとつひとつ蝉を詰める
まだ熱いアスファルトに
接吻

土砂降りの雨が
流れ込む
いつか押し開けて
薄緑色の羽を広げますように

まっすぐと天にむかって
それはすっくと立っていた
もうないてはいなかった
羽もふるえていなかった

アスファルトの間から
のびる草が
あまりに鋭く空を突き上げる
跳躍

発芽する種子
もしくは時限爆弾
朝になればまた
灼熱の太陽に眩んでしまうから

いくつものあいた穴に
ひとつひとつ蝉を詰める
それは無限の可能性を秘めた
抱擁

 

 

 

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