隣人

 

廿楽順治

 
 

「わたし」はうりふたつになり
はらわたが
みな出てしまいました

空襲の夢です

「その住まいは荒れ果てよ
そこに住むものはいなくなれ」

炎のようなべろが分かれ
ひとりひとりの
逃げていく「わたし」の上にとどまり

どうして「わたし」たちは
めいめいのふるさとのことばを
ゆがんで聞くのでしょう

「あのひとたちは
新しいぶどう酒に酔っている」

隣人たちは
うりふたつで
出生をねじってつなげていくのです

どうして
口論は
こんなにもねむたいのでしょう

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です