豆腐

 

道 ケージ

 
 

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予備校にはどこも小さな洞穴教室がある。受験生を丸裸にしてまず生ぬるい風呂に入れいきなり冷水を眉間中心にかけ続ける。世に言う藤垈の術である。その後に糸瓜で過度の乾布摩擦。施術を学生と共にするため大抵の予備校講師は肌がつるりとしているか荒れ果てているかのどちらかである。洞窟を出られた珍しい生徒は当然目をやられている。中でやることが王義之「蘭亭序」の書写のみであるからだ。会稽山麓蘭亭の曲水の盃には小さな豆腐が重しとして据えられていたという。

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豆腐 摑み損ねた
白く穏やかな丸み
若々しい冷たい肌
ニキビない青白い発信
絹漉しの面倒がざわつく

豆腐鍛えて
厚揚げる作業
「白けりゃいいってもんじゃない
空0パリピで行けや(笑)」
葱ふり生姜づけ

豆腐の位置に立つことは
豆腐になることであり
日がなとうふである

いつものようにひょいと
摘めるはずなのに
摑み損ねて

爆発するとは

飛び散った豆腐
どんと机を叩き飛び散って
泣いていた

あまりのことに
慄く
卑しく粒をすくう
木綿ではないから
綺麗にえぐれる角

ごめんよ
にがり

 

 

 

心のドアは内側しかノブが付いてない *

 

今朝
お城のある

町で

研修だった

子どもたち
ひとりひとりを

どう理解してどう関わっていくか

という
研修だった

講師がいて
講師は小児科の医師で

ヒトは
思考と行為と生理と感情の四輪で動いて

いて

変えられるのは
思考と行為なのだと

いった

子どもも
おとなも

居場所がなくなってしまった

そう
医師はいった

だから
思考と行為のハンドルを3°だけ

まわすのだと
いった

詩も
まわせるのかな

心のドアは内側しかノブが付いてない *

だから

3°だけ
ハンドルをきり

内側から開ける
内側から開けてもらう

昨日は
香港にいる

荒井くんから映像が届いた
無防備の青年が至近距離からピストルで警官に撃たれる映像だった

 

* 工藤冬里の詩「切断線のある風景」からの引用

 

 

 

人とそのお椀 09

 

山岡さ希子

 
 

 

捧げ持つ 大きく深めのお椀 両手で しっかり支えている 指が太い  
椀のなかのものは暖かい酒のように見える 指をしっかり当てて胸に近づけて暖を取っているようだから そして 飲むつもり 
膝をつき 中腰 足は揃え 踵と足の裏は体の後ろで 空に向いている

 
 
 

切断線のある風景

 

工藤冬里

 
 

東温上空は川内の北方で8月から絵に描いたような偽の分断を仕掛けられている。その偽の分断に対してノーと言うこれもまた偽の左右勢力から「令和だ安全だ」という叫びが上がる時に真の切断が始まる。無気力にも音程があるとしたら無力そのものを一人サーバーに向かって吠えさせねばならない。

それを前にして表現における倫理なき切断は最早意味を持たない
プログレもtiktokも同じことだ
俺が、俺の身体が切断されるのだ
分かるか? 股から八つ裂きにされるのだ

なんの希望もなく、ただ八つ裂きにされるのだ
イカのように!
スメルジャコフならまだ良かった
これじゃスルメ雑魚フだ

糸電話が泣くのではなくて、糸が泣くだけなんだけれども、その糸は、ただの悔し涙にも反応するものなのか?だとしたら、俺の九四国フェリーのピアノで泣いたというOの涙も、そういうことだ。犬も食わない哀しみを抒情と呼ぶ乎。

犬も食わないから哀しみなのよと開き直るやつもいるが、その苦闘を鑑賞するなどというのは演者にとっては磁器やドルフィーと同じで地獄以外の何物でもない。

それにつけても、全てを敵に回す仕草の、なんと古びて陳腐なことか。そして、だからといって、世間の明け暮れは朝刊の字面のようにフォントとしては何も少しも変わりはしないのだ。

もうすぐ陽を浴びて皇帝ダリアが眼に沁みるだろう
そして僕は皇帝ダリアも皇帝ダリア飼育係も、と例年のように呟くだろう
鎌倉の近代文学館の庭の、被曝前の夢のなかのような写真も想い出すだろう
ブレていて、白い着物がゆうれいのように翻っていた
その幹は竹のようでよく伸びるので僕は恐ろしかった

作務衣を着た陶芸家の作務衣は妻が洗うのか?リベラルは消滅してそのコンテンツはジャンケンで陣営に分けられた。その分配、分捕り方には何らの倫理も働かなかった。分断は混乱のためだけに発想された。

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イギリスのローカルチャート
くらいの辺境
魚の顔して
モニターの背景の青の映り込みが違って
実体の方が沈んでいる
撫で肩の円熟が悪魔の思い上がりを語り
赤とオレンジは合わない
時間をパンのように割く
複雑に捕らわれそうになったら
慰める
痛みの最大の薬は理解
勤勉さと同程度の思考力が必要
管理人としてその能力を使う
dorcas in doldrum ドルイド
発進前に下顎を左右に動かす
土気色ゾンビ
画面映りでその気になった顔を円熟と呼ぶ乎
がぶり寄り荒勢
真ん中分け
なんで豚が主人公なんだ ああ豚にされたからか 最後は人間になるんだった
表情と内容が一致している
二本指 指は太い
ステレオタイプすぎて仮面に近づくくらい素面
三本指も太い
あるときは父親のように
あるときは母親のように
薄すぎて本当
上半身アニメ
家族のように親しくなる
と言い切った
土気色の魚
死んだ目の優しさとは何だろう
顔の筋肉だろうか
豚の鼻の孔
鸚䳇
蒲鉾型の赤味を帯びたトンネルが想像界を貫いている
フクロウ!!
タイとハンカチの柄を合わせ
頭を上げて
角度がモアイ
勇気を絞って と言った
最後までサイコパス
父と娘の絆が
赤味がかったトンネルの
想像界の花道を出てゆく
みみずく!!
トレーナーが限界を引き上げてくれる
二重瞼の給水所
下の歯が見える人種
どこから来ましたか
笑っている
笑えている
本心なのだろう
六角とか八角とか
何によって定められるのだろう
今は九角以上あるな
愛はあるものを喜び あるものを喜ばない
ということは 愛は何かを見分ける助けになる
感情の真を導きとするのではない
ぼたん系とオレンジ系は合わないのに
愛は覆う
直射日光から
愛は原則に基づく意思決定である故に
あなたは嵐のように彼らを襲う (俺以外の左右上下全てが、嵐のように俺を襲うだろう)
なめくじ姉妹
偽りの安心感を抱かせる
ずっと目を見ている
目だけを見ている
額に穴
胃や腸ではない体の周縁に話しかけている
私たちはもう子供であってはならず,波にもまれるかのように翻弄されたり,風に吹かれるかのようにさまざまな教えに振り回されたりしてはなりません。人に欺かれたり,ずる賢いたくらみに乗せられたりしてはならないのです。
法は力を吹き込む (九条は人に力を吹き込まないことを僕は知っている。その一点で俺はリベラルから切断されるだろう。)
腐敗の要素が全くないエチレンガスを放出
体の各部が共同し合う
総力戦の時となりました
心のドアは内側しかノブが付いてない
全開にして全体像を見ないと進まない
炎は小さく調整できない
消極的な見方は炎を消してしまう冷水でしかない
背広の肩のラインに 切断がある
多くの男性は
愛されることよりも敬意を払われることを望む
赤ん坊の泣き声が
蚊のように耳の後ろに上った

 

 

 

「夢は第2の人世である」或いは「五臓六腑の疲れ」である。第78回

 

佐々木 眞

 
 

 

母とり名人Aの元のBよりすぐにチョットコイと鳴かせ上手の犬だった。9/1

悪の権化のような現政権に忠義立てしたお陰で、思いがけず立身出世した私は、高官を退任したあとも、某民間企業の参与となって、何の働きもしないのに高給を支給され、それこそ、濡れ手に粟の人生を送っていたが、何故か虚しかった。9/2

主人公と、おばあさんは、死んでいるのに、みるみる甦っていく。9/3

500円のオカキと、千円のオカキの、どちらが総合的に美味しくて、お買い得かを厳しく問うたはずの私の修士論文は、次第に論考の切っ先が厚い岩盤を外れて、回転が鈍くなり、ついには論旨自体もあやふやとなって、空中分解してしまった。9/3

たった2人だけの美人幹部社員が、マムシに咬まれて青白い顔で息を引き取っていくのを、社長の私は、ただ見守ることしかできなかった。あんなに若くて美しかったのに!
9/4

S君とB君は、オオニシマネージャーの元で、新規巻きなおしの最出発をするというので、いろいろアドバイスをしてから、市ヶ谷で別れた。どうやら私は、彼らとは別に、マルキン担当になるらしい。9/5

その男は、施設で暮している息子の食事の中に、覚せい剤を入れて、鈍い脳の働きを、活性化しようと企てたのだが、あえなく捕まってしまった。9/6

セイさんの詩集を作成した、シゲハラ印刷の社長のシガハラ氏は、セイさんが、亡くした父親を悼む詩を読みながら、思わず落涙したのであった。9/7

新橋駅のプラットフォームのごみ箱の中の日経を探している姿を、電通のヨシタケ氏に目撃され、翌日その話を聞いた上司から、私は嫌みを言われたが、その悪癖は、依然として毎朝続けられた。9/8

くの字の姿をした黒い木だけが茂っている緑の大草原を、私たちは、黙々と歩んでいた。その半年後には、北陸の厳寒のニシン棟に押しこめられ、一人ひとり引きずりだされて、全員斬首される運命にあると知る者もなく。9/9

誰かに後をつけられているのではないか、という気がしたので、それをマクようにしながら、横浜市内のあちこちを逃亡していた私だが、突然カマキリのような顔をした男にぶつかった。カマキリが眼で合図すると、彼の手下たちが私を取り囲む。ヤバイ、北朝鮮へ送りこまれるのではないだろうか。9/10

イケメンを愛した処女は、手に手をとって南洋の離島へ駆け落ちし、たった一夜の情交で一児を孕んだが、誰ひとり、それを知る者はなかった。9/10

構想10年、私は抗争するヒロセ派とヨシダ派の和平を願って、一言では尽くせぬ苦労を重ねてきたのだが、ついに昨日、両者の手打ちの会を開催することができたので、「もういつ死んでも構わない」というに気持ちになりました。9/11

私が入社した会社の会長は、キンボウ教という新興宗教の教祖だった。私は、いきなりその会社の広報室長に任命されてしまったので、やむをを得ず朝晩の勤行を共にしていた。9/12

胸の袋に小さな小さな赤児を包み、白いパンツスーツをまとった背の高い娘が、駅の売店へ入っていく。もはやこの国の女には見られなくなった、長い緑なす黒髪を微かに揺らしながら。9/13

城主は、自分の長男と次男を自分の城に招き入れ、3日3晩にわたって接待していたが、最後の夜に、私を呼び寄せ、「これから長男の城に同行して謀反の疑いがあるかどうかを報告せよ」と命じた。9/14

新入生になったばかりの僕は廻りの女性がみんな大人の美人に見え、目移りがしてどうしようもなかったのだが、ある日「あなたはマゾだから、サドの私と組むとベストよ」と誘われて、以来ドツボに嵌ってしまった。9/15

私のまわりには優れたアーティストたちが大勢いるのだが、それらの大半が、3度の食事にも事欠くようなルンペンプロレタリアーティストなので、いったい誰からどのように支援すればいいのか分からなかった。9/16

私は鏡の前でいったん目も鼻も口も眉も耳も全部回収してから、改めて碁石を置くように置き直すと、たちまち今まで見たことも無いような斬新な顔が出来上がった。9/17

東京の、いや日本中の散髪屋は、わたしの汚職疑惑のために全店閉鎖中なので、困り果てたが、ふと思いついてボーマルシェに頼んだら、セルビアから腕利きの理髪師を寄越してくれたので大助かりだった。9/19

K君と一諸に一膳飯屋に入ったら、消費税値上げゼロの超格安魚メニューがたくさん並んでいたので、どんどん発注してみたら、外国から輸入した名前も知れない青い熱帯魚とか腐臭を放つ馬鹿貝などばかりで、私はゲロを吐いていたがK君は美味そうに平らげた。9/21

山奥の土地が塩漬けになってしまったので、ヤクザに頼んで転売してもらったら、そのヤクザにだまし取られてしまったので、仕方ないから親分に頼んで、一家で身売りして組員になってしもうたんや。9/22

4月4日と7日の日に一緒に四つ尾山に登って、分かれ道でギフチョウを見ようということになった。9/23

東京行きの最終電車に乗り遅れたので、次の新宿行きの鈍行に乗り込んだら、どの車両のどの座席も、ぐうたれたリーマン野郎どもが座席を占拠して、眠りこけていたので驚いた。9/24

小町通りを歩いている赤瀬川原平氏の隣には、朝顔の柄の浴衣を着たこおろぎ嬢が歩いていて、右の耳にだけ青い色をしたピアスをつけていた。9/25

私がちょっと油断していると、ガラスの中の水の中に浮かべている鉄器が、ドスンと落ちて、器を壊して水浸しになってしまうので、もう朝まで寝られないのだ。9/26

東京教育大の就職課に革マルが乱入して、企業や団体からの就職票を、あたりにぶちまけた。彼らが思いっきり乱暴狼藉を働いて立ち去ったあと、なぜか地べたにリカちゃん人形、ペコちゃん人形、マルちゃん人形、エースコック人形が横たわっていた。9/27

青山の高級マンションで独り暮らしをしていたモデルが、酔っぱらったまま浴槽に入り、眠りこけている間に、どんどん高温になり、ようやく発見された時には、白骨入りのスープと化していたのだ。9/28

ともかく、おらちはとても疲れたから、会社は休む。なんかあったら家に電話してくれ、と私はカド君に頼んだ。9/29

「念願叶って、とっても良いところに就職できました」と大喜びしている学生がいるので、「どこに決まったの?」と訊ねたら「ベルギーのアントワープの小学校です」というのであるが、私はなんというてよいのか分からなかった。9/30

 

 

 

舟を出そう

 

橘 伊織

 
 

舟を出そう

東へ

薄青の空に溶けゆく星 ただ誘うままに

舟を出そう

緩い風 この頬を嬲る朝に

舟を出そう

なんの艤装すらせず

舟を出そう

時だけが徒に 遠い記憶へと移ろうまでに

舟を出そう

はるか昔の遊牧民の歌 微かに唇に遊ばせ

やがて風が 真白き帆を孕ませるなら

舟を出そう

骸たちが眠る 名もなきあの島へ向けて

 

 

 

つめたくとおく

 

小関千恵

 
 
















 

 

 

 

 

 

雲の中に扉が見えたのは
やっぱり一人で歩きはじめたときだった

ああ 詩も涙もない
無くなってしまったんだ
あんなにひともじづつ 浮かんでいたのに

‪かたちに身を寄せてはみな蒸発していく‬
‪ひかりにひかりはぶつけられ
だれかの‪大切なすまほも割れていくね
‪ひとりひとりの月が宿る液晶は粉々に砕けて‬
それでも月は これでもかと‬
‪破片のままでも愛しているのだから

いつのまにか
‪詩も涙も無くなって 水平線へ辿り着く‬
‪ひとりで歩きたかったんだ
‪ホワイトグレーの空と海の間‬を
ひかる‪たくさんの魚が飛んでいた
すまほの電池は切れている
宇宙がここまで降りてくる
呼吸をくりかえす
‪海の香りはつめたくとおく
‪なんだ向こうにはまだ‬
‪島があるんだ

 

 

 

琥珀の時間

 

芦田みゆき

 
 

 

10月23日、ジュエリーやフィギュアを製作する友人の工房「クラフト・キリコ」を訪ねた。
王子の工房をはなれ、ご自宅で再出発するとのこと。
半日、一緒に散歩したり、近所のレストランでお昼を食べたり、工房で生まれたたくさんのジュエリー・フィギュアとコレクションをみせていただいた。