クルギ・タ

 

南 椌椌

 
 


© kuukuu

 

今日の謎めきに入ってゆきたい
とりわけて謎というのでもない
「詩が」「詩のようなもの」が離れてゆく
言葉が孑孑(ぼうふり)のように
重力をすてて泳ぎまわるのだ
だがしかしながらささとさすれば
西多摩郡日の出町の陶房に行くと
面白いようにテラコッタの仮面が出来る

青梅駅までの車中で読む本は
毎回本棚からほぼ無作為に引っ張り出した本
今日の無作為がこれだ
思潮社現代詩文庫82『犬塚堯詩集』
1985年発行当時に買った記憶はあるが
いつか読もうと詩の書棚に押し入れて
これまで35年間読んだことがなかった
出かける前に本を開くと64ページ
「河との婚姻」という詩が目に入った
 
空0ある日 蛤爾浜の私の家をたずねてきた
空0クルギ・タと名乗る巨きな女を
空0私はすぐに河だと気づいたのだ

この三行で始まる詩に息をとめた
西武新宿線東伏見駅から拝島まで
また本をあけると蛤爾浜のクルギ・タ
途中本を閉じてまたあけると
蛤爾浜のクルギ・タ
犬塚堯という詩人が住んだ蛤爾浜

クルギ・タという名前がすごく気になる
クルギ・タがどの国のどの民族かなど
類推するしかない茫茫としている
その河が「北満州の広野でみた一本の河」
さらに魅力的な料理と食事の場面

空0私は幕をおろして灯をつけて
空0うつむくクルギと食事する
空0彼女の瞼の上に浮ぶ月
空0煙を上げる酒 酔い痴れる大地
空0女の白皙の宏い胸に手を置いて
空0百里先の山脈の熱さを感ずる

男とクルギ・タは密語で交情し
女は歯を食いしばって
伝承と曙のゆりかごの中に子供を生み
さらに風は興安嶺を越え アロン湖を越え
とあれば東シベリア酷寒の
荒涼とした大地に想像が及ぶ
ツングース、タタール、ウリャンカイ
闇と光の巨大な迷路に
吹き荒ぶ砂嵐の航跡が浮かび上がり
確信の風景が眼前に下りてくる

クルギ・タは僕たちの姉に違いない
巨きな乳と肥沃な三角州をもち
ヘラジカの舐める蜜のような無限の交接
シベリアの深く単調な子守唄を歌う
それは延々と低くつぶやくような

犬塚堯さん謎めきの詩行に誘われました
あなたのような詩人が
南極越冬隊従軍記者として
何年にも渡って越冬の記事と詩を書いた
仲間の隊員を氷雪の嵐に失いながら
蛤爾浜のクルギ・タを思い起こしただろうか
蛤爾浜と南極ブリザード荒ぶ
極寒の円環閉じることなく
凍らない乳の河は透明に乳濁して
悠々と泳ぎつづけるクルギ・タ

僕はぼくのクルギ・タを思い出している
この世の人類の姉たるクルギ・タ

 
 

✶ 浜風文庫、三ヶ月間お休みさせていただきました。今回は犬塚堯さんの詩に深く曳かれて、「河との婚姻」からの引用を含め、このような形になりました。未完のエチュードです。テラコッタの写真は、蛤爾浜・ハルピンのクルギ・タを想起しながら作った仮面です。

 

 

 

暮光之俳 七首

 

Sanmu CHEN / 陳式森

 
 

1)
耳際停珍珠
暮色晦暝秋水澈
等待著古曲

2)
繁星暗潜伏
秋光璀璨秋溪黯
山居彌虛空

3)
黃昏的神祗
潜心閲我斑爛光
恢宏奏鳴曲

4)
寂寂萬聖殿
曆史森然山海暗
黑警出色旗

5)
壁屋出彩虹
破事一件接一件
斷霞錯詩句

6)
看榮光來臨
我的城順從麈世
沉睡敗意中

7)
莫名的星磒
可能在將來寫成
幷遺失的詩

空白.

 

 

・翻訳はこちらで
https://www.deepl.com/translator

 

 

 

家族の肖像~親子の対話 その52

 

佐々木 眞

 
 

 

コウ君、一週間がんばったね!
頑張りましたお。

明日東急の本屋さん、行きますお。
分かりましたあ。

お母さん久しぶりにカッパ池行きたいな。
ボクも行きますお。ザリガニ釣りますお。
むかしタクチャン、リョウチャンと行ったね。
ザリツリ、ザリツリ、ザリツリ。歌いましたお。

お母さん、夕飯豚汁とキノコご飯にしてくださいね。
分かりましたあ。

お父さん、お風呂掃除してくださいね。
分かりましたあ。

「涙そうそう」ってなに?
涙がいっぱい出ることじゃないの。

あの人なんで泣いてるの?
うれしかったからよ。

オオヤさん、「おつかれさま」っていってくれたよ。
良かったね。

だいぶって、なに?
かなり、よ。

ぼくは高速道路好きですよ。
高速道路乗ったことあるの?
ありますよ。

高輪ゲートウエイ新しい駅でしょう?
そうだね。

今日ぼく「極主夫道」みますお。
みましょうね。

お詫びってなに?
「ごめんなさい」っていうことよ。

ぼく藤沢行きますお。
いつ行きますか?
お昼寝してから行きますお。
分かりました。

藤沢お父さんが一人で行くのと、3人で行くのとどちらがいいですか?
3人ですお。
分かりましたあ。

ぼく、オオツボさん好きですお。オオツボさんに会いたいですお。
そうなんだ。

私はメイサです。
こんにちは、メイサさん。

お母さんシリトリしよ。京都。
キ、キ、汽車。
もう終わりです。
コウ君が自分で言いだしたくせに。

エモトアキラさん、すまんて言ったよ。スマンてなに?
ごめんなさいのことよ。

お父さん、いつおばあちゃんチ行きますか?
4時半だよ。
分かりましたあ。

縁起でもないって、なに?
悪いことよ。

エイコさん、お母さんのおねえさんでしょ?
そうよ。

栄えるって、なに?
とっても繁栄するこよとよ。

将棋はゲームみたいに?
そうだね、まあゲームだね。

お母さん、しりとりしよ。盤上の向日葵。
リ、リ、リンス。コウ君、スだよ。

「年末年始」の英語は?
うーんとまあホリデイかな。

ハロー、「こんにちは」でしょ?
そうだよ。

正月の英語は?
ニューイヤーだよ。

お父さん、莉子さんの写真集、いつ来ますか?
明日ですよ。
良かったです。

私はフクモトリコです。
こんにちはフクモトリコさん

経験て、なに?
いろいろやったことよ。

交わるって、なに?
交叉することよ。

かかわらずって、なに?
それによらないで、よ。

私は修理屋さんです。
こんにちは、修理屋さん。

精神的って、なに?
気持ちのうえで、よ。

温泉てお風呂でしょ?
お湯が湧いてくるのよ。

お母さん、受け止めるって、なに?
全部分かってあげることよ。

コウ君、洗濯物を自分で洗うのはやめてください。
分かりましたあ。

お父さん、原、石原さとみの原でしょ?
そうだね。

夢中って、なに?
とっても好きになることよ。

お父さん、どっちみちの英語は?
anywayだよ。

嵩は山と高いだよ。
え、そうなの。

縁起でもないって、なに?
良くないことよ。

ぼく、グリーン牧場好きですお。
そう。どこにあるの?
群馬県だよ。

お母さん、ぼく勝浦好きです。
そうなんだ。

ぼくはタクです。
こんいちはタクちゃん。
ヤクちゃんヒトミさんと結婚してユウちゃんとアル君生まれたの?
そうよ。

お母さん、これなんですか?
十両よ。
どこにあったの?
お庭ですよ。

お母さん、いまどこでなにしていますか?
セイユーでお買い物をしているのよ。
分かりましたあ。

お母さん、ぼくバーズ好きだよ。
今度またバーズ行こうか。
行きませんお。

オオタヒロシさん亡くなっちゃったよねえ。
亡くなっちゃったねえ。

いまミワさん綾部ですか?
アマガサキよ。

コウ君、これからなにしますか?
ぼく、お昼寝しますお。
お昼寝かあ。いいね。

もうしばらくお待ちください、ってなに?
もうちょっと待ってください、よ。

 

 

 

節に居るもの

 

小関千恵

 
 

「からだの節々に居るものたちがとても元気だ」 と
今朝 目覚める間に
詩をかいていた

つぎつぎに出てきていたのはとてもできたことばのようだったのに
からだを起こして記そうとすれば
最初に記したそのことば以外は思い出せなかった
 

半分眠る私の体内で
それらは活発だった

わたしがそれらになることはできず
だけど、
それらはわたしになることができる
わたしの体内を
出たり入ったり
蠢いたり静かにしたりしている
もっとほかに それらが何をしているのかは
まだわたしにもわからないことがたくさんある

わたしはそれらと仲良くいたいと思いながら
暮らしている
うまくやっていたいし
それはわたしだけに流れているものでもなく
きっといろんなところを行き来しているから、
わたしは大切にしている

書いていた詩は
そんなようなことだったか
そんな気はしなくもないけれど
何故かもう、微塵もわからなかった

だけれど
予め、
確かにわたしは詩をかいていた

(すっかり忘れていた8日の朝に)

 
 

 

 

 

監督:「常に観客にはセンセーショナルに見せよう」

 

一条美由紀

 
 


あなたの欲しいものはなんだろう
欲しいものを捧げたら喜ぶのだろうか
与えることで私は嬉しいのだろうか

 


落とし物を見つけた
昔々捨てたものだった
捨てたものは年月の間に甘く変化していた

 


ずっと待ってる
ずっと待ってる

 

 

 

小箱のでいいから

 

駿河昌樹

 
 

会わなかったけれど
もっと
もっと
それが会うことでもあったような
カトリーヌ

公園で
あたしはこれから
会うところ

ユリをきょうは
買ってくればよかった

でも
噴水の水がとまっているので
キャラメルを
きっと
買って帰るわ
空白空0(小箱ので
空白空0(いいから