保護膜は破れて言葉は

 

工藤冬里

 
 

ひっそりと越していった
色んなポーズで寝ていた
結局地下室は掘られないまま
常に泣き笑いの顔をしていた
よくインパクトを借りに行った
マキタだった
保護の膜が破れてから言葉は
文字型の木の玩具の剥き出しのようだった

 

 

 

#poetry #rock musician

She drinks a little wine from time to time.
彼女は時々少し酒を飲む。 *

 

さとう三千魚

 
 

midnight
put out a picture of Masahiko Kuwahara

I was looking

dawn
at the desk

drowsy
“He drinks to excess”

of such a title
a series of words

I wrote one

the sun rises
I finished writing the New Year’s card

I hung a picture of Kuwahara’s “girl” at the entrance
I drove to the post office with my woman

evening
I drank “White Horse”

then
I was watching “Diary of Air” by Yasuhiro Yotsumoto

he has a mother-in-law in Yokohama
he had his father in fukuoka

He had his wife and children in Munich

there was Du Fu
there was Santoka

there was Ami

maybe
from a young age

there must have been a window in his eyes

I can’t put into words what I don’t understand
I am Listening to John Coltrane’s “My Favorite Things”

She drinks a little wine from time to time *

 
 

夜中に
桑原正彦の絵を出して

見てた

明け方
机で

うとうとして
“He drinks to excess”

というタイトルの
ことばの連なりを

ひとつ
書いた

日が昇って
賀状を

書き終えた

玄関に少女の絵を掛けた
女と車で郵便局まで行った

夕方には
白馬を飲んだ

それから四元康祐さんの”空気の日記”を見ていた

横浜に義母がいて
福岡に父がいた

ミュンヘンに妻と子どもたちがいた

杜甫がいて
山頭火がいた

阿弥がいた

たぶん
小さな時から

眼には窓があったのだろう

わからないことはことばにできない
コルトレーンの”My Favorite Things”を聴いている

彼女は時々少し酒を飲む *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

dark house

 

工藤冬里

 
 

災厄と混ぜ合わせて逃げ切ろうとする暗い馬が多い
腹を揉んでいたら悲しくなり
白い馬を呑んだ
逃げ馬が大井から逃げて
羽で道路が塞がっている
爆弾巻き付けペガサスは
JALのロゴを毟り取り
穴と砂利のwastesとなった茅場町の萱鼠の
総武線に対してさえいつも
黒眼勝ちの真顔でありとある失敗と紛失に関し
落とし物センターへの祈りのように開いている
白目の多いのが人間の特長だが
健気に対してはまなこ荒れの御節の黒豆
逃げ切ろうとして

 

 

 

#poetry #rock musician

He drinks to excess.
彼は酒を飲みすぎる。 *

 

さとう三千魚

 
 

wearing red shoes

in a red skirt
thin green long sleeves
blouse

wearing

the girl holds a pink bouquet in her chest
she is standing

at the end of the year
at dawn

I put out a picture of the girl by Masahiko Kuwahara

Kuwahara’s
may be a lost girl

is that why
men

they were standing on the beach on a windy day

He drinks to excess *

 
 

紅い靴
履いて

紅いスカートで
薄いみどりの

長袖の
ブラウスを

着ている

少女はピンクの花束を胸に抱いている
立っている

暮れの
明け方に

桑原正彦の少女の絵を出した

桑原の
失われた

少女だろう

だからか
男たち

風の日に浜辺に佇っていた

彼は酒を飲みすぎる *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

It will not be long before spring comes.
まもなく春がやってくるだろう。 *

 

さとう三千魚

 
 

at the entrance
potted

hime apple tree

of leaves
colored yellow

collect light

the camellia buds have swelled red

Mt Fuji is
this morning

whitened the top

I can’t hear the cats’ voices
are they all in the house

on the beach
of tetrapod

what are the stray cats doing?

it’s cold
cold

cold night

do they warm their hands between their groins when they sleep

It will not be long before spring comes *

 
 

玄関の
鉢植えの

姫林檎の
木の

葉の
黄色く色づいて

ひかりを集めている

椿の蕾は紅く膨らんできた

不二は
今朝

頂きを白くした

猫たちの声が聞こえない
みんな家の中にいるのか

海辺の
テトラポッドの

野良たちどうしているか

さむい
さむい

さむい夜

眠るとき股のあいだで手を暖めているのか

まもなく春がやってくるだろう *

 

 

* twitterの「楽しい例文」さんから引用させていただきました.

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

思い出す、彼女の

 

ヒヨコブタ

 
 

花が好きだった
そのひとから
時折届く葉書には
小さな押し花があった

決まった時刻にパンと
少しのスープを食べ
読書もかかさなかった

彼女のひとりという時々を
孤独に思うひともいたろう
わたしには
ゆたかな彼女が思い出されるのだ
ひとつひとつが丁寧で
少しのおしゃべりに笑顔になる

昨冬のこの頃に
まったくひとりで旅立った
幼い頃に編んでくれたセーターの色も温もりもまだ残したまま

かつて彼女がそうしたように
年の瀬わたしも台所で
少しずつの正月料理をゆっくり作る
こつこつと

どこかで重なる
どこかで思い出す
そのひとは
優しい寡黙なひとだったと

出汁や醤油の匂いのなかに
彼女を
みるような
年の瀬

今年ほどの忙しなさを
異質な日々を
彼女が知らなくて良かったと
それだけは

くつくつと煮たつ鍋のその湯気に