辻 和人
さあさあ
デジカメで撮った写真
パソコンに移すんだ
USBケーブル引っ込抜いて
乱暴にキーボードの上に投げ出したら
ケーブルは
そろりそろりとキーボードの上を滑るんだ
(ひと呼吸)
垂れ下がったかと思ったら
(1/2呼吸)
椅子をかすめ
しなる、しなる
しなって、床へ落ちるんだ
(1/4呼吸)
落ちた
何、これ?
さっき、さっき……
(ゼロ呼吸)
おおっ、これ、知ってます
つい、つい
さっき
ぼくはペットボトルの水を口に流し込んだんだ
その時、喉の筋肉は
伸びたり縮んだりしたんだ
ごっ……くんっ
(ひと呼吸)
(1/2呼吸)
(1/4呼吸)
(ゼロ呼吸)
誰にも知られるはずはない
ぼくの動作だったんだ
誰にも見られてない
まるで意識していない
ぼくの動作だったんだ
それがこんな風に
(滑って、垂れ下がって、しなって、落ちて)
かすめ取られて
再現されて
目の前に突きつけられるとは
もっかい
辺りを見渡すんだ
やっぱり誰もいないんだ
ドアには鍵もかかってるんだ
カーテンも降りてるんだ
ごっ……くんっ
ふぅーっ
ま、いいでしょ
気を取り直して写真をパソコンに取り込むんだ
そこにはたくさんの昔の時間が
再現を待ってるんだ
待ってるんだ
(ひと呼吸)
(1/2呼吸)
(1/4呼吸)
(ゼロ呼吸)
さあさあ
床に落ちたままぐったりしているUSBケーブルを拾い上げるんだ
そして
相似をなした者同士
改めて顔を見合わせるんだ
ごっ……くんっ