また旅だより 35

 

尾仲浩二

 
 

どうやら梅雨が明けそうな東京。
長い暗室作業が終わった。
コンタクトシートを見て選んだカットのネガを取り出す。
時計の修理の時に使う様なレンズを目に挟み、ネガに付いている埃を取る。
ネガフィルムをネガキャリアに挟み引伸機に入れる。
イーゼル上でトリミングを確認しルーペでピントを合わせる。
ポイントとなる部分にテストピースの印画紙を置き露光。
自動現像機にテストピースを挿入し、しばし待つ。
出てきたテストピースを水洗し乾燥機へ。
テストピースをチェックして露光時間と三色のフィルターを調整。
調整作業を幾度か繰り返し、落とし所を見つけ本番プリント。
色味、露光時間、見落としていた埃など調整して再度プリント。
この作業を暗室で25日ほど続けていた。
来週からは猛暑となるのだろうか。

2021年7月15日 東京中野にて

 

 

 

 

また旅だより 34

 

尾仲浩二

 
 

2007年9月1日 チワワ鉄道でクリール
6:30 1日に2本しかない列車に乗りクリールを目指す。途中駅でトウモロコシの皮に包まったチマキのようなものを買う。蒸したクスクスの中に甘辛い何かが入っていた。冷房が効きすぎて辛いのでデッキに出る。大きく揺れると怖いが、風が気持ちいい。草原には黄色い花が一面に咲きそこに馬や牛が、駅が近づくと西部劇のような街が現れる。12:30 クリール到着。まずはホテルを探し荷物を置いて街へ。レストランのメニューを見ても分からないのでビーフステーキとビール。街外れのテントで古着の長袖シャツを買う。

9月2日 クリール
レンタサイクルで草原を走る。気持ちよく撮っていたら急に犬に吠えられ、すると数匹の犬があちこちから走ってきて必死に自転車で逃げる。知らぬ間に手の甲を虫に刺されひどく腫れてしまった。夕方の街は馬に乗った集団やバギーカーやトラックで大音響の音楽を流しながらのパレードが続く。部屋のテレビは母屋のチャンネルと連動しているようで勝手に次々と番組が変わる。酒屋で買ったワインはサングリアでとても甘かった。

9月3日 クリールからポサダ
手持ちのメキシコドルが少なくなったので銀行へ行くがCD故障でカウンターには長い列、諦めて12:30 の列車に乗る。険しい渓谷を走るのだが、脱線し転落した車両が時々見える。昨日案内所で勧められたポサダ駅で下車するが、降りたのは現地民の少女ひとりと僕だけで少女はすぐに山へ入っていってしまった。無人駅にはなんの案内もないので、仕方なく宿を探しに歩き出すが山道が続くだけで、心細くなっていたところに馬を3頭引いた親父が現れた。宿を尋ねると馬に乗ってついてこいと初乗馬。小さな集落に着き、農家の庭に建てられたコテージに泊まることに。夕方から激しい雷雨、テレビもなく馬のいななきと犬の遠吠えだけが聞こえるこんな所で一夜を過ごすとは。

 
写真展情報

尾仲浩二写真展「馬とサボテン」

中野・ギャラリー街道
6月18日より27日 金曜、土曜、日曜のみ開催

 

 

 

 

また旅だより 32

 

尾仲浩二

 
 

ひっそりと南へ行っていた。
人に会ったのは、去年の夏に東京から移住した友人と
数年前からバーをやっている古い知人だけ。
東京にいるよりもずっと誰とも話さなかった二週間。
天気も悪かったのですこしだけ日焼けして戻った。
さて、またしばらくじっとしている方がよさそうだ。

2021年4月 沖縄にて

 

 

 

 

また旅だより 31

 

尾仲浩二

 
 

中野のギャラリー街道で展示をしている。昨日は朝から大雨で、こんな日は家でのんびりしていたいのだが、雷雨の中を来てくれる人もいるのだ。
夕方に外に出てみると、土砂降りの向こうに夕焼け。
今日は桜が開花したそうで、週末には満開の予報。この展示が終わったらどこかへそっと出かけてみよう。

2021年3月15日  東京、中野 ギャラリー街道にて

 

 

 

 

また旅だより 30

 

尾仲浩二

 
 

昨晩はあれこれ一段落したので、近所の若い友達を誘い久々に深酒をしてしまった。
こんな時は横になっているといつまでもすっきりしない。
外は春のような陽気なのでカミさんを誘って蕎麦屋へ。
蕎麦も美味く、幸い二日酔いではなかったようなので、そのまま散歩する。
隣町の高円寺はコロナ自粛はどこ吹く風の人出。
飲み屋も昼から賑わっていていたが、やはり今日は休肝日にした。

2021年2月13日 東京、自宅にて

 

 

 

 

また旅だより 29

 

尾仲浩二

 
 

フランスのビジュアル雑誌から作品掲載の依頼がきた。
どうしてこんなものを面白がるのかと作った本人が言うのもおかしなセレクトで
ならばこんなのはどうかと送ったら、Great!と帰ってきた。
今年もなんとか楽しくやれそうだ。

2021年1月15日 東京、自宅の暗室にて

 

 

 

 

また旅だより 28

 

尾仲浩二

 
 

大阪での写真展が終わって次の三重県津での写真展へ
紀伊半島を四日間かけて鉄道でぐるりとまわった。
誰もいない道を歩いているのにずっとマスクをしている自分がいた。
あんなにマスク嫌いだったのに。
これが今年最初で最後の旅。

2020年11月16日 和歌山県周参見にて

 

 

 

 

また旅だより 26 番外編

 

尾仲浩二

 
 

あいかわらずどこへもいけない。
家で昔の日記を編集して本にしているので、そこから2004年の10月分を。

 

10月3日 雨
山の上ホテルに親族を集め結婚披露の食事会。そういえば森山さんの還暦祝いのパーティーを数年前のこの時期にここでやったのだ。

10月4日 雨
カラー暗室の途中で丹野さんより電話。カメラ付き携帯電話が欲しいとのことでヨドバシへ。僕と同機種を買ってもらい使い方の説明を三越デパート地下四階のファミリーレストラン「ランドマーク 」 で。迷路のような店内を抜け、隠し階段を降りると新宿のど真中に現れる別世界。

10月6日
こどじで森山さんと遭遇し、かえるで朝までカラオケ 。

10月8日 台風
朝までカラオケの所為か昨日より咽痛く、ついに発熱。台風のなか病院へ 。

10月10日 曇り
昨日の予定だった幼稚園の運動会の撮影が台風で今日に順延。まだ風邪具合はよくないので終わって早々に帰宅してすぐに蒲団へ。

10月13日 曇り
アサヒカメラの暗室紹介ページの取材で鳥原学さん来宅。これまで紹介されたのはどれも立派な暗室ばかりで、僕の極狭手作り暗室がどう紹介されるのか楽しみ。機材も自慢できるようなものはなにもないし、小道具も主婦のアイデア的なものばかり。あまりに狭くてカメラマンは撮影アングルに苦労していたようだ。

10月15日 晴れ
PGで吉永聡子展。風邪も治ったようなので調子を試しにゴールデン街。 もう大丈夫。

10月16日 曇り
昼からこどじを撮影。

10月17日 快晴
写真学校の撮影授業で早稲田から都電に乗り三ノ輪まで。鬼子母神の御会式には花園神社とは違う見せ物小屋が出ていた。庚申塚でファイト餃子。夕方に三ノ輪橋集合。荒木さんの生家跡を見てもんじゃ焼き。

10月21日 晴れ
デイズフォトギャラリーでモノクロプリントのワークショップ。新宿通りで広瀬くんと遭遇し、最近お気に入りの三越地下食堂でカツカレー。プレイスMでトリヤ展 。

10月22日 晴れ
ペンタックスのサービスセンターでMZ・Mを点検してもらう。このカメラは東京、上海、ラトビアとかなりの本数を撮っていても一度も故障していない。今度のスペインにも同行予定。ヨドバシでモノクロ印画紙80枚。

10月23日
モノクロ暗室。こどじ展示用。

10月25日 晴れ
三越地下食堂でラトビアの写真を担当の楠本さんに見せる。最近はここに人を連れて行くのが楽しみになっている。

10月27日
モノクロ暗室。橋本くん宅へ仔猫を譲り受けに。由布子さんがぐみと命名。母猫はロシアンブルーだけど、ぐみは黒いまだら模様。ちいさいけど元気はすこぶるいい。連れ帰ってすぐにきちんとトイレをしてくれたのでひと安心。

10月31日
図書館の帰りに猫ジャラシを買う。おとなしいと思っていたぐみは、とんでもないおてんばだった。噛むわ引っ掻くわ飛び回るわで、カーテンはボロボロ。 そして叱ってもケロッとしている。