また旅だより 46

 

尾仲浩二

 
 

25年ほど前に撮影してすっかり忘れていたスライドフィルムがでてきた
コダックのエクタクロームというフィルム
当時コダクロームという色褪せないフィルムは高かった
なので僕のエクタクロームはすでに褪色してしまっていた
それをデジタルカメラで複写してパソコンで色を調整してみたら
なかなかいい感じの色合いになった
本来の色よりずっと好き

2022年6月15日 東京中野にて

写真展『My Ektachrome 僕のエクタクローム』
東京中野 ギャラリー街道にて6月18日、19日開催
同名の写真集も発売中

 

 

 

 

また旅だより 45

 

尾仲浩二

 
 

20年ぶりに鹿児島へ行ってきた。
用事はなにもないので、ぶらぶら歩き回って温泉に入ったり焼酎を飲んだり。
市内の老舗デパート山形屋(やまかたや)の食堂では、みんながカタ焼きそばを食べていた。
名物だそうで、とてもボリュームがあって安くうまい。
指宿では東京で高値の玉ねぎが安かったが、さすがにこれを持って歩きたくはなかった。

2022年4月22日 鹿児島にて

 

 

 

 

また旅だより 44

 

尾仲浩二

 
 

桜を追って妻と北へ行った。
昨年の四月に泊まった温泉宿の桜が見事だったので早くから予約をしていたのだ。
ところが開花予報はいつまでも蕾のままで半分諦めていた。
それが月曜からの異常な気温で蕾は一気に開き、夜でも半袖で桜を楽しむことができた。
翌日、妻は留守番させた猫をすこし心配しながら東京へ戻った。
そして今日は気候が一転、ひとり凍えながら今年最後の桜を見て歩いた。

2022年4月14日 山形市内にて

 

 

 

 

また旅だより 43

 

尾仲浩二

 
 

町の中華屋でレバニラとビール。
他に客もなくNHKではロシアの侵攻のニュース。
88歳の主人が、この戦争はどうなるんだろうと言う。
どうなるのでしょうねと僕。
ほんとうにどうなるのだろう。

2022年3月6日 東京、中野にて

 

 

 

 

また旅だより 42

 

尾仲浩二

 
 

どこにも行けず、ずっと家にいる。
しかも六十肩でラジオ体操もまともにできない。
その肩のことで医者に行ったら、どうやら血圧も高目だった。
近頃、知り合いや好きな作家が亡くなったりが続いていて、なんだかなぁと思っていた。
今日は、コロナを知らずにあっちに行ってしまった友人を偲ぶ会があったので、会場のライブハウスのある駅のひと駅前から歩く事にした。
血圧には歩く事がいちばんいいそうだ。

2022年2月5日 立川から日野

 

 

 

 

また旅だより 41

 

尾仲浩二

 
 

何年ぶりかに元日に初詣に行った。
ボケがはじまった母親の繰り返す話が辛く、少し散歩に行くと家を出て、子供の頃に暮らした団地など巡って夕方まで戻らなかった。
神社でもらった長寿お守りを渡すと、そのまま仏壇に置いて、また同じ話をはじめた。
今年は母の家に戻ることが多くなりそうだ。

2022年1月1日 千葉県君津にて

 

 

 

15日から写真展が始まります。
「マタタビ日記」 2000年から2005年の日記から、当時の作品とスナップで構成した展示です。
中野、ギャラリー街道にて30日までの土曜、日曜に開催。どうぞよろしくお願いします。

 

 

 

また旅だより 40

 

尾仲浩二

 
 

初めて津軽海峡を船で渡って函館へ行った。出港が危ぶまれる程の荒天だったが、少しくらいは揺れないと気分が出ない。他に乗客もいない船室で、用意しておいた焼酎を飲んだ。酔う前に酔えばいいのだ。
函館には何の用事もないのだけれど、大人の休日きっぷで青森まで来たので、そのついでに行ってみたのだ。
雨があっという間に雪になったり、突然快晴になったり目まぐるしく変わる空模様で、これは写真を撮るのには楽しい。寒風で芯から冷えた指先は、塩ラーメンのどんぶりに押しあてて温めるのがいいと知った。

2021年12月5日 北海道、函館にて

 

 

 

 

また旅だより 39

 

尾仲浩二

 
 

三重からの帰りは中央線経由で新宿へ戻ることにした。
なんとなく薮原という駅で途中下車。
次の電車までは二時間ある。
小さな集落はすぐに歩き終わってしまった。
昨夜の残りの焼き芋をホームで食べる。
今年の秋は気持ちのいい空が続いている。

2021年11月2日 長野県木祖村にて

 

 

 

 

また旅だより 38

 

尾仲浩二

 
 

写真展のために大阪で2週間ほど暮らした。
非常事態宣言が明けた翌日、ギャラリーを出て、ひとりで飲み屋を探す。
どこも久しぶりの開店で満席だったが、空いているホルモン焼へ勇気を出して入る。
大小のGがカウンターを走り回っていた。
ひと組だけいた先客のカップルのネエちゃんは、こんなの私はぜったいムリと怒って出て行ってしまった。
気まずい空気の中、オヤジの機嫌を損なわないよう、旨いうまいと食べていたら、先客の残したホルモンをもったいないからと出してくれた。

2021年10月2日 大阪、中津にて

 

 

 

 

また旅だより 37

 

尾仲浩二

 
 

まだ暑かった8月に野暮用で木更津へ行った。
高校生の頃、よく学校帰りに遊んだ町。
いまはすっかり寂れてしまい、人影もない。
当時は女子校の生徒の溜まり場で入れなかった喫茶店でアイスウィンナーコーヒーを飲んだ。
そう云えば、初めてウィンナーコーヒーを飲んだのもこの町の喫茶店。
どんなものが出てくるのかも知らないで注文し、ガブリと飲んで舌をヤケドしたのだった。

2021年8月18日 千葉県木更津にて