ゼログラビティのなかで
重力は人間の関係性のことなんですよね
川崎さんはいった
子供を失い関係性を失ったヒトが
宇宙に浮かんでいた
やがて関係を獲得して地球にもどり重力を得たのですよね
川崎さんは渋谷の喫茶店でいった
王はいなかった
王はどこにもいた
ゼログラビティのなかで
重力は人間の関係性のことなんですよね
川崎さんはいった
子供を失い関係性を失ったヒトが
宇宙に浮かんでいた
やがて関係を獲得して地球にもどり重力を得たのですよね
川崎さんは渋谷の喫茶店でいった
王はいなかった
王はどこにもいた
昨日の朝は
詩がかけませんでした
すこし
風邪気味のようです
いつも喉から風邪はきます
子供のときからです
日曜日に
姉に電話をしました
秋田では
二階のベランダまで雪がつもったそうです
晴れた日には
雪原のむこうに焼石岳がみえるのです
霧が
流れていた
坂道をとおってきた
闇のなかに
星はひかっていた
林が遠くあった
林は遠くにあった
カーテンがかかっていた
ひかりのカーテンがかかっていた
霧が流れていた
いとしいヒトの声を聴いた
遠い声だった
遠い声を聴いていた
深夜に
ギーゼキングを聴いている
パルティータ 第2番 ハ短調
サラバンド
意図することをやめた声がある
なつかしい声がある
ははのははのははの声がある
意図ではない
意味ではない
遠いははたちのない声がある
柔らかい赤ん坊を産んだ
桑原が
絵はがきを描いて送ってくれた
絵にはしろい雲が描いてある
端っこに青空もある
空を電線が横切っている
電線をいれなくてもとは思わない
空の分断は必要だ
桑原正彦は孤絶した場所にたっている
かつて
桑原のみにくい女の絵を買ったことがある
今朝
水平に移動して朝焼けをみたのです
そのときコトバは無一物のわたしの栖だと思ったのです
ぼたるさんと
来栖さんと加藤さんが
笑ってこちらを見ていました
ラ・モンテ・ヤングの光の音を聴いたのです
眠っていました
眠りのちかくに栖はありました
中目黒の川沿いの
古本屋で写真集を買いました
ブレッソンでした
コルドバのおばさんの写真に惹かれたのです
ふくよかな手を胸に置いて
眩しそうにこちらをみていました
たくさんの
消え去るもの
二度と出逢わないものを
彼は相手としたのでしょう
水辺に佇つヒトがいた
日曜日の
夕方の空はうすい水色だった
灯りが
港にふたつあかく灯った
佇むヒトは水のおもてをみていた
うしろからみていて
そう思えた
いとしいヒトだった
いとしいヒトだった
水のおもてをみているんだと
思えた
今朝
電車のなかで
毛糸の帽子の女の子をみた
肌色のまるい帽子に
毛糸の細い毛がけばだっていた
光っていた
肌色のタンポポだった
それで
それだけで
しあわせだった
不思議を
きみはたくさんもっているね
たくさんの不思議をもっているね
増えてしまった
増えて
おなかが出てしまった
おじさんの体型になってしまった
増えるものは信用ならない
どこかで減ったものがあるはずだ
ぷきあぷきあ
ぷきあぷきあ
増えることばでなく
幻影のむこうにないことばがある
ないぷきあぷきあ