たかはしけいすけ
貧乏で
ぼくのいいところが
だいなし
貧乏で
ぼくのいいところが
だいなし
いましがた
別れたばかりの男から
わたしがやりました
とメールがきた
たったいま
本を読もうと取り出すと
カバーが
さかさまに掛けられていたんだ
半月前
彼は五十歳になった
おめでとう
いい大人になったな
こわごわ生きている
子どもの頃
先生が言ったっけ
人は
自信か実力のどちらかがあれば
生きていけるのよ
ぼくは実力があったってことか
いやいや
両方ないってこともあるだろう
ぼくの
イマノザマ
ってのは
どうだい?
なけるぜ
朝おきて
気づいたことがある
たいせつなのは
寝ることだ
昼飯前に
気づいたことがある
たいせつなのは
食べることだ
夜になっても
忘れずにいよう
このふたつで
世の中は渡っていける
どんぐり食べると
どもりになるってさ
しゃっくりが出そうだな
食べたことないけど
風邪は長いことひいてない
馬鹿になったわけじゃないよ
たぶん
会社やすみたくて
わざと風邪に負けていたんだ
あとがつらいから
敵がまだ弱いうちに
倒すことにした
勝ち癖がついて
いまは負け知らずさ
お風呂は入っちゃだめだとさ
でも
入った
清潔にして
あったまって
気持よく疲れて
たくさん眠る
というのが
コツ
あとは
あれだ
みかんを食べなきゃ
どんぐりは
食べなかった
食べなかったけど
どもりになったよ
それから
ぼくは
望遠鏡で
看板のメニューを確かめて
ランチにでかけた
日替わり定食を食べていると
うしろで
「詩人」とか
「絵本」とか
声がする
こんなところに
同業者がいるなんて
と振り返ると
さっきまで
打ち合わせをしていた二人だった
どの道で帰るのか
ずっとベランダから
見てたのに
見つけられなかった
また会えてうれしいよ
思いがけないと
なおさらね
さっき
同級生と
電話で話した
同窓会のお誘いだった
つい最近まで
同窓会で
ぼくは行方不明だった
剣道部でいっしょの
その人と話したのは
四十年振り
もはや知らないに等しいその人に
感じた親和性は何だろう?
なつかしく
あたたかい
なくしていた
なにか大切なものを
取り戻したような気がした
というのは
大きな勘違い
間違えないようにしよう
二日つづけて
ほめられた
今日も
ほめられそうな気がする
歌いながら働いた
手を動かして
はかどるさまが見える仕事さ
好きな歌がひとつできた
おふくろと
喧嘩して
居酒屋に
逃げ込む
となりの席から
常連のばあさんが
話しかけたり
自分のつまみを薦めたり
おせっかいな世話を焼く
オレは二歳児のように
ばあさんを投げ捨てる
ないない