悪霊a clay

 

工藤冬里

 
 

あ、暮れa clay
阿Q呉れa clay
カボちゃん砂布巾パンプキン
愛昏れ悪霊eye暗え
折り重なって
あっしは柴又アッシリア
その日は梨泰院(イテウォン)に居てん
win win はhow low
貰た貰た云われんよ
Mr.オクレoh clay
アイドル毀してcry cry
喰らいつく位付く
愛奴愛奴icloud
空冷悪霊a clay

 

 

 

#poetry #rock musician

かずとんタクシー発進

 

辻 和人

 
 

反る反る反るよ
反って返って
反り返る
午前3時回ってむっくり起き上がったこかずとん
次のミルクの時間は4時
双子のミルクはバラバラにやってちゃ大変
スケジュール組んでやってるわけだけど
時計より腹時計の方が先に回るってこともある
エッエッエッ軽く嗚咽していたこかずとん
顔腫れて真っ赤
両目腫れて土偶
オッギャーン
慌てて抱き上げゆらゆらあやしたところ
この程度の泣きじゃミルク出て来ないと思ったか
こかずとん、みるみるギアをあげて咆哮
ウギャオーッオエッ、ウギャオーッオエッ
鼓膜に切り込む大音量
心を抉るトゲトゲ声色
エッと発音していったん声を消し
ィーイィーーー
息を貯めて引っ張って引っ張って
クレシェンド、クレシェンド
それっ
オッギャーン
ウギャオーッオエッ、ウギャオーッオエッ
ウギャオーッオエッ、ウギャオーッオエッ
あんなにふわふわ柔らかかった背中が
きぃんと硬くなり
反って返って
反り返る

抱っこしても全然泣き止まない
どうしたものか
そうだ、子育てタクシー
退院の時に家まで乗せてもらった
あの時こかずとんは奇跡的におとなしかった
ガラガラ手にした初老のドライバーさんは言ってたな
「赤ちゃんは移動が大好きで走行中に騒ぐことはまずありません」
よしやってみるか

頭揺さぶらないように首しっかり持って
キッチンの端から端まで歩く
イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク
発進したよ、走ってるよ、ちょっとスピードあげるよ、ターンするよ
緩めたよ、走ってるよ、走ってるよ、ターンするよ
かずとんタクシー、往復、3回目
かずとんタクシー、往復、10回目
かずとんタクシー、往復、15回目
真っ赤な土偶の顔してたこかずとん
ウギャオーッオエッ、オエッ
エッ、エッ、エッ
声がだんだん小さくなって
顔色元に戻ってきた
不思議そうに深夜のキッチンの天井見上げてる
反って反って反り返っていた硬い背中も
まあるく柔らかく
まだ歩けないこかずとん
かずとんタクシーに乗ってると
体がどんどん変化していくよ
かずとんの足がこかずとんの足
かずとんの腕がこかずとんの胴体
歩けない体が歩けるようになるよ
とんとんとん歩いて
キッチンが自分のものになるよ
どこへでも行ける気がするよ

よし、そろそろ時間だ
こかずとんマットに降ろして急いでオムツ替えてミルク作って
はい、お待たせしました
がっついて哺乳瓶くわえるこかずとん
あぐっあぐっ喉の奥から音が出る
反る反る反るよ
反って返って
反り返る
そんなこかずとんが今
涙に濡れた黒目いっぱい見開いて
ミルクごくごく飲んでいる
深夜に疾走するかずとんタクシー
明日も営業決定だな

 

 

 

書くことでゆるされるという思いが、ある

 

ヒヨコブタ

 
 

手紙を書いた
手紙というよりも訴えになっていた
可愛らしい便箋で11枚になってしまったそれは
お願いだから、もうやめてと
大切に思っているひとたちに書いたもの

わたしの現状を知らないひとたちに
知ろうとせずに、頭がおかしいと決めつけているひとたちに

なぜこうなったのか、そしてなぜこんなふうな手紙を書かねばならぬのか
わたしにももうため息すら出ずに
暗闇で小さくなっていたいと思うほどの

ひとを変えたりしようとは思わない
それはできることではないのだ
知っている
けれどもそれが偏見に満ちたものでわたしを切り刻んできたものなら
変えてほしい、無理でも
せめて知ってほしい、それを綴った

下書きは倍以上だったから
要点をなるべく纏め、脱線し過ぎぬように
警戒を解けるように

もう届いて幾日にもなるが
どうやらこれも受け入れられるものではないようだ
わたしは、そんなとき落ちこむ
当たり前なのだけれど
落ちこんで闇のほうをみてしまいたくなる

けれども踏ん張って
今まで通り踏ん張って生きている

誰かが言うこと、することに100%の正解があるとは思わない
同時に100%の間違いがあるとも思わない
ここで、わたしとその人たちはすれ違ってしまう

そのことが、大変に悲しい

考えるのをやめ、何かを盲信してしまうのが
一番親しかった家族であるというのが

事実ではないことで今まで幾度責められたろう
わたしが嘘をついていると幾度責めれば
彼らは安定したのだろう
そこに本当の温もりなどないというのに

じぶんを、来し方のじぶんを美化する気など毛頭ない
お願い
今回だけは読み深めてほしい
できれば抱きしめてほしい
泣きながら思っている
こころが泣きながら感じている

けれども少しほっとしている
わたしがやさしい嘘をつかなくていいことに
彼らを必要以上にほめたたえなくていいことに
もう気がついたから

 

 

 

島影 48

 

白石ちえこ

 
 


栃木県足利

 

暑い夏だった。
渡良瀬川にかかる橋から町を眺めていたら、ひょろっとそびえる給水塔が目に入った。
給水塔は古い団地の中心にあった。
足もとから見上げる給水塔は、巨大な花のめしべのようであった。
自分が小さな虫になったように感じた。