辻 和人
「パパー、降りてきてーっ」
は、休憩時間終わったか
目ごしごし一階へ
丁度お昼寝から醒めたコミヤミヤとこかずとん
手足もにょもにょやる気満々
「ママもちょっと横になったら?」「うん、そうする」
ミヤミヤとバトンタッチのタッチタッチ
さて相手してやらなきゃ
きゃきゃきゃ
いつのまにか「ミヤミヤ」「かずとん」じゃなくなってきてるんだ
ミヤミヤママァー
かずとんパパァー
ママァー
パパァー
どうしたことだ
結婚前は子供が生まれても名前で呼び合おうと思ってたんだ
あなたは私のママではありません
あなたは私のパパではありません
個人と個人
ニックネームであっても固有の名前で呼び合わなきゃ
ところが、だ
「ミヤミヤ」「かずとん」に
「ママ」「パパ」が侵入するようになってきた
「ママ」「パパ」が「ミヤミヤ」「かずとん」を追い払うことも多い
コミヤミヤとこかずとんから見たぼくらの像を勝手に類推して
互いに投影する
これって個人の主体性の否定じゃない?
何で相手呼ぶのにわざわざ他人の視線を借りるんだよ?
寝返りできるようになってから運動量増えてきたな
それ、両足掴んで右、左、上、下、だ
ごっおろごろ、ぐぅりぐり
転がされてきゃきゃきゃ
コミヤミヤが目よじらせてきゃきゃきゃ
こかずとんが口躍らせてきゃきゃきゃ
転がしてるパパもきゃきゃきゃ
あれ、今ぼく、自分のこと
「パパ」って言ったぞ
こりゃ、つまり
きゃきゃきゃから
見てるってことだな
きゃきゃきゃきゃってのは
ぼくでもミヤミヤでも
コミヤミヤでもこかずとんでもない
きゃきゃきゃはきゃきゃきゃで
そのきゃきゃきゃの只中から
「ママ」と「パパ」が飛び出してくるんだ
「ミヤミヤ」と「かずとん」のお尻にくっついて
しまいには「ミヤミヤ」と「かずとん」を追い出したりする
飛び出してきたら
思わず
受け止めてやんなきゃきゃきゃ
それで
ママァー
パパァー
別に「ミヤミヤ」や「かずとん」がいなくなったわけでもなし
個人の主体性さんが否定されたわけでもなし
おっと
足離したら
今度はコミヤミヤが自力で
大きな寝返りごっおろごろ
きゃきゃきゃ、だ
パパァーッ、だ