広瀬 勉
東京・杉並和田?
石ころを代わる代わる蹴りながら小学校に向かう通学路は一直線にのびていた。
ただただ真っ直ぐ歩いていたら目的地に着く。
小学生の歩くスピードでおよそ20分ほどの距離だ。
まわりは田んぼに囲まれていた。
休耕の田んぼにはわざとれんげが植えられていたのでそこだけは濃いピンク色に染まっていた。
春は西洋タンポポが辺り一面に咲いて、そのまわりをみつばちやモンシロチョウが飛んでいた。
程よい気候がみんなの気持ちを高めているようだった。
梅雨は憂鬱だった。
そこいらじゅうにミミズがいた。
踏まないように最新の注意をはらって歩いた。
黄色い長靴が休むことなく降る雨を弾いた。
滝のような雨の日には靴下がぐしょぐしょになった。
真夏はとにかく暑かった。
サンダルで登校したかったが、鬼のように恐い生徒指導の先生がそれを許すはずはなかった。
じりじりと攻撃してくる太陽に勝てるはずはなかった。
滴り落ちる汗をポケットから取り出したハンカチで拭きながらしのいだ。
露出した肌はミートボールのような色に日焼けした。
小学校にやっと着いたころには喉はいつもカラカラだった。
秋は美しかった。
遠くに見える山々は赤や黄色に色づきわたしたちの目を楽しませてくれた。
特にイチョウの葉は形が独特で、舞っていく光景に目を奪われた。
沿道にはいわゆるくっつき虫がたくさんあった。
それを摘み取り、こっそり自分の前を歩く友達にくっつける。
くっくっくっと笑いをこらえながら歩き続ける。
ただ、考えることはみな同じだったようで、ふと気づくと自分の服にもくっつき虫がついていたことが何度もあった。
冬は雪がたくさん降った。
転ばないように、滑らないように、ふわふわした雪の上に足跡をつけていく。
きれいそうな雪を選んで球体を作る。
前を歩く友達にぶつけると当たり前だが怒られた。
そこからはミニ雪合戦の始まりだった。
いつの間にかジャンパーを脱ぎたくなるほどホカホカに体がなっていた。
色んな気候を体感しながら6年間ひたすら歩いた道。
まっすぐなまっすぐな道。
大人になった今は、こんなに狭い道だったかなと感じることはあるけれどあのときとさほど変わっていない道を見るとなぜか安心した。
わたしが卒業してからもたくさんの後輩が歩いただろう。
もちろん今も。
黄色い帽子をかぶって、列をつくって、まっすぐに歩いていく。
時々乱れることはあってもみんな何かを感じながらとことこと。
そこにはきっと小さな小さなドラマがある。
秋が深まってきたたたたたっ
ミヤミヤと玉川上水沿いをお散歩だだだだだっ
いつもの散歩道
お気に入りの散歩道
「こんな素敵な散策の場所があるなんて、
ここに家を建ててほんとに良かった。」
紅葉はまだだけど紅葉寸前の秋ってのもいいいいいっ
葉っぱの青に黄色が混じってるるるるるっ
つめたーくなってきた水のちょろちょろろろろろっ
歩道に浮き出た木の根っこに足を取られそうううううっ
津田塾大を過ぎて鷹の台駅
「ここでひと休みしましょ。」
昭和っぽい造りのケーキ屋兼喫茶店
おかっぱの昭和顔の娘さんに席を案内してもらい
コーヒーと一緒に本日オススメのスイーツを注文
運ばれてきたのは・・・・・・
皿に盛られたシュークリームの小山、その天辺で
クッキーのオバケさんが手を振ってるぞぞぞぞぞっ
オバケさん
ウィンクククククッ
そうかあ
ハロウィンの季節
TRICK OR TREATなんてやらない
祝祭の意味なんて知らない
日本人のハロウィンの味わい方
ぼくもそんな平均的な日本人の一員に
なりきってやろうじゃないのののののっ
ぬぬ、シュークリームの中はカボチャあじじじじじっ
「あら、かわいいお菓子。秋はカボチャおいしいよね。」
八百万のオバケさん、ウィンクククククッ
平均的な日本人、ウィンクククククッ
玉川上水、ウィンクククククッ
鷹の台駅、ウィンクククククッ
秋が深まってきたたたたたっ
空白空*今回は番外編です。