芦田みゆき
2012.6.10.
「…ビリジアンが死んだ。ぼくにはわかる。
窓のほそい縁に太陽が反射して白く光った時、ぼくは理解した。ビリジアンは死んだのだ。水源からゆるゆると水が流れだすように、ひとすじの血がひろがり、床に小さな湖ができる。ビリジアンは、そこに横たわっている。いずれ発見されるだろう。川沿いの湿った室内。
ビリジアンはぼくを見ることができない。
ぼくはビリジアンを抱くことができない。
ビリジアンは捨てられた植木鉢のように、割れた陶器の皮フから内側があふれだしたまま、眠っている。
ねぇ、ビリジアン、ぼくにはそれが見えるんだ。」