廿楽順治

 
 

おかあさんは わらっていますが
なあに空虚です

あるとき
血が下からたいへんにでましたが

それはあなたがたです
死んでいくのは だってあなたがた

おかあさんはね
この世界にはずっといませんでしたよ

せんたくものも
昨晩のおかずも ずっとそのままです

おかあさんは
戦争のある世界にはいないので

(やっぱりね)
ちっともひとの「死」でふとっていません

 

 

 

社長椅子に座るこかずとん

 

辻 和人

 
 

もう横じゃあない
時代は縦
縦抱き抱っこでなくちゃ満足できないんだ
コの字型授乳クッションも使い方が変わったよ
横に寝たカッコでミルクを飲むのはもうおしまい
クッション床に置いて
開いている側が足
頭をフカフカもたれかけて
お手手は左右にバランスよく置いて
深々コの字に納まったこかずとん
えっと、ただ納まってるだけじゃないよ
首は縦
お腹は縦
重力に逆らって縦
2つの目はまん丸で
ぼくが手にする哺乳瓶の揺れを追って

重力に逆らう
哺乳瓶の先端を含ませた途端
頬っぺむぎゅむぎゅ夢中で動かした
視線は縦
「あー、飲んでる飲んでる。まるで社長さんの椅子に座ってるみたいね」
横からミヤミヤが言うけれど
ふんぞり返ってはいない
背は縦
シュッと伸びて
この姿は雇われじゃない、創業社長だな
何を創業したかわからないけど
重力に逆らって
生後4ヵ月後の未来を見据えている
縦、縦
時代はもう横じゃあない

 

 

 

期日を定めて箍の外れた

 

工藤冬里

 
 

期日を定めて箍の外れた樽のように
亀の子たちの咥えられてくるソファの
そろそろ冷房もきつくなって
扇風機を消そうにも夢は更に小鳥二羽を運び
身体は箍が外れていて
九月までは
九月になれば
それまでは

箍の外れた樽のように

 

 

#poetry #rock musician

猫を待つ

 

さとう三千魚

 
 

窓辺に
小鳥が来る

いつか
山鳩が来たこともあった

息をころして
見ている

餌を
啄んでいる

下の道を

隣家の
猫が通る音がする

黒猫は
首に鈴をつけている

 

・・・

 

この詩は、
2024年8月23日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第8回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life