おなじ
花をみました
特別なものではありません
いつかもおなじ花を
みていました
一昨日は埠頭のある街にいました
ヒメツルソバという花なのだ
そうです
埠頭の傍の空き地に薄いピンクの
花を咲かせて
群生していました
群生しているのをみていました
おなじ
花をみました
特別なものではありません
いつかもおなじ花を
みていました
一昨日は埠頭のある街にいました
ヒメツルソバという花なのだ
そうです
埠頭の傍の空き地に薄いピンクの
花を咲かせて
群生していました
群生しているのをみていました
遅れた
遅れてきた
おなじ景色だ
きれいだ
花が
遅れても
きみとおなじ景色だ
遅れることが
ゆるされないのか
遅れてきた科学者がいる
遅れてきた
遅れてきた
その科学者は遅れてきた
遅れてきて花になる
母の日に
小さな湯のみを送りました
もう自分で
お茶も飲めない母に
小さな花の
絵のある湯のみを送りました
母の目蓋を
指でひらいて見つめたことが
ありました
目蓋の奥で
わたしをみていました
母は暗闇のなかからみていました
画家や写真家の
友人がいる
彼らの作品は
彼らの暮らしから生まれる
今朝も
facebookで写真をみた
いくつかの
美しい写真があった
いいね!ボタンを押した
beautiful!!! と書いた
ヒトが美しい
そう思いたいのだが
どうだろう
やわらかい
女性のような膨らみでした
重さ4.5トン
ファットマンは
TNT火薬22,000トンの破壊力で
1945年8月9日11時2分に長崎上空で炸裂した
石の使徒ヨハネは眼を見開いてみていた
イエスの首も天使の首も飛んだ
ヒトビトはどこに行きましたか
暴れ川と呼ばれた面影はないね。
氾濫して、呑んだのは、幼児だったのかなあ
老女だったのかなあ、
山と川の
天地を逆転して、夜眠っているあいだは
眼の間の、眉間のまんなかに、細い水流があり
見えていないが、
それは、両耳のあいだでもあり
溺死した、高い声を発する
ぎゃあという叫びを、顔面に流している。
泥という字は、
なずむ、と読むことは知らなかった。
溺れた人も、
地が液状になり、川と野の境が失せた
ぼくの眼と、耳のまんなかで
泥になった。
なずんだ。
ここは、いつも夕暮れているようで不思議だ。
午前も、午後も、夜も
泥んでいる。
●
一画に、春に花をつける木々があり
その下に、黄花の野草が密生している。
その光景も、夕暮れで
むかし、溺れた人の、
ガラスペンで書いたような叫びが
電気のスイッチみたいになって
暮れていく。
なあんだ、絵だったんだ。
一人か二人の、死がね。
それから、叱られる。
なあんだ、劇だったんだね。
それだから、怒鳴られる。
●
空に、傷つけたな。
また、ぼくの眼のまんなかに
文字を、なずませたね、え、
鳥の糞か。
白い粉になってる。
泥の図が
嵌め絵になって、
ホースの水で、じゃあと、地面に落ちていく。
ありすぎる。
白茶けた、息。
連作「音の羽」のうち
風が吹いて
いた
水面を渡っていった
波紋は
振動していた
草木の
花芽の先端の伸びていった
荒ぶるものがある
それが理由だ
そこで生まれた
わたしは
そこで生まれそこに帰る
汽笛は鳴っていた
鐘が鳴っていた
ひかりの中から此の世をみていた
仏間に写真が掛けてあった
天皇皇后の写真と
首相と並んで笑う父の写真だった
母や家族のために
わたしを依託し戦争にいった
わたしを依託した
わたしを委託した
閃光の後に
影となったヒトたちがいた
大きな口で
叫んで消えていった
昨日は
夕方にモコと近所を散歩した
道端に
花々は咲いていた
それから
西の山に日が沈むのを見た
日は沈み
日は昇るだろう
長崎では
汽笛が鳴るのを聴いた
たくさん鐘が鳴るのを聴いた
長崎では鐘が鳴っていた
長崎では鐘が鳴るのを聴いていた
今日は
小鳥たちの声を聴かなかった
港に
風は強く吹いていた
一日
藤圭子とラ・モンテ・ヤングを聴いていた
バカだなバカだなだまされちゃって
と歌っていた
新宿の女だった
全ての愛するもの好むものから離れよと
藤圭子は歌っていた