田作

 

工藤冬里

 
 

脱ぎ捨てる力がないまま
折れた首をエアコンに晒している
死ぬ前に食べたい太肉
人を贈り物にして
睡りを返礼とする
釘に食事を食事に田作を
建てられずに折れた首の
いつか食べられる気配を睡る
写本の夢を睡り
晦日のスーパーを睡る
一飛びに明けてほしい
屋根瓦の日々は崩れ落ち
永遠にhappy new year1969と叫び続ける釘を
雲の隙間から眺める
(見られていることの方が見ている主体を上回っている)

 

 

 

#poetry #rock musician

茜色の空をみる

 

さとう三千魚

 
 

遅く起きて
ぼんやりしていた

ソファから桑原正彦の岸辺の絵をみてた

それから
旅のクルマの蓄電池を確認して

女のクルマを洗った
玄関のドアまわりを掃除した

正月飾りを掛けた

午後の窓辺には
雀たちが来ていた

それから
海を見に行った

マリーナ横には釣り人たちがいた
笑っていた

帰ったら
山際の空が茜色に染まってた

茜色はすぐに消えて
空は灰色になっていった

西の空に金星が光っている
高橋アキの弾くケージのサティのための曲を繰り返し聴いている

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

いない **

 

さとう三千魚

 
 

会わなかった

どこにいるの
どこにいたの

いちど
川の淵で

くちづけたことがあった

鼻の
あたまの

濡れていた
冷たかった

どこにもいない


いない

 

・・・

 

** この詩は、
2024年12月20日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第12回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

猫が消えた **

 

さとう三千魚

 
 

さっき
テーブルの横を通った

亡くなった

詩人や
絵本作家や

絵本屋のご主人のことを

ひとびとは
テーブルを囲んで話していた

猫は
消えた

しばらく玄関にいて消えた

 

・・・

 

** この詩は、
2024年11月22日 金曜日に、書肆「猫に縁側」にて開催された「やさしい詩のつどい」第11回で、参加された皆さんと一緒にさとうが即興で書いた詩です。

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

こかずとんは見ている

 

辻 和人

 
 

見ている
ただ見ている
すぐ横で
コミヤミヤがくるっ軽々回転
うつ伏せの姿勢から
もっこもっこ
背中が盛り上がっていくよ
上体起きて
頭がくるっ回転
窓の外の庭のゆずの木が風に騒いで
やってみろ
ほそっこいコミヤミヤの腕が
ふんにゃふんにゃ上下したよ
マットが撓み
進んだ?
ちょっぴり?
いいや、ただ体が微かに上下に揺れただけ
疲れちゃったか?
いいや、またふんにゃふんにゃ
おっと目が合っちゃったよ
でもかずとんパパに関心なし
また頭くるっと回転
ゆずの木騒ぐ
またふんにゃふんにゃ
すぐ横で
仰向け姿のこかずとんが
見ている
ただ見ている
目に特別な色はない
見ている
ただ
ふんにゃふんにゃするコミヤミヤを
見ている見ている見ているんだ