尾仲浩二
三重からの帰りは中央線経由で新宿へ戻ることにした。
なんとなく薮原という駅で途中下車。
次の電車までは二時間ある。
小さな集落はすぐに歩き終わってしまった。
昨夜の残りの焼き芋をホームで食べる。
今年の秋は気持ちのいい空が続いている。
2021年11月2日 長野県木祖村にて
どうやら梅雨が明けそうな東京。
長い暗室作業が終わった。
コンタクトシートを見て選んだカットのネガを取り出す。
時計の修理の時に使う様なレンズを目に挟み、ネガに付いている埃を取る。
ネガフィルムをネガキャリアに挟み引伸機に入れる。
イーゼル上でトリミングを確認しルーペでピントを合わせる。
ポイントとなる部分にテストピースの印画紙を置き露光。
自動現像機にテストピースを挿入し、しばし待つ。
出てきたテストピースを水洗し乾燥機へ。
テストピースをチェックして露光時間と三色のフィルターを調整。
調整作業を幾度か繰り返し、落とし所を見つけ本番プリント。
色味、露光時間、見落としていた埃など調整して再度プリント。
この作業を暗室で25日ほど続けていた。
来週からは猛暑となるのだろうか。
2021年7月15日 東京中野にて
2007年9月1日 チワワ鉄道でクリール
6:30 1日に2本しかない列車に乗りクリールを目指す。途中駅でトウモロコシの皮に包まったチマキのようなものを買う。蒸したクスクスの中に甘辛い何かが入っていた。冷房が効きすぎて辛いのでデッキに出る。大きく揺れると怖いが、風が気持ちいい。草原には黄色い花が一面に咲きそこに馬や牛が、駅が近づくと西部劇のような街が現れる。12:30 クリール到着。まずはホテルを探し荷物を置いて街へ。レストランのメニューを見ても分からないのでビーフステーキとビール。街外れのテントで古着の長袖シャツを買う。
9月2日 クリール
レンタサイクルで草原を走る。気持ちよく撮っていたら急に犬に吠えられ、すると数匹の犬があちこちから走ってきて必死に自転車で逃げる。知らぬ間に手の甲を虫に刺されひどく腫れてしまった。夕方の街は馬に乗った集団やバギーカーやトラックで大音響の音楽を流しながらのパレードが続く。部屋のテレビは母屋のチャンネルと連動しているようで勝手に次々と番組が変わる。酒屋で買ったワインはサングリアでとても甘かった。
9月3日 クリールからポサダ
手持ちのメキシコドルが少なくなったので銀行へ行くがCD故障でカウンターには長い列、諦めて12:30 の列車に乗る。険しい渓谷を走るのだが、脱線し転落した車両が時々見える。昨日案内所で勧められたポサダ駅で下車するが、降りたのは現地民の少女ひとりと僕だけで少女はすぐに山へ入っていってしまった。無人駅にはなんの案内もないので、仕方なく宿を探しに歩き出すが山道が続くだけで、心細くなっていたところに馬を3頭引いた親父が現れた。宿を尋ねると馬に乗ってついてこいと初乗馬。小さな集落に着き、農家の庭に建てられたコテージに泊まることに。夕方から激しい雷雨、テレビもなく馬のいななきと犬の遠吠えだけが聞こえるこんな所で一夜を過ごすとは。
写真展情報
中野・ギャラリー街道
6月18日より27日 金曜、土曜、日曜のみ開催