speech balloon

 

工藤冬里

 
 

トランプとバイデンの闘いに意味はない
愛国主義とグローバリズムの戦いにも意味はない
コロナの深い意味と浅い意味の対立にも意味はない
きみのプラットフォーム上の気の利いた言葉も恋愛も芸能も体育もそれほどの意味はない
野獣が酔っ払った娼婦を振り落として突き殺すための
動機がひらひら降ってくる
そのきらきらに全集中‼︎

 

 

 

#poetry #rock musician

avian flu

 

工藤冬里

 
 

妄想は悉く地下の集合的無意識に繋がっていてそのマグマが噴火に利用されてきた
苦しめれば苦しめるほど栄養価が高くなると知っているので地下は迷路になっている
言葉は与えられるがそれはjoy divisionとかcageとか
食べる部位を分類するために付けられているにすぎない
かしわ以外の
立てない飼育檻の柔肉は犠牲にしてはならないのに
地下鶏舎の夢想の噴火としての
大量虐殺が行われている
雄鶏(モノノフ)に時候の挨拶など無用だ
三度鳴いて夜を目覚めさせよと
単刀直入に知らせなければならない

 

 

 

#poetry #rock musician

ghost apples

 

工藤冬里

 
 

一六日 天寒
どんなに良さそうに見えても欠けたところに穴があり
それは見える軍隊であったり
内向き過ぎのバランスそのものであったり
民俗風習への無批判の迎合であったり
何よりあたしであったりするので
距離を置かなければ同化してしまう
だから白鳥は食べない
自傷はしない
障害があっても食べていけるよ
あたしのように子供を火あぶりにはしてはいけない
あたしのように偏見を持ってはいけない
リベラルであってはいけないんだ
永続する国は米を通しては来ないことを知ってほしい
一七日 天上大風
あたしの考え方や感じ方に合っているから、と言うのは間違っている
それはあたしの感じ方や考え方に合っていない筈だからである
そしてあたしの考え方や感じ方を肯定する必要もある
その上であたしとは異なった考え方や感じ方にあたしを合わせるのである
一八日 ghost apples
洪水前の性欲を地表に満遍なく持ち続けている一派と
洪水後の国務野獣的な当該の仲が相当悪い
口癖が「本当の敵は」であるような
スローガンとしての米帝が遠ざかった内ゲバと同じ結構である
指を落としても目先の力任せの突破
悪よりもスピードを上げて
説明のために指を落とし続ける法廷逃走
あたしの指は何本あるんだ
姿を現したら負け
車から顔を出した地元の不良の男の子たちが「目を逸らしたら負け」と言う
あたしは
空0リンゴの形をした氷

 

 

 

#poetry #rock musician

daily beast

 

工藤冬里

 
 

夢の中では突飛なことが起こる
主体の感情はそのままなので
胸が張り裂けそうで苦しい
大体それはオールナイトの三本立てである
そこでは善悪と欲望が錯綜している

現実の細い畦道には彼岸花のリゾームが張り巡らされている
包丁を持って押し掛ける議事堂という隣人を俯瞰し
白鷺は旅立った 
祈りの聞かれるミジンコ型の島へ

テレグラムで詩編二三編を引用するリンウッドは
夢の中にいる
現実を剥がしたプリント基板に
銀杏の葉が半田付けされている

 

 

 

#poetry #rock musician

billboards

 

工藤冬里

 
 

原発事故は一瞬全能の地位に置かれたが鮪を食べるほどには風化させられ、コロナ選挙では善悪の視野の両端を狭められた。
上下と左右を押し付けるそうした策略は悉く失敗し、今はただ脳内の標野のビルボードとなっている。
北が南で勝つことはない
問題は南で勝つことではない
あの三本立ての映画の看板のように
過ぎ去るということだ

 

 

 

#poetry #rock musician

to the big tech

 

工藤冬里

 
 

世界に参画していることが朝イチで行者ニンニクを開き朝鮮人参の苗をチェックすることであるなら
私は領土紛争の水域に蕎麦の種を播き親切を心掛けるだろう
雑草を土に戻すのは全米ライフル協会の仕事でも全米トラック協会の仕事でもない
これは善と悪の戦いではなく不完全さと不完全さの戦いだからだ
愛国主義で結ばれた人々は萱鼠のように刈り取られるのを待っているイネ科の雑草の穀類を食べなさい
レメクの妻たちよ
「敵は本能寺」とテレビでも吹いているではないか
ポキポキ球根を埋め
玉葱になりたい野蒜の思い出を掘り返し
ラジオから流れる蓄膿気味の歌唱を聞いている
「ペンフレンドの二人の恋は
言葉だけが たのみの綱だね」

 

 

 

#poetry #rock musician

新しいプラットフォームはもう

 

工藤冬里

 
 

新しいプラットフォームはもう
tweet
とは言わないのであった
新しいプラットフォームは
toot(吹く)
と言うのであった

百閒先生曰く、東京から大阪までプラットフォームを 繋げれば乗り換えなくて済む、と

そんな呑気な近代もあったな、と氷雨降る品川駅で墓川は思った

同じプラットフォームでは幾ら吹いても手も声も震えて

 

 

 

#poetry #rock musician

凍結

 

工藤冬里

 
 

左と右が千切れて飛んだ構造の中で
愛国心というものを風花の軽さに浮かせて
ぼやけさせた未来の雪曇りに
ひとときの麻痺を狙うマヌーヴァー

愛によって絡め取られ
我方他方(アバンタバン)を 失い
凍結され永絶されて
雪曇りの中にひとり
完全な孤独の中にひとり追いやられる

 

 

 

#poetry #rock musician

great song after great song

 

工藤冬里

 
 

全てをカレーにして
ステップ・ファミリーも鍋に入れて
前にも見たヴィデオも溶けるまで煮て
エアコンは強に
数の子はもう潰して
シーツは部屋で干す
降る降る言って雪は降らない
風は強い
財布はポケットに
充電器で手の甲が熱い
ナミさんが横浜でライブ中にステージで死んだ
大きな鍋に
ヒット曲を次々と投げ入れて

 

 

 

#poetry #rock musician

金切鋸

 

工藤冬里

 
 

バリアフリーの手摺のために
ステンのパイプを切る
(合金で鉄が切れるんだ)
モリブデンかタングステンか
(よくそんな鋸持ってたな)
銀が金に、銅が銀に代わるように
石も鉄に底上げされる
そんな時代が来ますか
僕は石で切れます
石で髪も切ります
午後にはリハビリの人が来ます

 

 

 

#poetry #rock musician