日の果て

 

工藤冬里

 
 

線路内で傘を差した女が土筆を採っていた
男も久米土と思える線路脇の泥を裏返した袋で掴んで走って逃げた

移動が思わしくなくなった世界で未だに観光を続ける群れがいると旅の不可能が際立ってくる
シャブ喫茶も値上げして暮らしにくさと移動しにくさが定点を襲う
観測はプルーストが得意としたものである
その男は旅に行けない、と「私」は書く

その男の走り方はよくなかった
歩くほうがまだましだった
日の果ては
近づいてくるものではなく
満ちていくものだからだ
つぎつぎとクリアしてゆく障害走のようなものではない
一歩ごとに地雷を踏んで、と女は呟く

 

 

 

#poetry #rock musician

dégradé

 

工藤冬里

 
 

茎があり花があった
国旗のような花
見たことがある
動画になったブロードウェイ・ブギウギだ
%で報告だと
549万人のうち210数人だから2万6千人に1人、
助けは野獣ではなく別の国から行く

菓子は食べない
正しいところに逃げる
何がいけなかったのだろう
それぞれの魅力的な特性を併せ持っていたが
男女に分けた
どちらの特質も詰まった卵のようだ

持っているぜ
持っているわ

顔を覆え
限界を弁えるほうの慎み(humilityではなくてmodesty)
控え目だけではない蛍光緑
リズムの良いフォークのヒット曲のように
森恒夫のように怯えて
曲がった地層ごと重機は持ち上げた
葉脈の赤いアルト
マットな鉄の爆弾
読み書きできるようになる
思い付きで話さないと腰が痛い
鷹の飛ぶ青白い空
柄が見たことある
白いケチャップ状に溺れている
値切り方を教える
筆ペンの声
筆圧の変化は劇的だ
塩で消毒
勝手に映画を観ている

 

 

 

#poetry #rock musician

24時間無人スイーツ

 

工藤冬里

 
 

愛が気体に似ているのに対して
希望は生き物に似ている
そうこう不適切しているうちに
低い山はさらに低くなって
高い山は低い山よりさらに高く感ぜられた
荒唐無稽の希望が
釣銭無しの24時間無人スイーツ
長引けば長引くほど深まる
喜びましょう
アンチナタリズム?
でもhope in で既に「〇〇を待つ」という意味が含まれています
名詞と動詞は螺旋状に絡み合っています
希望がないと待たない
待たないと希望はない
自覚がないとぼやける
希望に希望を塗る
その生き物は強くなっていくだけ
自分は助けることはできないが
100万年でも待つ価値がある、と思わせる
体内60%水分
忍耐の自覚
自覚がないとぼやける
体内60%水分を24時間無人スイーツで無い釣銭に照らし合わせて
病院を抜け出した生き物

 

 

 

#poetry #rock musician

shelter from the storm

 

工藤冬里

 
 

義の信用貸しなどと云われなくなったんだね
給料は当然の報酬
正しいと見做されたのは
法律を破らなかったからではない
法律がなかったころのはなしだからだ
自力で補填したのではないにしても
負債がないというのはすばらしいことだ
ウシジマくんが貸した人に金を渡して、「これで払え」と言っているようなものだ
当たり前のことじゃないよね
ATMから金が出てくるっていうのは
不当なやさしさundeserved kindnessが出てくるっていうのは

 

 

 

#poetry #rock musician

a prayer

 

工藤冬里

 
 

すべての願望は聞き入れられない
それは良いことだ
何一つ聞き入れられない
それは良いことだ
だから聞き入れられてはいけない
そう思うのは良いことだ
すべては聞かれてしまうから
そう思うのは良いことだ
聞かれないほうがいい
そう思うのは良いことだ
国を覆うバリヤーについて
地中の金本位制について
中国やイスラエルの武器の無力化について
偶像とデブリの分子化とU字塔について
淡水化について
シリカから生成する直方体の建造物について
記憶と奴隷化について
更地の果樹について
鍛冶屋と左官の移設について
石油由来の破棄について
麻糸製品について
銃口の内向きについて
告発と可視化される歴史サイトについて
学童の種取りとジャノヒゲの根の採取について
そしてすべての介入について
聞き入れられないのは
なんと善いことなのだろう

 

 

 

#poetry #rock musician

裾野を走る馬

 

工藤冬里

 
 


https://operatingtheatre.bandcamp.com/album/spring-is-coming-with-a-strawberry-in-the-mouth-rapid-eye-movements
随分と昔に音程ではなく音響による即興を考えていたものだ
その後無音による即興に行くわけだけれども
今はDJがそれらを一手に引き受けているが
一人でやる場合は「小さい政府」みたいな勘違いで民営化に加担したりしてはいけないよ
いつだって、ルーじゃないけど、
「リアルタイム、それが問題だ」
平行世界とのリアルタイムが無音室という見立てだったんだな

「ゲルマントのほう」を久しぶりに読んでいたら昔山谷の永山則夫研究会で会った日雇いの爺さんが「日本にはサロンさえない」と嘆息していたのを思い出した。ドレフェス事件を巡る上下左右の言論を活写するようにして事に当たれ、という意味だったのだろう。

終に語り始めたと思ったら
駝鳥のことだった
陸と呼び海と呼んだものの中で
other words,
一日が先に進んで仕舞い
永遠に取り残され続ける
一日遅れ続けている
このまま一日遅れ続ける
頬被りして遅れ続ける
大きな視野から違いを見ていると
裾野の馬が凍っている

銀次の言うように北鮮絡みの工作員に金を渡されていたかどうかだけ知りたい
国単位で考えるところから始めたんで最後は宇宙人とか言い出したんだった
落ち葉がガサゴソと街路を走るセンチメンタルな時代は終わったんだ
あとはにちゃっとした陽光にしがみつけ
月光でにおいは消えない
行をいくらかさっぴいた谷川癌たれ
とおれはおれに思う

reputation risk
虐殺のADHDは
ものをひとつひとつ
洗おうとするが
世界は片付かない
暖房は切ってよい
啓蟄だからね
雛人形のように撫で肩の
汚れ易い生木の母性を擦る
姿勢が良かった
表で考える
石を運ぶ熱意は削がれた
インドから久し振り
濁音で陽が射す
カンビュセスに宿舎
禁令の中赤貝が好きだった
山が平らになった
裾野で栽培したい
今は片付けする時ではないと考え始めた
政情不安が積み重なって
意気揚々としている時に迫害が来た
前に進めない理由は泪ではなかった
確信できたのは尽きない力による
 と言うのですから
大軍
再建を第一にするならサポートする
何よりも大切にした時

1月29日、朝、愛媛新聞の書評欄を見る。「おわりのそこみえ」というタイトルは、岡田利規の「わたしたちに許された特別な時間の終わり」を思い出させる。

 

 

 

#poetry #rock musician

能登へ

 

工藤冬里

 
 

すぐに横滑りする建造物の中で目配りする
ロケット型の空気を取り出し
清浄機にかける
家の中のテント
(船の中のプール)
各階の住人は同じことを言う
建てた者の卓越について
我々が比較的少数なのは
小泉構文だからだ
思考を遮って
goodボタンを押して欲しい
草色の包み紙
みどりの入ったコンクリートの電柱が見える
七三のようにゲゼルシャフトは遠い
それでも右手を掴もうとして
雲は山の下へ垂れこめていく
水平を取れずに
それぞれが傾いているが
他所からのコメントが
こえを切り取る
最も優れているものと
それに不可欠な三つの要素がある
立体、円環、いろいろなモデルに横滑りしていく
お前は自分が好きか
答えられなければ雲は里へ下りてくる
難しい柱につぎつぎと矢が刺さっていく
ほんもの、と発語しても
ほんものは山の心臓に置き忘れてきた
泉は山の心臓だった
山に住んでいる人はそこから飲む
我々は不整脈の流れから汲む
充電してこなかった愛が切れる
瓦屋根は鱗になって舞う
封じ込めたのは善い動物ではない
拡がっていくのは疫病の原点
野間馬ハイランドは行ったことがないが
馬が居るらしい
居るのかな
手放した手綱のように尾骶骨の上あたりが空洞になる
水平線にはいつも船が浮かび
製紙工場の煙突も見える
海が展けて湾が見える時
こんどは胸が空白になる
あゝあいつに金をやれば良かった
水平線は僅かに凹む
絵など不整脈の職人に任せれば良い
乾いてぼんやり白くなっていくセメントの 
空中写真の中で
すべての人に声を掛ける練習をしているそうだ
駐車場の濃いグレーの車のように愛がない
シルバーの車のように胃が痛い
大久保のトルコアイスのように引き伸ばす
引き伸ばして顎に引っ掛ける
丁寧に引き伸ばして全部隠さなければならない
それには限界がないそうだ
どんだけ伸びるんだ
枝のように斜め
果実の無い樹のように生い茂っている
ネットで囲って解体し、更地にしたい
更地願望を空に突き出す
消去できない写真のように
空中写真のようなアリの絵が浮かんだ
やさしい人になる必要があった
畑の白菜や大根を見ても気付かなかった
間髪入れず
伸ばして、引っ掛ける

https://www.threads.net/@elogedelamour/post/C2YovGGSUYN/?igshid=MzRlODBiNWFlZA==

 

 

 

#poetry #rock musician

つじつま/たたみかけ

 

工藤冬里

 
 

見えるものが見えないものに変わった
だから逆にいま見えるものたちはつながっていなければならない
身体の方が先に反応しているという脳化学の成果を踏まえて「書きながら考える」を乱暴に適用するならば、認知バイアスを排除してコルチゾールと心拍のセンサーのみに反応して書け、ということになる
つじつま
どうしてこんな
間違ってはいない
だれがこんな
なかった
知らせることを知っていたからたたみかける
I am making all things new
新たに造るのではなく新しくするとは滅ぼすことと回復させること
書けと言われただけではなく実現すると言われた
Ωまで休みはじめた
自分のことしか考えてなかったから思いもつかなかった
あぜん
言葉は発せられた途端に嘘かほんとかどちらかとなる
それでも言葉を使ってたたみかけるしかない
約束し、自分自身に向けて署名し、自分自身が宣言するしかないのだ
両端を観察してエリフはかっこいいことを言う
わたしたちはその間にいる
つじつま
たたみかけ
わたしたちはその間にいる

 

 

 

#poetry #rock musician

たちまち朝の終わりかな

 

工藤冬里

 
 

https://youtu.be/exGprMKGZ1I?si=EFHloriBSAPfnsNu

1月2日
ナマコ荒れ 今年ももう終わりだな
1月4日
ポアの発想が完全に乗り越えられたいま、生きているだけで幸せと思えという使い古された言い草も俄然真実味を帯びてきた。そして自分が神だというような流行りの足掻きも遠い過去のものとなった。
1月7日
万能感に浸りながらの復讐は集合的無意識をいびつなかたちで現実化していくが、その(復讐の)あれこれを万能者に明け渡すことによってのみヒト科の一般意志は乗り越えられる

https://www.instagram.com/reel/C1RL8XDrc2z/?utm_source=ig_web_button_share_sheet

 

 

 

#poetry #rock musician

白に、キミドリ

 

工藤冬里

 
 

無糖ストロングゼロをコンビニの裏で半分捨てて2023を終わらせたのがアル中には早過ぎるというなら何が遅過ぎたというのか世界を締め殺すのには

〇〇史という設定が崩れてきても泪のギターは残る。鋭角の残存物となった嘘は全面対決に向かう。ひとりの嘘として泣いているのだ。

最後の赤軍はリモコンで地雷の蕪を抜き、横たえる。横たわる蕪は満月の下で再び人間爆弾となり、狼狽えながら肺をやられる。股引の身体性を捨象したバルザック的な兵士として、蟹は月夜の畑に横退る。

見えるものは影にすぎず見えない方法そのものが実体である。祭壇は人が望むものではない。銅の体を着けたままその奥に入ることはできない。

咳を殺してベタ塗りの黒
Q&Aは
主題さえ分からず
不本意な年末
名誉回復のために考えついたのが国
国が先
目的が変わらないとはルートを変更するということ
名誉回復のために考えついた国には
無意味だった年始
主題さえ分からず
Q&A
咳を殺してベタ塗りの黒
国では誰が一番嬉しいだろうか
敵意が最も激しくなる時
戻れないとは思わなかった
強風に揺れる泰山木
雨混じりの明かるい日差しの中
世界にはもっと気味の悪い天候のところもあるんだろうなと思いながらも遠くの
雪山に合わない黄緑を見ている

能登の親戚は山に逃げて車中泊

 

 

 

#poetry #rock musician