michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

異空間

 

たいい りょう

 
 

ノルアドレナリンの夢
砂時計の中庭
どこから来たの?
あなたは 魔女?
窓際に 放たれた 石膏像
鏡に のっとられた クローゼット
黒い滲み
白いこころに こぼされた
無意識
異空間
マヌカンの踊り
声なき無機質
ふるえる 地面
わたしは
夢から覚めた

 

 

 

366日 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 72     misaki さんへ

さとう三千魚

 
 

花の
後に

さくら

葉を
伸ばす

薄緑の葉を
伸ばす

365日
生きて

366日目を生きる

花の
後に

葉を伸ばす

やがて
紅い実をつける

 
 

***memo.

2024年5月25日(土)、
静岡一箱古本市の日に水曜文庫での即興詩イベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第二十五回で作った72個めの詩です。

タイトル ”366日”
好きな花 ”桜”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

色 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 71     ayako さんへ

さとう三千魚

 
 

ラナン
キュラス

きいろ
うすみどり

オレンジ
ももいろ

咲いていたね
わたしの花

抱き
捧げる

 
 

***memo.

2024年5月25日(土)、
静岡一箱古本市の日に水曜文庫での即興詩イベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第二十五回で作った71個めの詩です。

タイトル ”色”
好きな花 ”ラナンキュラス”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

サワガニ ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 70     miyuki さんへ

さとう三千魚

 
 

山と山の
あいだに

沢が
流れている

沢は
川になる

沢は
海になる

沢には
サワガニがいる

虹色の泡を
吹いている

山紫陽花も咲いている

 
 

***memo.

2024年5月25日(土)、
静岡一箱古本市の日に水曜文庫での即興詩イベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第二十五回で作った70個めの詩です。

タイトル ”サワガニ”
好きな花 ”あじさい”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

桜譜の風に

 

藤生すゆ葉

 
 

氷と氷が触れ合うと
木枝が波をうつ
空と地面が触れ合うとき
人はそれを雨と呼んだ
ただひたすらに降り注ぐ透明は
一つの線となり
一枚の五線譜のように

丸みを帯びた淡いピンクは
音符になって流れていく

交わり離れて この一瞬をよろこぶように

遠くの傘は風に形をうつして
いつか羽化するのだろうか

青にピンクが重なる昨日は
今日を知っているのだろうか

 

いつもの景色は記憶を好んだ

雨音が記憶の ため息 にかわるとき
その透明は 寂しさを纏わせる
誰にも気づかれない色
そっとそばに寄り添う色

手に触れる散りゆく花びら

 

記憶の片鱗を呼び起こし
やさしい もの を 
あたらしい旋律を

繋がれた色玉の反射は
今も続いている
今も

知らぬ間にできた歪みの記憶すら
愛せるように

そう口ずさみながら
かろやかに風は吹いていた

 

 

 

雨の夜、
子鹿のいるところ ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 69     utano さんへ

さとう三千魚

 
 

子鹿がいる

子鹿のいる
ところに

ハルジオンも
いる

咲いてる

雨のよるに
咲いて

いる

会いに
いく

 
 

***memo.

2024年5月25日(土)、
静岡一箱古本市の日に水曜文庫での即興詩イベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第二十五回で作った69個めの詩です。

タイトル ”雨の夜、子鹿のいるところ”
好きな花 ”ハルジオン”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

季節がよくわからぬ日々

 

ヒヨコブタ

 
 

体調よくないターンに陥る
とにかく寝すぎていて起きていない
ここまでは久しぶりかな
外の風があたたかいのかもわからぬ日々
時折少しだけ歩く
問題の根っこを知っている
と思いこんでいたのだけれど
だとしたら生きるしかないんだ
ここでこの世よさらば! 
なんてまったくの論外
わたしはこの生にしがみついて生きるのだと決めたのだ
けれども年齢的に若過ぎもせず、熟成もされていないちゅうぶらりんのわたしは
何を見、何を書けば生きていけるのだろう
何もかもを見て、何もかもを書き出したいのに
今はその時ではないということか

私のあとに何が残るのだろうな
誰の記憶にもあまり深く刺さらぬ存在でいたいような
けれどもことばだけは誰かのこころに
ずんとくるいっしゅんくらい、あったらいいのに
高望み高望みと、通院帰りをとぼとぼ歩く