紅白を
はなれて
ひとり
高橋悠治さんの
インヴェンションとシンフォニアを聴く
なぜ
シンフォニア11 BWV797を聴くのか
わからない
北の姉をおもう
北の母を憶う
そこは真っ白の雪が降っていて
姉がいて
母がいる
寺は胸をひらいている
紅白を
はなれて
ひとり
高橋悠治さんの
インヴェンションとシンフォニアを聴く
なぜ
シンフォニア11 BWV797を聴くのか
わからない
北の姉をおもう
北の母を憶う
そこは真っ白の雪が降っていて
姉がいて
母がいる
寺は胸をひらいている
今夜は
山側に座った
11E席
小田原を通過した
地獄の扉をひらき
訪れるコトバを待っている
熱海をゆっくりとすべってゆく
扉の向こうのいとしいヒトよ
きみの名はしらない
きみの声はしらない
こだまよ
いとしいヒトよ
伊右衛門という濃いみどりの茶を
飲み干せよ
ゴーと鳴ってすべってゆく
ゴーゴーと鳴ってすべってゆく
浴槽に沈んで
オトテールの
ロンドを
聴いていた
浴槽から
シャワーのノズルを見つめた
霧のむこうに
小鳥たちは群れて旋回していった
ことばも
飛ぶことを夢みた
夕方
渡辺 洋さんに会った
ここに
いた
ここにも鳥はいた
持てば
守る
ものを持てば
守る
こどもを持てば
守る
家族を持てば
守る
クニを持てば
守る
母親は
自分のこどもだけを守る
余所のこどもは
誰が守るのか
クニを持てばクニを守る
クニを持ったことがない
クニを持ったことはない
まだ
今朝は
鳴かない
と思ったら
いま
鳴きはじめた
ピッ
と椋鳥が鳴いた
友を呼んでいる
ヒトも
コトバをもつ
やっとヒトもコトバをもつ
やっとヒトも明滅するコトバをもつ
やっとヒトもいつか明滅するコトバをもつ
鳥のように
肌触り
愛玩
かわいい
翻訳すると
そんな言葉がひらかれる
ペットとは
言わない
モコをペットとは言わない
もっと大切なもの
眠るのをみていた
くすぐると
トロンとした瞳をひらいた
ひらいた
モコの瞳はひらいて
世界が
生まれた
世界は
朝
帰ってきた
急行で
自由が丘で降りた
ホームには
明るいひかりの中にいる女の子の
ポスターが
貼られていた
可愛かった
でも女の子の全部が可愛い
わけでもないだろう
美を見つけるのはむずかしい
噛んでみればいい
苦いかも知れない
みていた
遠くに
タンカーが浮かんでいた
漁礁のうえには
漁船がたくさん浮かんでいた
左眼でみていた
双眼鏡でみると
わかる
右眼で補っていた
右眼で
なにを補うのか
ないヒトとない時間を補う
みていた
みていた
それから
佇つ
歩いていく
突堤をみていた
突堤の
向こうに
海はひかっていた
空はひろがっていた
晴れた空に
半島は浮かんでいた
みえるものと
みえないものはある
磯ヒヨドリが眼のまえの堤防に止まった
紅い腹で背中は青かった
磯ヒヨドリはすぐに飛んでいった
神田で飲んで
最終のこだまに乗って
帰ってきた
こだまのなかで
詩は書けなかった
眠って
しまった
詩は
ケアできますか
ケアできますか
モコは飛びついてきた
ぴょんぴょん跳ねた
机の上に
ねじめ正一さんの
ことばを生きるという本があった