雑巾がけの写真集を出したいと
白石さんはいった
白石ちえこさんの雑巾がけという手法の写真を
見たことがある
隠されていた
秘め事だった
真っ黒で
ところどころ銀色にひかっていた
机の引き出しの奥に写真は隠されていたのだろう
雑巾がけの写真集を出したいと
白石さんはいった
白石ちえこさんの雑巾がけという手法の写真を
見たことがある
隠されていた
秘め事だった
真っ黒で
ところどころ銀色にひかっていた
机の引き出しの奥に写真は隠されていたのだろう
満員電車で
頂を思う
朝の通勤電車のなかで
山の頂を思う
冬のはじめに
白かった
白く
光っていたな
青空に光っていた
焼石岳の頂が白く光っていたな
地上には刈取りが終わった田圃が
ひろがっていた
ヒトは見えなかった
ヒトは見えなかったな
広瀬さんは
ブロックの写真を撮っている
いまもコンクリートブロックの
写真を撮っている
わたしは休日の朝には
海に出かけます
それから
詩を書きます
毎朝
ひとつ詩を書きます
ことばの先に
ことばでないものを探します
ことばの先にことばでないものを
悠治さんの
サティを聴いていた
かつて
悠治さんのサティを繰り返し聴いていた
そのころ
暮らした女のヒトには
たぶん
おかしかったと思う
サティのソクラテスも聴いたな
ソクラテスはひとつの
頂だったな
あのレコードはいまはない
西井一夫さんの
写真のよそよそしさという本を買って
まだひらいていない
机の上に
置いてある
以前に暗闇のレッスンという本を読んで
うなだれてしまった
地上には
ヒトがいて空があり風がある
真実は多くはいらない
ことばもまた
枕の間に鼻をうずめていた
君を起こして
雨の降るまえに
海にでかけていった
灰色の空に
暗い港はひらかれていた
灰色の空のしたに
灰色の海がひろがっていた
雨の降るまえに
地上に
灰色の空と灰色の海がひろがっていた
灰色の空と
灰色の海はひろがっていた
机の上に
いくつかの置物がある
若いときに
地方を旅したときに集めた
長崎の陶製のキリスト像
伊豆の温泉場の射的場にあった湯上がりの裸婦像
小仏
アフリカの石彫の魚
わたしには大切な仲間だが
他人にとってはガラクタだろう
わたしもガラクタになるだろう
くもを
みていたな
青空に浮かぶ
白い雲を見ていたな
花を見ていたな
野原のシロツメクサのまるい
花を見ていたな
子どもらよ
君は解らずに空を見ていたな
君は解らずに花を見ていたな
歌えなかった
歌えなかったな
無い歌をうたえ
無い歌をうたえよ
今朝
スープを作りました
肉の代わりに
大豆を入れました
ジャガイモと玉ねぎと生姜も
入れました
鰹だしと黒胡椒と塩を少しだけ
入れました
玉ねぎと生姜から味が滲みだして
柔らかいジャガイモや大豆に浸透していきます
ひとつまみの塩が味をうみます
ひかりの影だろう
かげはひかりの
影だったろう
ヒトや
子猫や
ガラス瓶や
影がいつまでもそこに留まることもあったろう
つよいひかりを浴びれば影は残る
影だけが残る
影のなかに名前のないものたちのいのちはあったろう
影のなかにいのちはあっただろう