top 頂上 上部

満員電車で
頂を思う

朝の通勤電車のなかで
山の頂を思う

冬のはじめに
白かった

白く
光っていたな

青空に光っていた
焼石岳の頂が白く光っていたな

地上には刈取りが終わった田圃が
ひろがっていた

ヒトは見えなかった
ヒトは見えなかったな

 

 

dear 親愛なる

広瀬さんは
ブロックの写真を撮っている

いまもコンクリートブロックの
写真を撮っている

わたしは休日の朝には
海に出かけます

それから
詩を書きます

毎朝
ひとつ詩を書きます

ことばの先に
ことばでないものを探します

ことばの先にことばでないものを

 

 

rain 雨

枕の間に鼻をうずめていた
君を起こして

雨の降るまえに
海にでかけていった

灰色の空に
暗い港はひらかれていた

灰色の空のしたに
灰色の海がひろがっていた

雨の降るまえに
地上に

灰色の空と灰色の海がひろがっていた

灰色の空と
灰色の海はひろがっていた

 

 

join つなぐ 加わる

机の上に
いくつかの置物がある

若いときに
地方を旅したときに集めた

長崎の陶製のキリスト像
伊豆の温泉場の射的場にあった湯上がりの裸婦像
小仏
アフリカの石彫の魚

わたしには大切な仲間だが
他人にとってはガラクタだろう

わたしもガラクタになるだろう

 

 

sing 歌う

くもを
みていたな

青空に浮かぶ
白い雲を見ていたな

花を見ていたな

野原のシロツメクサのまるい
花を見ていたな

子どもらよ

君は解らずに空を見ていたな
君は解らずに花を見ていたな

歌えなかった
歌えなかったな

無い歌をうたえ
無い歌をうたえよ

 

 

least 最少

今朝
スープを作りました

肉の代わりに
大豆を入れました

ジャガイモと玉ねぎと生姜も
入れました

鰹だしと黒胡椒と塩を少しだけ
入れました

玉ねぎと生姜から味が滲みだして
柔らかいジャガイモや大豆に浸透していきます

ひとつまみの塩が味をうみます

 

 

shadow 影

ひかりの影だろう

かげはひかりの
影だったろう

ヒトや
子猫や
ガラス瓶や

影がいつまでもそこに留まることもあったろう

つよいひかりを浴びれば影は残る
影だけが残る

影のなかに名前のないものたちのいのちはあったろう

影のなかにいのちはあっただろう