真近に
感じて
いた
祖母を感じていた
着物を着て窓辺に
たって
いた
いつもとおりをみていた
灰色の瞳をしていた
息子を沖縄の遠い戦闘で失っていた
祖母の匂いがした
祖母の匂いがした
空にひばりがないていた
空にひばりがないて
真近に
感じて
いた
祖母を感じていた
着物を着て窓辺に
たって
いた
いつもとおりをみていた
灰色の瞳をしていた
息子を沖縄の遠い戦闘で失っていた
祖母の匂いがした
祖母の匂いがした
空にひばりがないていた
空にひばりがないて
ひとりの
夏に
みていたな
いつもみていたな
雲をみていたな
雲は遠い
雲は
遠いヒト
遠い遠いヒト
みていたな
いつもみていたな
雄物川の
川面に
うつっていたな
ながれていったな
ながれていったな
ひとりの夏に
ながれていったな
日野の
駅で
雪を見ていました
ゆっくり
ゆれながら
降りてきました
日野の駅で
朝まで見ていました
きみはいまどうしているの
雪がふっていました
雪はふっていました
雪が降りてくるのを見ていました
雪はゆれながら降りてきました
夏の
午後
走っていった
白い道を走っていった
誰も乗っていなかったのか
砂埃をあげて
四角い
空白を過ぎていった
走っていった
わたしは見ていた
わたしはいつも見ていた
砂埃をあげて白い道を過ぎていった
空白を見ていた
空白を
溢れかえる
光の
むこうに
わびしい暮らしがあり
そこに
仄かな
ひかりがある
仄かなひかりのなかに
過ぎ去る者が
いた
ことばを求めて
燕は
飛んでいる
あの飛行はより少ないことばから生まれている
燕は
首を捻りながら電線の上でつぶやいた
アサ
雨が降っていて
西の山は
白く
霞んでいて
空との境界が溶けていた
霞んでいく
風景のなかで奇妙なわたしが佇っていた
境界は溶けていた
わたしはわたしの幽霊だった
わたしは幽霊となって
境界のない風景のなかに佇っていた
何度聴いたろうか
今朝から
マリア・ユーディナの
平均律クラヴィーア曲集 第1巻第22番を
何度聴いたろうか
十分ということが
ない
きみに
会うためには
十分ということはない
くり返しうち寄せてくる
波はくり返しうち寄せてくる
いつか
マナイタの
うえに
それは
ありました
ヒナタ
なのか
マナイタ
なのか
台所のマナイタの朝の光に輝やいていました
四角い光の塊となって
ヒナタなのか
マナイタなのか
朝の
ヒナタの
マナイタの
輝やいていました
輝やいていました
使える
ものがありません
利用する
ことができません
服を
ぬいで
素手と
なって
裸足で
歩いて
風にふかれて
飛ぶ燕たちをみあげていた
使われるものであることのうちに
息をはき
息をすい
息をはきました
雲がたって
燕たちがきれいな線をひいて飛ぶとき
あなたはそこにいて
みていた
すでに
あることのすべてをみていた
生きることがわたしのすべてですが
あなたの使命は
そこにいてささえること
そこにいて
あなたの妻と妻のすべてをささえること