michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

supper 夕食 晩餐

昨日は
加藤さんと会食しました

加藤さんは
美しい

加藤さんには男の汚れがみえない

能を愛する
クラシックを愛する

たぶん奥さんも愛する

加藤さんと
ぼたるさんのことを話しました

最後に神田の改札で見送りました
片手をあげて加藤さんは帰っていきました

 

 

arrive 着く

今朝
夢から醒めて夢のなかに目覚めた

シロツメクサが咲いていた

花の名を呼んだ
花の名を呼んで泣いていた

美しい少女だった

それさえ幻影なのか
少女は相対的には美しかったと

雲雀が鳴いていた
空高く雲雀が鳴いていた

雲雀は見えない声で鳴いていた

 

 

stay とどまる 滞在する

名を呼ぶ

花の名を呼ぶ
流転のただなかで花の名を呼ぶ

タマスダレの
白い花が咲いていた

片隅に咲いていた

その花をとどめなさい
その花をとどめなさい

花の名を呼びその花をとどめなさい

胸を裂き花の名を呼びなさい
胸を裂き花の名を呼びなさい

 

 

singer 歌手

フランソワーズ・アルディーのレコードを
広瀬さんはかけてくれた

フランソワーズ・アルディーは
さよならを教えてを歌った

もう森なんかいかないも歌った

万物流転のただ中で
フランソワーズ・アルディーは歌った

花を歌った

花それ自体を歌った
花それ自体を歌った

 

 

dream 夢

ねむっていました

ヴァルハの
パルティータを聴いていたのです

夢のなかに
タマスダレの白い花が咲いていました

プラトンは真顔でいいました
花々のなかの実在の花として生きよとプラトンはいいました

なすびの花もプアプアの花も
咲いていました

そこに咲いていました

 

 

appear 現れる 出る

ギーゼキングの
パルティータを聴いています

第2番ハ短調にさしかかったところで
現れているんですね

そこに
断崖があり風があり林が揺れ

シンフォニアから
アルマンドにうつったところに

ひとりのバッハがいます
ひとりのバッハが見たものがいます

 

poem 詩

地上にあるもの
詩は地上にあるもの

地上にないもの
詩は地上にないもの

あるものとないもの
あることとないこと

そのあいだで

昨日の夜
フランソワーズ・アルディの歌を聴いたよ

広瀬さんの店で
フランソワーズ・アルディの歌を聴いたよ

果てしない道を帰った

 

 

クロッカス

 

加藤   閑

 

image

 

いちばん新しい絵は、枯葉の中のクロッカス。こういう、枯葉や小さな枯枝の落ちた場所が自分は好きなのだなと思う。もういくつもこういう景色を描いた。 今年のわたしの三大事件は、古川ぼたるさんの死、山画廊主人山満代さんの死、そして小中学校の同級生 だった海洋大学教授中村宏の死。現象的には個展をしたとかいうこともあったけれど、死がかれらを連れ去った衝撃が大きい。何か、 自分の領地に訳のわからない力が襲いかかり、ごっそり地面を抉りとっていってしまったという感じだ。冥福を祈るなどという余裕は ない。しかし、今年のこの連続した近しい人の死は、これからはこうしたことが次々に起こるのだぞという予言のようにも思える。