michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

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雨は

止んで
いた

アファナシエフの

ピアノを
聴いて

帰った

ブラームスの118-2だった

雨に濡れた
夜道を

帰った
小さな紅い花が咲いてた

泥酔して

無いところから
われに

帰って
きた

紅い花が咲いていた
鳥の声は聴こえなかった

 

 

 

ありがちなこと

 

長尾高弘

 

 

ダメージってのはあとになるまでわからないものだな。
いつまでも頭の隅にこびりついて離れない。
悪いのは自分だってわかってるんだけどさ。
どうしてこう苦しいんだろう?
言われたことが、
自分では気付いていないことだったから?
意外な欠点を指摘されたからって、
いつもここまで落ち込むものでもないだろう。
指摘された欠点の中身がみっともなかったから?
そもそも人にダメージを与えたのは俺の方だったな。
しかもダメージを与えたとは思ってなかった。
まだ十分に思っているとは言えないかもな。
(こんなことを言ったら悪いけど、
(あなたの家はデリカシーのない家だったから、
(それが当たり前になっちゃっているのかもしれないけど、
(あれはデリカシーがなさすぎる。
家で覚えたことは、
無意識のうちに染み付いてる。
五十年も生きていれば、
それくらいのことは気がついてる。
総論ではね。
ただ、各論の部分ではびっくりすることがある。
落ち込んだのはそういうことか?
それだけではなさそうだな。
よりにもよって一番染み付かないように
意識して避けていたはずのものが、
やっぱり染み付いていて、
しかも自分ではそのことに気付いてなくて、
その事実から逃げ隠れできないような証拠を突きつけられて、
ぐうの音も出なくなったからか?
それとももっと単純な話で、
感受性豊かなふりをして、
詩みたいなものなんか書いてるくせに、
無神経だ、鈍感だと言われたからか?
わからないなあ。
そうかもしれないし、
そうでないかもしれない。
理屈以前の本能的なもののような気もする。
だいたい、なぜ苦しい気分の理由を考えているんだ?
その苦しさから逃げ出したいからか?
心の傷とはよく言ったもので、
小さな擦り傷や切り傷が
できたばかりのときには痛くても、
だんだん傷口が塞がっていって、
治ってしまえば、
傷があったことさえわからなくなるのと同じように、
放っておけばだんだん痛みがやわらいで、
傷があったことさえわからなくなる、
つまり忘れてしまうものだぜ。
そんなにもがく理由がどこにある?
しかし、考えてみれば、
あの言葉がなければ、
ダメージを受けることはなかったんだよなあ。
あんなこと言われなければ、
今苦しい思いをすることもなかったんだよ。
だからって、言った相手を恨むのかい?
それはないよな。
悔しいけど、自分のなかからは、
ああいう考えは出てこなかったんだ。
だからこそダメージがあるんだろうけど、
あんな風にはっきり言われなければ、
自分の無神経に気付くこともできなかったわけだよ。
感謝しても恨む筋合いのものじゃないだろう。
だいたい、本当に心配しなきゃいけないのは、
俺が傷つけた相手の方じゃなかったのか?
自分のダメージのことばかり考えていて、
結局、自分のことしか考えてないのか?
完治しない大怪我があるように、
忘れられないでいつまでも苦しさが残る心の傷もあるぞ。
本当に心配しなきゃならないのは、
お前が人に与えた傷が、
そういうものじゃなかったのかってことじゃないのか?
そして自分に何ができるかだ。
自分がしてしまったことを少しでも打ち消して、
相手の傷を少しでも癒やすこと。
気の利いた方法は思いつかないけど、
やっぱりちゃんと謝ることはしないとな。
やり方次第ではかえって逆効果になるから、
注意しないといけないぞ。
先が見えてきたら、
少し自分の気分もよくなってきたようだ。
やっぱりこれはプライドの問題だったのかもな。

 

 

 

外へと数えだす

 

爽生ハム

 

 

雨女に 赤い爪の男に

他にも手が笑う
 

男の布団がほろぼす界隈へ

肌色の毛布も白く扱われる
女か男の街角
チョコで

包む
冥王星の第二衛星
これにした
柔らかく壊れる
銀紙
板にねころぶ

大塚のアパートメントの変容
 

馬の力走を
奥から見てる
ほんとうに偏光がまぶしい

客が笑ってる
辻褄を合わせにかかる

いとも孤独な背中になっていた
止り木から羽根が生えるぞ