michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

今日のナゾメキ Ⅲ

 

南 椌椌

 
 

まだ仄暗いなか散歩した
坂を下りて踏切渡って
武蔵関公園に入った
ゴイサギのギー君
いるのかいないのか
空気の居場所が定まらない
早朝気分の不安数値が
厭戦的に漂っている

靄にかすむ池をまわると
渡るひともない中橋のたもとに
見慣れぬやぐらがたっている
高飛び込み競技のやぐら
危うげなはしごが誘っている
いぶかしいではないか

木組みゆれる十二段昇って
飛び込み用の跳ね板の先端に立った
当然逡巡したわけだ
高さ五Mくらいでも充分に怖い
だれがこんなもの作ったのか
飛び込み台に立った選手は
飛び込まなければならない
それが暗黙のルールというものだ
ふくらはぎが微妙に痙攣してきた

飛び込みたいわけではないが
ルール上棄権は許されない
おかえりただいま
相米慎二の台風クラブを思い出す
池の対岸では採点ボードを持ち
ハンチングを目深にかぶった
スラブ系と思しき男がひとり
鋭くも遠い視線を
こちらに向けている
だから飛び込んだ勇気出して
池の中アタマからまっすぐ
水しぶき小さく着水
高得点は間違いないだろう

採点ボードを持った
遠い視線のスラブ系ハンチングは
「採点不能」の表示を出して
なぜか夢のように薄い笑いを浮かべ
闘いは終わったと暗号を打ってきた
なんてことだ台風クラブ
つまりぼくは今日
水底で見たことを書いておきたい

水底に散らばっているのは
不揃いの小石に刻まれた名前
切なく胸に来る友人たちだ
この十年くらいに旅立った友人たち

名前が刻まれた小石をつかって
ふたりの子どもがチェスをしている
禁じられた遊びが聞こえる
友人たちの名前を読みながら
こみ上げる懐かしさに慄えた

なんでこんな池のなかで
チェスの駒になってるんだ
ギー君のような黒騎士Kに聞くと
なじみの蕎麦屋を出たところで
巨体にいつもの麻シャツまとった
黒ビショップAに誘われたからだという
酒を飲まないのっぽの白騎士Mは
タリーズの珈琲飲んでたら
白ビショップDに誘われたという
Dに聞くと会社から銭湯に寄り
天使の餌を探しあるいてるうちに
気がつくとここにいたという

ぼくはチェスを知らないけど
親しかった友人たちが
楽しい来世を送っているのが嬉しい

池から出てまた歩いた
なつかしい百済の市がたっている
白衣のオモニたちが騒々しく
大きな茶色のたらいに
泥のついた野菜や薬草を
山盛りにして売っている
忘れん坊に効くという薬草
それはぜひともお願いしたい
噛んでみると苦味の境地も
まんざらでもなく
手にそっと吐いて揉みしだき
また噛んでみるとすでに発酵して
やけに甘いのだいいじゃないか

かすかな酔いに染まって
白木蓮が咲いている
この世の証のようであり
あの世の証のようでもあり
モクレン ノハナ
ナハノン レクモ
それが夢かうつつか
さっぱりわからない
すでに夕暮れだよ影が長い
なぞめいた気分で家に帰ると

庭の縁台に見たことのない
青い亀が首を長くしていた

 


© kuukuu

 

 

 

追いかける

 

辻 和人

 
 

口に近づける
まだ閉じてる
ちょんっちょんっ、開いたぞ
「お父さん、ではミルクをあげてもらいます。
 首をしっかり支えておいて下さいね」
哺乳瓶の先は微かに震えながら開いた口の中へ
目閉じたままの小さな小さなこかずとんの小さな口
瓶の先舌の上に乗せてっと
奥へ奥へ含ませてっと
ぎゅきゅゅっ!
突然手応えあり
ぎゅきゅゅっ、ぎゅきゅゅっ
小さな頬が膨らんだつぼんだ膨らんだつぼんだ
白い命の素を
その小さな口が吸い込んでいく吸い込んでいく
目は閉じたまま、だけど真剣な面持ちで
哺乳瓶と口と胴体が
ぎゅきゅゅっと一つになった
真剣
すっごい真剣な顔だ
吸いながら「えうっえうっ」と自分を励ますように声をあげる
ひと休みする時は「ぁはぁぁはぁ」と肩で息する
栄養を摂れ、という使命を全力で果たそうとしてるんだ

とは言えこかずとんまだ生後3日
最後の5分の1くらいで飲み疲れて
うとうと、そして熟睡してしまう
哺乳瓶の先で唇を突いてもピクリともしない
どうしたらいいですかね?
「お父さん、ちょっと私に代わってもらっていいですか?
 今の時期、この分量は飲んでおいた方がいいので」
目がクリクリッとした若いスタッフさん
ぱかっと足を開いて踏ん張り
こかずとんを膝の上に乗せて哺乳瓶の突起を口に含ませた
くいっと奥に入れたかと思うと
くっと引く
ぴくっと頬が動いたかと思うと
吸い込んでいく吸い込んでいく
ぎゅきゅゅっ、ぎゅきゅゅっ
リズムが戻って完食だ
お見事!
「哺乳瓶を遠ざける動作をすると
 逃げられたら困るという意識が働くのか、また飲み始めることがあるんですよ」
そおかあ
逃げていくから追いかける
追いかけるという本能
こかずとん、まだこんなに小さいのにちゃんと持ってた
追いかければ追いかける程
逃げていくものは輝きを増す
飲み終わって「ぁはぁぁはぁ」息するこかずとん
こんなに小さいのに
ちゃんと知ってた

 

 

 

石化2022

 

工藤冬里

 
 

May 9
評判のサメ映画no sharkをアマプラで観た。アメリカを食い殺すのはロシアではなくアメリカ合衆国自身である。
Saldrá furioso a aniquilar y destruir a muchos
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8:29 AM · May 10, 2022·Twitter for iPhone
ベルセバ新譜は引き潮で顕になったレフトのしがみつく唱歌の岩礁のようだ
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10:00 AM · May 10, 2022·Twitter for iPhone
君を忘れない
まがリープクネヒトった道を行く
天皇クネ仁と波は黄色く盛り上がる
三度目は戦争と呼ばなかった
グリズリーの短い日きっと想
像した以上に騒がしい未来が朴を待ってらいし

テールの若葉だけで通用
食うなレール木が下よ笹
塚な綻びをツブ貝舗道に唾棄指名手配
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7:37 AM · May 11, 2022·Twitter for iPhone
ベリーズのクレオール語は最高だ
ラリーズのクレイヨラがエチオピアだ
タリーズなら愛大病院にある
久万に喰われて死にたいとシアトルの本店に伝えたが
今日は曇りなのでその日ではない
河岸を変えよか、と吉原潤はよく言っていた
吐くなよ、とも。
別のインベーダーゲーム機の店へ行くだけだったが!
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7:55 AM · May 11, 2022·Twitter for iPhone
寒ければ着ればいいのよ秋までは水は冷たいままなんだから
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8:30 AM · May 11, 2022·Twitter for iPhone
人が死ぬ首を吊ったり転んだり癌になったり滅ぼされたり
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8:32 AM · May 11, 2022·Twitter for iPhone
一号螢出ました
もう、だめです
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9:03 PM · May 11, 2022·Twitter for iPhone
うっすらと化石燃料の筋膜が黄色の側頭回合野を覆う
生活は
出来なくなるだろう
料理をしないまま電池を買いに行く些事だけになる
崩れかけた煉瓦の演出と石油由来の壁面は断罪される
仕舞いには泣く力も失くなった
食事を作る気力も失ない、胡桃の脳は石化したのだ
寒い夏の木に負けて家の水圧が低い
植物たちと戦後教育が話し合っている

かっこいい病気 脚気(かっけー)
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9:49 AM · May 13, 2022·Twitter Web App
El que muere queda absuelto de su pecado
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8:14 AM · May 14, 2022·Twitter for iPhone

耳のある人は見ず
目のある人は聞かなかった
左に、と言われたら右と思い
昼に、と言われたら夜か、と考えた
Joey Ramoneの前屈姿勢で祈ったが知らないと言われる
白化した背景の上で定規を動かし
目と口に見える化石を探す
聞くだけの骨になってしまったので筋膜ごと石化したのだ
眼鏡ケースか筆箱か、アイヌ紋様の布製で、
左ハンドルのダッシュボードにはミイラの粉が積もっている
注射場に停めるわたくし
ブランケットを分かち合い
新しい人格はパーツで切り離して考えるものではないと教えられる
首を傾けて喋る癖を無くさないと耳が聞こえなくなる
更地にして大樹を生やすわたしの権力も
落下する車から飛び出した
磁界も電界もこの谷底の白化の上で定規を動かして

 

 

 

#poetry #rock musician

また旅だより 45

 

尾仲浩二

 
 

20年ぶりに鹿児島へ行ってきた。
用事はなにもないので、ぶらぶら歩き回って温泉に入ったり焼酎を飲んだり。
市内の老舗デパート山形屋(やまかたや)の食堂では、みんながカタ焼きそばを食べていた。
名物だそうで、とてもボリュームがあって安くうまい。
指宿では東京で高値の玉ねぎが安かったが、さすがにこれを持って歩きたくはなかった。

2022年4月22日 鹿児島にて