夢のカリフォルニア

 

今井義行

 
 

8月に精神的にひっ迫していたわたしは
いまの処方の薬で劇的な回復を得られた
薬で治せる物はさっと薬で治してしまう
方がさっぱりしてて良いとわたしは思う

サインバルタカプセル 20mg×3+リフレックス錠 15mg×3 が
わたしの場合 それだった
最高の相乗効果が得られる薬と薬の組み合わせを
カリフォルニア・ロケット*というそうだ
*アメリカ合衆国の精神薬理学者スティーブン・M・ストールが考案した療法で、
単剤処方では十分な治療効果が得られない難治性うつ病を異なる作用の抗うつ薬で
神経伝達物質のさらなる増加を図るものである。
(ネットより引用)

カリフォルニア・ロケットを就寝前に経口投与すると
その翌朝には 脳内に花が咲き広がっていました

カリフォルニアへ行こう
わたしにも暮らせそうな 夢のカリフォルニアへ・・・・・・・・
自分の居たい場所は
制度に水を差されないところに
自分で創ろう、ってこと

そんな気持ちになれたことは、素晴らしい、ってこと

〈ありがとう、カリフォルニア・ロケット!〉

いま・ここ
築40年の 朝でも陽の当たらない アパートの
6畳間の 空容量の 3畳分を
ちいさな ちいさな 書斎として
わたしが、認識するという 出来事

デスクトップパソコンをひとつの中枢神経とする
都市計画・・・・・・・・
まわりには
亡くなった母の微笑んでいる一葉の写真と
Bluetooth キーボードと
機種変更したばかりのこれから慣れたい Android Ver8と
漆黒のプリンタと 直角の座椅子と
それから・・・・・・・・
詩のことばを求めて 漂い巡る わたしの指先。

〈ありがとう、カリフォルニア・ロケット!〉

〈ここは、とても 生き心地の 良い 場所です〉

All the leaves are brown (all the leaves are brown)
And the sky is grey (and the sky is grey)
I’ve been for a walk (I’ve been for a walk)
On a winter’s day (on a winter’s day)
I’d be safe and warm (I’d be safe and warm)
If I was in L.A. (if I was in L.A.) (ネットより引用)

どんな状況でも カリフォルニアを夢見よう

さまざまな時にさまざまな光と出遭った
さまざまな場でさまざまな光と出遭った
今朝も早朝覚醒だ 涼しくひと気の無い
早朝散歩の後にはノンアルコールビール
9月の わたしは 生まれ変わったよう

Stopped into a church
I passed along the way
Well, I got down on my knees (got down on my knees)
And I pretend to pray (I pretend to pray)
You know the preacher like the cold (preacher like the cold)
He knows I’m gonna stay (knows I’m gonna stay)

8月に精神的にひっ迫していたわたしは
いまの処方の薬で劇的な回復を得られた
気がつけば初秋だ早朝覚醒の続く初秋だ
新しいスマホに慣れようとしている今だ
不意打ちのような尿意に慌てている今だ

California dreamin’ (California dreamin’)
On such a winter’s day

California dreamin’ (California dreamin’)
On such a winter’s day

どんな状況でも カリフォルニアを 夢見よう

詩のことばを求めて 彷徨い巡るわたしの指先。

〈ありがとう、カリフォルニア・ロケット!〉

(ああ、いま・ここは、)

〈とても 生き心地の 良い 時空です〉

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

不意打ちのような尿意に慌てている今だ

 

 

 

ピンナップス

 

今井義行

 
 

 

三畳ほどの わたしの小さな 書斎です
PCとスマホ・タブレットを連動させて
います 何か湧いてきたら詩作をします
フェイスブックの投稿・閲覧もここから

*

今日も早朝覚醒だ 涼しくひと気の無い
早朝散歩の後にはノンアルコールビール
強い抗鬱剤と睡眠導入剤が劇的に効いて
9月の私は生まれ変わったような気分だ

*

今日も早朝覚醒だ 涼しくひと気の無い
早朝散歩の後 朝食 今日の幸いを想う

さまざまな時にさまざまな光と出遭った
さまざまな場でさまざまな光と出遭った

*

Have a nice day! 良い連休を!

*

母のおもいで──・・・・
ゆっくりと 歩きながら、還っていった。

*

東京・下町 平井の街を散歩してみると
たくさんの 青い物が ある街と気づく

*
さとう三千魚 様

詩の原稿を、メールにてお送りいたしました。
よろしくお願いいたします。

今井義行 拝

*

摂食障害(過食症)に、苦しんでいます。
連続飲酒ではなく、連続飲食・・・・・
冷蔵庫にあるものはあればあるだけ食べ
我慢できずに深夜でもスーパーへ向かう。
強い抗うつ剤の副作用か初めての経験だ。

*

内蔵バッテリーが消耗してしまったので、
スマホ機種変更。HUAWEI P20lite。

国産 Android から中華系への乗換えです。
価格は安くなり高性能化の著しさに驚く。
暫く遊べるかと思っていたら遊ばれてる。

*

さとう三千魚 様

詩の原稿を、メールにてお送りいたしました。
よろしくお願いいたします。

今井義行 拝

*

Twitter で、見つけた。その通りだと思う。
≪書けなくても、「書きたい」という気持ちはなくならない。しかし、書けなくなったとき、 何とかして書き続ける方策を求め続けるか、また書かないでそのままになってしまうか、と いうことの間には大きな差がある。≫(鈴木志郎康『現代詩の理解』p46)

*

さとう三千魚 様

詩の原稿をお送りいたします。
「ワードファイル」1 点と「画像ファイル」1 点です。
よろしくお願いいたします。

※詩の 1 行が長過ぎる場合の、行の折り返し方については、
さとうさんにお任せいたします。

今井義行 拝

*

新しい詩を、公開しました。
お読み頂ければ嬉しいです。

https://1drv.ms/w/s!AuMKztyQPhUJ-GKmDLAWG4spupWH

*

«ご案内»

わたしの新詩集『Meeting Of The
Soul (たましい、し、あわせ)』を
自分の在庫分からも販売したいと
思います。
定価 2700 円(税込)を 2000 円(税込)
にて直販したいと思います。

ご希望の方は、ご住所明記の上、
メッセージでお知らせください。

今井義行

*

今日も早朝覚醒だ 涼しくひと気の無い
早朝散歩の後 朝食 今日の幸いを想う

さまざまな時にさまざまな光と出遭った
さまざまな場でさまざまな光と出遭った

*

関聡美 様

こんにちは。
今日、詩集の代金、確かに受領いたしました。
ご購入くださって、本当にありがとうございました。

取り急ぎ、お報せまで。

今井義行 拝

*

概ねが 休暇にちかい わたしは
午前中に 2005年に出した 自分の詩集を
読み返していました
詩集としてどうかという箇所は多かった
が、〈季節はどの花にも責任をもつひつようはなかった〉
という一行を 記録できたのは 良かった

 

 

 

遥かなる影

 

今井義行

 
 

詩には、消費期限がある──・・・・
と わたしが 考えたのは

日本の名詩アンソロジーで
飯島耕一作品「他人の空」(1953 年)を読んだとき。

空0鳥たちが帰って来た。
空0地の黒い割れ目をついばんだ。
空0見慣れない屋根の上を
空0上ったり下ったりした。
空0それは途方に暮れているように見えた。

という一連目 わたしは、
自然界の鳥たちを写生した
陰影のある風景の詩歌と 考えたのだ
しかし、解説文があって

戦後詩を代表する心象詩であるとのことだった。

帰って来た「鳥たち」というのは「喪失者」のことらしい
「途方に暮れている」のは
「喪失者」たちのこころであるらしい

第二連をよく読んだのか、と
お叱りのことばを受けてしまうのだろう、か?

空0空は石を食ったように頭をかかえている。
空0物思いにふけっている。
空0もう流れ出すこともなかったので、
空0血は空に
空0他人のようにめぐっている。

ほら、「頭をかかえている」ではないかと
「物思いにふけっている」 ではないかと
それらは いずれも
人々の所作であるでしょう、と。

「血は」「めぐっている」でしょう、と。

そう言われたところで
わたしは 解説文に「はい」とは言えない

昨日の昼間 駅前広場で見た限り
餌を求めて無数の鳩が
ベンチに座ってシナモンロールを食べていた
わたしのまわりで
ぐるぐると
脳の入った頭を振りながら

それらの いきものは、
「頭をかかえている」
状態でもあったし
「物思いにふけっている」
状態でもあった──・・・・
腹を減らしていたんでしょう

詩に解説文なんていらないんじゃないか
文字面どおりに読んでいいんじゃないか
額面どおりさらっとでいいんじゃないか

「他人の空」は、消費期限切れだ。
2018 年 9 月 16 日現在
そうとしか 言いようがない。

もう、隠喩の場合ではない、
詩のそのような影は、遥かなる影だ──・・・・

 

 

 

愛のゆくえ

 

今井義行

 
 

I have lost interest in you already.
(わたしは、すでにあなたに対する関心を
失ってしまって いるのですが)

海に連れていってあげられたらよかった

日本の海の 江ノ島の
クリームソーダのように泡立つ波が

あなたの ブラックの肌に
どのように 降りかかるのかを
感じる ために・・・・・・・・・・

I want to live with you in Japan!

あなたは ワタシを もとめていたの?
それとも 二ホンを もとめていたの?

そこのところが 掴めず
わたしは 見逃がしてしまった

シングルマザーのフィリピーナ
あなたの 声音も誓いも 全部

残ったのはブラックの肌の 香りだけ
肌は 月経血の 香りがした

彼女は もう産まないと言った

 

 

 

涙の乗車券

 

今井義行

 
 

I want to stay with you in Japan!

あなたは ワタシを もとめていたの?
それとも 二ホンを もとめていたの?

14歳年下の フィリピーナ
シングルマザーのフィリピーナ

マニラで一緒に申請したけれど

彼女は 短期滞在ビザを得られず
成田へのフライトチケットをキャンセルした

He’s got a ticket to ride
He’s got a ticket to ride
He’s got a ticket to ride
and he don’t care.

あの人、もう乗車券も買ってあるわ
乗車券も買ってあるわ
乗車券も買ってあるわ
私の気持ちなんて気にもしてない

He said that living with me
was bringing him down
Yeh
He would never be free
when I was around.

私と一緒にいると
落ち込んじゃうって言うの
そうよ
私がそばにいると
自由になれないんだって *ネットより引用

あなたは まだ既婚者だった 前婚未解消のまま
11 年経っていた

フィリピンには
結婚の制度はあるけれど
離婚の制度は ないのだ

健やかなるときも病めるときも
添い遂げる国なので

わたしは ひとり
マニラ空港から帰ることになった

彼女は弁護士を立てて
離婚を成立させると言った

けれど わたしは
I want to be free in Japan.
と 言ったのだ

彼女は「私は約束する」と
言ったのだけど

わたしは 「なにを?」と
聞き返したのだった
彼女のブラックの手を握って

 

 

 

サウンド・オブ・サイレンス

 

今井義行

 
 

アメリカにはポールサイモンがいた
いまだって いきてるって?
いまだって 在るのは〈 The Sound of Silence 〉です
〈 沈黙の音 〉ですか そんな現代詩の題みたいな曲が
よく全米No 1になったな
1966年の 出来事だった──・・・・・・

わたしは、まだ小学校に入っていなかった

In restless dreams I walked alone
そわそわした夢の中、僕は独りで
歩いていた

Narrow streets of cobblestone
石畳の狭い通りをね

Neath the halo of a street lamp
街灯の明かりの下

I turned my collar to the cold and
damp
僕は街の寒さに襟を立てた

When my eyes were stabbed by
the flash of a neon light
僕の目にネオンの光が飛び込んだ

That split the night And touched
the sound of silence
それは夜を切り裂き、「静寂」に
触れたんだ *ネットより、引用

わたしも「静寂」に触れたその時々に
ガラス細工の鳴るような音を聴いたものだった
〈 The Sound of Silence 〉
来し方を顧みれば
わたしは 3度 結婚を考えたことがあった
そのひとつひとつの出逢いが終わるまぎわに
ガラス細工の鳴るような音を聴いたのだった

月曜日のデイケアは
フリーテーマの ミーティングの日で
その日のわたしは こんな発言をした

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●私事でひと月ほどデイケアを休んでいましたが、今日から
週3回のペースで復帰いたします。また、よろしくお願いいたします。
●このひと月の間、何をしていたかと言いますと、
フィリピンに滞在していました。2016年にFacebookで知り合って、
事実婚状態にあったフィリピン人女性を日本に招くためのビザの申請の為です。
結果は、これで3度目の「不許可」となりました。
●今回、日本語で交渉したいと思い、日本人が経営するエージェンシーに
ビザ申請代行を依頼しました。
彼女がシングルマザーであることは承知していましたが、
提出書類から、彼女が今現在もまだ結婚していることが判りました。
11年間、元夫との結婚の解消手続きが為されていませんでした。
●わたしが無職で生活力がないとうことが「不許可」の原因かもしれません。
本当の所はわかりません。
彼女は大変良い人で、わたしに対して常に優しく接してくれました。
しかし、これでは、将来的に、日本で一緒に暮らすのは無理である、と
判断して、帰国後、関係を清算しました。
これまで、スマホに蓄積されてきた写真など、大量のデータの削除などを
行いました。そんな時、むなしいこと、この上ありませんでした。
わたしは、身寄りも友人も、殆どありませんので、
スマホを携帯していること自体、意味が無くなってしまいました。
●お酒に関する話題に移ります。
フィリピン滞在中から、いま現在に至るまで、
HALT(Hungry,Angry,Lonely,Tired)の4つの条件がすべて揃ってしまう
瞬間に襲われることが、しばしばでした。
しかし、それでも、飲酒欲求は全く湧いてきませんでした。
何故なのかと考えをめぐらせてみますと、「自分は、もうこれ以上、
最低の人間にはなりたくない」という気持ちが強いからだと思い当たります。
●正直なところ、「人間を、もう辞めてしまいたい」という、
烈しい希死念慮にも、しばしば憑りつかれています。
けれど、それを実行してしまって、周りの人達にまた多くの迷惑をかけ、
本当に、最低最悪の人間になるわけにはいきません。
苦しくても、これからのデイケア参加を通じて、
生活の立て直しを図ろうと考えています。
●わたしは55歳になりました。まだまだ、人生は続いていきます。
しかし、何のために生きていくのか、と考えると、何も思い浮かばず、
ただただ、途方に暮れてしまいます。
断酒生活は継続できるかもしれませんが、ただそれだけで、
やがて高齢の障害者となっていき、ひっそりとこの世から消えていくのかと
思うと、本当にさびしい限りです。

何のために生きていくのか
3度目に結婚を考えたその彼女はルソン島ブラカン州のPasayoという
住宅街の持ち家で
朝から褐色の腕に刷毛を持って壁に白いペンキを塗っていた

彼女は自分の褐色の肌を「醜い肌」だと言い
わたしの肌を「白くて綺麗」といつでも言った
そして 家の中も 執拗に白く染め上げていた

何のために生きていくのか
暮らしを白く染め上げていくためではない──・・・・・・
と わたしは思った
さまざまな色の日々を味わいたいとわたしは思った

「扉が真っ白になったわ」と
彼女はソファーに横たわっているわたしを見て微笑った
彼女の褐色の鼻に白いペンキが付いていた
「ミルク色の生活だわ」
彼女は完璧主義のカソリック教徒 そして
日本へ行ってわたしと暮らすことを強く願っていた
そんな彼女がなぜ前婚未解消なのか
わたしには不思議でならなかった
その一方で 健やかなる時も病める時も
手と手とを繋ぎあっていくような 一夫一婦制が
わたしには 足枷にも感じられた
そして 彼女のビザの申請が「不許可」となった時
わたしは、ガラス細工の鳴るような音を聴いたのだった

I want to be free in Japan

帰りの飛行機の中から
遠ざかるフィリピンの島々を眺めながら
わたしは、わたし
つがいには成れないと 思ったのだった
途方に暮れる と しても、ね。

アメリカにはポールサイモンがいた
いまだって いきてるって?
いまだって 在るのは〈 The Sound of Silence 〉です
〈 沈黙の音 〉ですか そんな現代詩の題みたいな曲が
よく全米No 1になったな
1966年の 出来事だった──・・・・・・

わたしは、まだ小学校に入っていなかった

わたしは 3度 結婚を考えたことがあった
そのひとつひとつの出逢いが終わるまぎわに
ガラス細工の鳴るような音を聴いたのだった
と わたしは、記した。

 

 

 

愛はかげろうのように

 

今井義行

 
 

愛はかげろうのように
・・・・・・・わたしの 好きな 歌なのです。

美しい旋律が広く知れ渡っているので
祝い事にも多くながれるようだけれど。
世界中を彷徨いめぐり幸福もあったが
とうとう自分を掴む事はできなかった
と、締め括られるこの曲・・・・・・・
高級娼婦の回顧のかたりになっており、
哀しみを哀しくかたる儚いシャンソン
も佳いのだけど。この孤高の一曲には
およばないのではないか。
モータウン初の、白人シンガーによる
ものでもある。

愛はかげろうのように
・・・・・・・わたしの 好きな 歌・・・・・・・。

自分を、掴まえなくてはならない
と いうことはない と 想うよ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まばたきをするだけでも 脂あせをかいた猛暑は過ぎて
デイケアルームの空調の設定も変わった

「午後のプログラムです」

作業療法士さんによる
作業療法が はじまる

(今日、突然 メガネが 割れてしまったら どうしよう──)
(今日、突然 冷蔵庫が 壊れてしまったら・・・・・・・・・・)

「サインバルタカプセル」20mg×3と
「リフレックス錠」15mg×3で、
日々の焦燥感を乗り越えているンだ、わたし

「今日は、お酒にまつわることを内容に含めて
子どもたちを対象にした
短い授業を 作文にしてください
そして、それを 参加者を
子どもたちに見立てて 発表してください
設定場面は それぞれの自由です
質疑応答は 無しとします」

デイケアルームは「えー、原稿用紙に鉛筆で
作文を書くなんて何年ぶりだろう」と どよめいた

わたしを含め 皆、それぞれにスマホで
漢字を調べ始めたりした

わたしは、鉛筆で原稿用紙に向かいあい
制限時間の20分で作文を書いた
それは、詩の手紙のような 形になった

わたしの順番が訪れて、コの字型に並べられた
机の真ん中で わたしは短い授業を読み上げた

『設定/小学校6年生を対象にした
某クラスの部屋』です。

こんにちは。わたしは、イマイヨシユキと言います。55歳です。
わたしは、お酒で体を壊してしまった人が通う、病院から来ました。
みなさんのお父さんやお母さんは、お酒を飲みますか。
お酒が原因でお父さんとお母さんがけんかをしたりして、
悲しい思いをしたことはありますか。
みなさんが大きくなっていく中で、これから、いろいろ、
やってみたいことが出てくると思います。
スポーツ選手になってみたいとか、お店をやってみたいとか、
世界中を回れるようなお仕事をしてみたいとか・・・・・・・。

わたしは、小学生の頃から、文章を書くことが好きでした。

大人になったら、文章を書くお仕事につきたいと思っていました。
わたしは、大学を卒業した後、出版社に入りました。
けれども、会社員というお仕事になじむことができずに、
会社ではたらきながら、自分の気持ちを、詩に書くようになりました。

そして、27歳のとき、はじめて詩集を出して、
わたしは、詩人になりました。

詩人は、お金が稼げないので、
会社ではたらきながら、詩を書き続けました。
とても、しあわせな気持ちでした。
けれども、会社のお仕事をあまりしないで、
お仕事の時間にも、詩を書いていて、
そのことが、会社の人たちに、知られるようになりました。

ある日、わたしは、会社の人に呼び出されて
「あなたは、会社の役に立っていないから、やめてください」と言われました。
わたしは、46歳のときに、会社をくびになりました。

わたしは、その後も、自分の仕事は詩人だと思って、詩を書き続けました。
そのことと同時に、前から好きだった、お酒を飲む量もどんどん増えていきました。
そして、とうとう、お酒で体を壊してしまいました。

詩を書くことや、お酒を飲むこと。
わたしは、自分の好きなことだけを続けてきて、
体を壊して、貧乏にもなり、55歳になりました。
わたしは、わたしの今までを振り返って、何の後悔もありません。

けれども、これから小学校を卒業して、巣立っていくみなさんに向けて、
好きなことだけを一生懸命、続けていってください、と
伝えることが出来ないのが、残念で、苦しくなってきてしまいます。

わたしは今、お酒をやめていて、健康は回復してきました。

今までに、8冊の詩集を、出しました。
わたしが死んだ後、どこかで誰かが、
わたしの詩を見つけてくれるかもしれません。
そんなことがあったら、とてもしあわせです。

わたしは、みなさんに、このようなお話をしましたが、
でも、みなさんが大切にしていることは、
もちろん大切にしていってください。
健康を大切にしながら、
どうぞ、素敵な人に成長していってくださいね!

(今日、突然 水道が 溢れてしまったら どうしよう・・・・・・・・・)

「サインバルタカプセル」20mg×3と
「リフレックス錠」15mg×3で、
日々の切迫感を乗り越えているンだ、わたし

(リプライズ)

愛はかげろうのように
・・・・・・・それは、わたしの 好きな 歌なンです。

美しい旋律が広く知れ渡っているンで
祝い事にも多くながれるようだけれど。
世界中を彷徨いめぐり幸福もあったが
とうとう自分を掴む事はできンかった
と、締め括られるこの曲・・・・・・・
高級娼婦の回顧のかたりになっており、
哀しみを哀しくかたる儚いシャンソン
も佳いンだけど。この孤高の一曲には
およばないンではないか。

自分を、掴まえなくてはならない
と いうことはない と 想うヨ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自分を、掴まえなくてはならない
と いうことはない と 想うンダヨ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

青春の光と影

 

今井義行

 

アコーディオンカーテンの隙間から
隣りの低いビルの屋根を見ると
塵紙等の 細かいものが落ちていた

そのような 単なる、木曜日。

「午後のプログラムです」

作業療法士さんによる
作業療法 *が はじまる

*障がいのある人に対して、生活していくために必要な動作や社会に
適応するための能力の回復をめざし、治療を行う。その治療手段の1
つとして様々な作業や手工芸を用いる事が特徴。──ネットより引用

 
その部屋のばらも底をついて
4つのグループに分けられた机の上には
黒いペン 鉛筆 色鉛筆 消しゴムと 参加者分、
約20枚の 白い画用紙が置かれていた

精神障害者認定されてから もう何年になることだろうか
わたしは 55歳になって
「断酒」をテーマにした「ゆるキャラ」造りに取りかかろうと
いうのだ

隣りに座っているのは 42歳の
丸刈りのMアァっつぁんで 彼の声音は
「二階堂(麦焼酎)の瓶なら 描けるかもしんないけど
俺には なんにも降りてこないィィィ・・・・・・・」と
仔ヒツジのように身をよじらせるのだった

そのような、木曜日 の
夜明けには ジョニ・ミッチェルの〈 Both Sides Now 〉を ヘッドフォンで聴いてきた


〈 Both Sides Now 〉

* 青春の光と影 *
全米チャートに身をそむけて一旦
は引退したジョニ・ミッチェルは
2000年にポピュラー音楽界に復帰
したのだった──。
そのときには、シンガーソングラ
イターの姿ではなく、1ヴォーカリ
ストとして現れた。
〈 Both Sides Now 〉は、
多くの人たちの中の青春の一曲で
あったけれど、その時からセルフ
カヴァーを遙かに超えた、100年は
聴かれ続けられるだろうものへと
普遍化を遂げたのに違いない・・・・

 
売れることのなかった名演だった わたしはジョニの、自らの名前ではなく
表現を 死後へと力業で定着させていくというやり方に
それが最良のやり方かどうかはともかく
何処かで肯定し、憧憬も抱いた
わたしはまだ、これからも詩を書くが これまでの自らの表現も
お金を貯めていつか1冊のアンソロジーにまとめて残していきたいという
思いを 抱いたのだった……

参加者は男女混淆で 入退院を繰り返しているものも
数度目の休職中のものも見事に家庭崩壊してしまっているものも・・・・・・・
わたしのように希死念慮に憑かれてしまっているものもいるのだが

わたしたちに「〇〇〇依存症」「〇〇〇性障害」「〇〇〇症候群」などと
勝手に名前を付けてしまう行為は止めてくれないか?

制限時間一杯になって それぞれに描かれた「断酒のゆるキャラ」は
写真として取り込まれて 皆でスライドショーを見ることとなった
作業療法士さんは「わ、いろいろな ゆるキャラ!」と言った
例えば帽子を被った「無ッシュ」、とても長い鼻を持つ「呑まん象」、手の震えが止まらない「離脱クン」などなど、わたしはと言えばアゴだけが肝臓の形のゆるキャラ界の硬派
「高倉カン」という具合だった

賑やかなその中に細くて消えそうな鉛筆線だけで描かれた「七ちゃん」という
キャラクターが混じっていた 絵のわきにやはり鉛筆線で「二階堂のビン持って
深夜 ネグリジェ姿で徘徊を繰り返してまあす」と走り書きされていた
画用紙を 腕で隠すようにして描いていた
Mアァっつぁんから 出てきたものだった

ほかの誰もが 用意された道具を使って
「鉛筆で下書きを描く→黒のペンで下書きをなぞる→黒の枠組みの中を
色鉛筆で丹念に塗る」という工程をたどって絵を仕上げていたのだったが
Mアァっつぁんだけはそうでは無かった

「七って、何だい」
「そんなもん 俺が知るかよ」

机の上に道具は置かれていたものの 作業療法士さんは描く方法について
何の説明もしていなかったことにはじめて気づかされることになった
Mアァっつぁん以外の参加者は
誰もが 「ぬりえ」に専念していたということだ・・・・・・・

単なる、木曜日に。

その日の作業療法士さんの作業療法の意図が何処にあるのか判らなかった
けれども、わたしはとても驚いてしまって
隣りに座っている Mアァっつぁんの横顔に向かって
「Mアァっつぁんの絵・・・・・・・凄いな、凄いな、」と繰り返していたのだったが
Mアァっつぁんは 「皆、ウマイっつすよねえェェェ・・・・・・・」と
仔ヒツジのように 身をよじるばかりなのだった

「Mアァっつぁんの絵凄いな、凄いな、」
「今井サン・・・・・・・。どうせサァ、俺の絵を見くだしているんだろうようゥゥゥ
俺が人間の屑なの、スクリーン見れば、一目瞭然、じゃねえかようゥゥゥ!!」

Mアァっつぁんは 、 「ふざけんじゃねえようゥゥゥ!!」と呟いた
「あんな絵、今井サン・・・・・・・。
詩人のテメェに くれてやるようゥゥゥ!!
パソコンの隣りにでも貼っとけ バカヤロウゥゥゥゥゥゥ」

 

 

 

Meeting Of The Soul (たましい、し、あわせ) Part 3

 

今井義行

 
 

Meeting Of The Soul (たましい、し、あわせ) Meeting Of The Soul
(たましい、し、あわせ) *太字は作者による

これが、わたしの ≪世界最短詩≫ への 返歌

Meeting Of The Soul (たましい、し、あわせ)
(し、あわせ)

午後4時に 散会した後 参加者たちは それぞれに
下町・浅草橋の さまざまな路地へと 去っていった

意気投合して「早くから開いてる 居酒屋、行こうや」
そんな可笑しな会話が ふっと耳に入ってきたりした

*************************

「命令 されなくても 出ていくずら
《世界最短詩》アゲイン なむあみだぶつ!!

“シャローム”ではじまり “なむあみだぶつ”で沸点に達した
はじめての AA 参加だった…………… (いまごろ、あの人は、
盛夏の深い緑に覆われた 古都・鎌倉への道を 辿っていることだろう)

一緒にカソリック教会を出た“ナポレオン”が 呟いた
「“あまでうす”さんだったっけ
あの人、なんていうか・・・・・・ すげえ、かったな」

tree
写真/佐々木 眞

 

「・・・・・・・・・・・・詩人だよ 」と わたしは言った 「それにしても、
断酒ミーティングが終わると速攻で呑みに行く人たちもいるんだなあ!!」

わたしたちは、浅草橋の駅まで歩きながら お喋りをした

「呑むか、呑まないか 死活問題だなんて言うけどさ
おれにとっては本音を言えば どうだっていいんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「家族 持ったから。持って しまったもんだからさあ
覚醒剤やると 非合法だから 投獄されちまうけれど
ナポレオン 浴びるほど煽っても 酒は合法ドラッグ
だから厚生労働省が“病気”扱いにするわけだろう
アルコール病棟の患者への蔑視、犯罪者を見る目だ
それだけの違いじゃないか なんだか馬鹿々々しい」

「神」は「紙」“霊性”に身をゆだねて、みずからを助ける、
ということなら “白紙”になることだ、って 思って
みるとしてさ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「なんだよー、“あまでうす”さんの受け売りかよ!?」

「いや、そうじゃない。取敢えず俺たち 何度かリセットは
してるわけだろう」

「まあな、でも俺の場合、まだ リセットとは言い切れない
迷惑をかけた家族が“しあわせ”になれるような 環境を
どうにか残してそして1人になって やっと“白紙”だよ」

“白紙”って何でも描けるね“ナポレオン”さんはどんな
ことをやってみたいの? 無理に答えなくてもいいけれど」

金髪の靡く “ナポレオン”の薄青の サングラスが 光った

「死んでもいいから ナポレオンと覚醒剤に おぼれたい」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

太陽はみていた ────
わたしは、胸ポケットから 折りたたんだ 紙切れを出して
“ナポレオン”の 目の前に 開いて 差し出した ────

【 Meeting Of The Soul (たましい、し、あわせ) 】

「これ、ぼくが ミーティング中に書いた、詩なんだ」

「へえ・・・・・・・・・・・、“イマイ”さんも 詩を 書くのか?
“あまでうす”さんの詩より 長いし 何の こっちゃ」

「“ナポレオン”さんは 家族に“しあわせ”になれる
ような 環境をどうにか残して そして1人になって
やっと“白紙” になれるって 言ってただろう?」

「ああ、そのとーり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ぼくは リセットされつつあるいま 脳が反射的に
詩を選びとった その心の動きに 身を委ねるんだ
【 Meeting Of The Soul (たましい、し、あわせ) 】
それは、“詩”と“詩”の出会い たましいどうし
それをあわせる 詩、合わせ のミーティングだ」

「なーるほど、生きてくってほうを選んだわけだな」

「リセット(Reset)されつつあるいま 詩に心身委ね、
リボーン (Reborn)するそうできたら“しあわせ”

“今井義行”と“ナポレオン”は「また、何処かで会おう」なんて
言わないで JR浅草橋 西口の構内で 別れ別れになった・・・・・・・・

*************************

立秋が過ぎたころ わたしはネットで調べて
『地域活動支援センターえどがわ』というNPO法人へ訪ねていった

13:00の「相談予約」 冷房の効いた 小会議室で
待っていると 若いにこやかな相談員が入ってきた
産休明けの はじめての面談になるとのことだった

彼女は「どんなご相談内容ですか?」と登録用紙
を差し出しながら わたしに尋ねた ─────

「相談内容をまとめてきたので 読み上げますね」

2016/08/10

今井義行/1963年7月13日生まれ いま53歳 離職期間7年
 
無職/秋葉原メンタルクリニックでうつ治療、アルコールデイケア参加
 
他に、西大島・肝臓内科治療受診中

 

精神障害者手帳3級保持➡平成29年3月31日失効(予定)
 
精神障害者年金3級➡平成29年8月を以て支給停止(予定)
 
≪現状 年金月額 6,5000円位≫
 
毎月10万円の赤字が出ており、このままいくといずれ「生活保護申請」へ
 
●手帳が失効する前に、また年金支給が打ち切られる前に、
自分の現状に合ったかたちで、社会復帰したい。
●目標収入➡月収手取りで6〜7万円 それでも毎月10万円の赤字は出る。

≪今後の生活相談≫

わたしは、詩人です。1991-2012年までに詩集7冊上梓しました。
詩作は、現在も毎日続けており、あと1冊でよいから、詩集を出したい。
詩集というのは、ベテランでさえ私費を投じる特殊な物なので、
制作費を捻出する必要がある。また、「時代」を捉える手立てとして
労働によって、世間の動きを捉える必要があると、切実に思っております。

治療は長丁場となる見込みなので、
時間的、環境的に自分に合ったかたちの

 

就労形態を希望➡平成29年 4月からが目標

 

≪具体例≫

 

◉在宅ワーク(元編集者なので、校正、テキスト入力など)

 

◉組織体に適合しないので、近場の会社でパソコン入力など個人ペースでできる仕事

 

◉高齢者のお役に立ちたいので、資格は持っていないが、デイサービス勤務 以上です

 

「今井さん、これから多くの チャンスがあるわ」
相談員は 事務室に 戻って A3の紙を 封筒位の
大きさに たたんだ “つぼみ・8月号” と いう
登録者向けの パンフレットを わたしに手渡した

「今井さん、これにあなたの詩を載せてみない?
800部発行してるから800人の手許に届く
言葉を通じて出会いたい それが願いなのでは」

「相談員さん、ぜひ書かせてください 人の手を
握るように 詩を 届けられる好機と想います」

*************************

 

使える 紙面の スペースに 制限が あるために
わたしはかつて書いた 詩のメモから1つを探し
次回の相談日に 間に合うよう手を入れていった

そうして、出来上がったのがこのような詩です

還暦
今井義行 (詩人)

あと7年 経つと 還暦になる
初老だ
いまからが ねばりどきである

数年間横たわりつつ療養をした
動かないから当然脂肪がついた

早く社会で 脂肪を燃やしたい
すいすいと動いて信頼されたい

ところが寝ている時間がとても
長かったので脚の筋肉が落ちた

階段の昇り降りが手擦りを掴み
休み休みでないと歩けなかった

会う人ごとに 「肥ったね」と
言われないように節制している
一人一人に事情を話すわけには
いかないので 動く事だと思う

そうして無駄なものは振り落し
有効なものを 奪いかえすのだ

白髪が増えても自然現象だから
堂々としていれば いいはずだ

眠ってばかりいた 眼を凝らし
街の風景をつぶさにながめれば

働いている中高年がたくさんだ
それは油彩の絵のようでもある

油絵の具の多彩な盛り上がりが
その人の 歴史になって見える

あと 7年 経つと 還暦になる
初老だ
歩いていくとふくらはぎが痛い

 

to writing_edited
写真/今井義行

◉ ご感想をお待ちしております
swrd21@aol.com

 

感想のメールは いつか 頂けるでしょうか・・・・・・・・

 
 

(完)

 
 
 

Meeting Of The Soul (たましい、し、あわせ) Part 2

 

今井義行

 
 

Addiction (依存) Addiction (依存) Addiction (依存) Addiction (依存)

Addiction (依存) は、転移する病 *太字は作者による

酒からカカオへ 酒からバタアへ 酒から賭け事へ
酒から電子群へ 酒から愛慾癖へ 酒から全対象へ
その果てには、連続飲酒に みずから 帰還したり

*************************

わたしは、東京・浅草橋会場の AAに 参加した ことがあります

真夏の午後の 浅草橋・西口から 指定会場の カソリック教会
までには 幾つも幾つも立ち呑み屋があった

ブラックアウト(昏睡)してくださいと言わんばかりのひなびた
街の光景に コップ酒の匂いが 煩わしかった

昼に夜は海鮮居酒屋になる店で日本酒が合う
マグロ定食なんてものを頼んでしまった……

わたしはドアを開いて「初めてきました」と
浅草橋会場の人たちに告げた─── そして
さまざまな年齢層の アルコホーリクたちに振り返られた

AAはどのような宗教、宗派、政党、組織、団体にも縛られていない。
また、どのような論争や運動にも参加せず、支持も反対もしない。
*引用 太字は作者による

と いうけれども…… また、

*誤解を受けやすいのは、AAの回復のプログラムに
スピリチュアルな力を受け入れるという概念があるからでしょう。
このスピリチェアルな力をAAでは「ハイヤー・パワー」と呼び、
日本語では「自分より偉大な力」と呼んでいます。
*引用 太字・下線は作者による

と いうけれども……、
それは、仏教国とは言い難い日本ではアタリマエの
捉えられ方で 教団と想われても 仕方ない気がする
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翻訳のされ方に安易なところがあったのではないか

浅草橋会場の その日の ミーティング・リーダーが
カソリック教会の 清潔で 簡素な 無料の 会議室で
10人ほどの 参加者たちに 向かって 語りはじめた
彼は40歳台後半位の 痩せて目のつりあがった男だ

「前任のリーダーから 司会進行を 引き継ぎました
“イズム”です 酒に関わりのある エピソードなら
どのようなことでも結構ですからお話しください
わたしは前任者のように皆さんを裁きはしません」
(いきなり、不在者裁判かい)

「シャローム。* よろしく お願いします、“イズム ”─── !!」(参加者)
「では、はじめて参加の “イマイ”さんから時計回りで」
*シャローム/ヘブライ語で「平和」

「わたしは 今井義行といいます 53歳です 本名で参加いたします
(ニックネームをつける必然性をわたしは別に感じはしなかった)
30歳台後半から連続飲酒 退院後アルコールデイケア通所中です」
・・・・・・・・以下、略。・・・・・・・・
「シャローム。はじめまして、“イマイ” !!」(参加者)

「わたしはナポレオン 32歳です 13歳の時に友だちの家で呑んだ
ナポレオンが旨かった!以来連続飲酒 覚醒剤で服役 妻子あり」
・・・・・・・・以下、略。・・・・・・・・

「シャローム。はじめまして、“ナポレオン” !!」(参加者)
ナポレオンもはじめての参加者だった 金髪に薄青のサングラスが光る

「では、つぎの方」(“イズム”)

「こんにちは、“枕草子です”」
「シャローム。こんにちは、“枕草子”!!」

“枕草子”は、30歳台半ば位の白髪混じりの女だった
「わたしは、酒量が最大だった時の話をいたします
アルコホーリクと診断される前までは500mlの缶ビールを
1日2本呑むのが日課になっていました
が、毎朝コンビニに買いに行くのがメンドーになりました
それで500mlの缶ビールを4ダース48本 箱買いしました
そして 届いた途端 激しい飲酒欲求に 見舞われまして
その日のうちに 48本 全部呑んでしまったのでした」
(う、上には上が あるものだ、なんて考えは自己正当化!?)

「では、つぎの方」(“イズム”)

「こんにちは、“チチチチボーン”です」
「シャローム。こんにちは、“チチチチボーン”!!」

“チチチチボーン”は、頭頂が 丸く禿げた初老の男だった

「おれぁ、下町の酒屋のせがれなもんだからさ
小学校1年のときから 親に隠れて ちびちび
1升瓶から いただきはじめてさぁ、
やめられなく なっちまって 高校生のころには
毎日部屋で 1升空けるようになってさ
最高2升呑んでたねぇ 失禁してズドンと倒れて
救急搬送されていくとき 無茶苦茶あばれながら
救急車の中が銭湯の湯船に想えて おれのほかに
5人の男がお湯に気持ち良さそうに浸かってたね
いまは断酒してるけど 連続飲酒歴60年であります」
(や、やまいの 武勇伝の お披露目かな……)

「シャローム !!」「シャローム !!」「シャローム !!」

「こんにちは、鳴門金時です」
「シャローム。こんにちは、“鳴門金時”!!」

“鳴門金時”は、杖を使っている よく長髪を掻き上げるだった

「わたしは、大学卒業後 大学院へ進み 研究者生活に
入りましたが 研室に日々こもって 神経を消耗する
ことを 繰り返していく内に ウィスキーのボトルを
手放せなくなり初めはグラスでロック1杯でしたが
やがてそれでは満たされず 直接 ジャックダニエル
をラッパ呑みするようになり 入院前には 1日2本
空けてました 結果、アルコホーリク特有の 大腿骨
骨頭壊死になりました ご覧の通り “ちんば”です
50に手が届く今になっても 結婚願望はありますね」

「シャローム !!」「シャローム !!」「シャローム !!」

……………………………………………………………

「こんにちは、“あまでうす”です」
「シャローム。こんにちは、“あまでうす”!!」」
「わたしは 酒とは 直接には 関係ありませんが
一発 《世界最短詩》なるものを かますずら」
「シャローム。 “あまでうす”!!」
「《世界最短詩ぃ》 いくずらー !!」

「シャローム。 “あまでうす”!!」

「むちゃくちゃでござりまするがな」*引用 太字は作者による

「シャローム !!」「シャローム !!」「シャローム !!」

(ば、ばくだんが 一発 落とされたっ !!)
(も、もしかしたら、この人は………
佐々木 眞さんという わたしの好きな詩人なのでは)

(御成敗に 鎌倉から 浅草橋へ 訪れたのでは)

“言いっ放し、聞きっ放し”人々同士の口論には 発展させない
それがAA(匿名のアルコール依存症者たち)ミーティングの前提

「シャローム !! シャローム !! って繰り返しているが そいつは
神様、神様って 繰り返しているのと 同じことずら─── !!」

「………………………………………………」

「ハンドブックに、・AAはどのような宗教、宗派、政党、組織、団体にも
縛られていない。って書いてあるけど 何回読んでも けたくそわるいずら!!
それに 日本語では「自分より偉大な力」と呼んでいます。って書いてあるけど
それは、しょうもない日本語ずら!!
翻訳するなら「神」は「紙」と翻訳していただきたいずら!!
“霊性”に身をゆだねて、みずからを助ける、ということならば
わしらは“白紙”になることなんだから
わしらは“白紙”どうし、自由に発言していいはず、ずら!!
ちなみに わたしは、“阿倍蚤糞”に腹が立ってストレスの塊になったずら!!」

「シャローム。“あまでうす”!………………その発言は、

ミーティングルール違反ですよ……………………………
…………………………………………………………………
参加者が動揺してしまうので 退出をお願いいたします」

「命令されなくても 出ていくずら
《世界最短詩》アゲイン なむあみだぶつ!!

 

(続く)