absent ない 不在の

雪はとけて
田んぼにはすみれの花の咲いて

山々は白く
風はわたっていった

雲雀が鳴いていたな
空高く鳴いていたな

母はながく臥せていた
姉はふとってしまった

ないものに与えよ

ただひとつの不在をあたえよ
ないものたちにひとつの不在をあたえよ

 

 

story 物語

昨日は
突堤をみていた

風が強く吹いていた

休日には
いつも突堤をみている

突堤の向こうに
海と空が水平にひろがっている

変わらないものの
あちらとこちらに物語を探している

無い物語を探している

物語は始まっていた
物語は終わっていた

 

 

sure 確信して 確かな

今朝
新幹線の窓から光る海原を見た

帰ったら
庭の白木蓮の花がひらいていた

沈丁花の小さな花も咲いて
匂っていた

晴れた空のしたに
海は青くひろがり風は渡っていった

カモメたちは
ならんでゆったりと空に浮かんでいた

確かなことは風のようだ

 

 

birth 誕生

朝の
裏山の

ほそい暗い道の
先の

ちいさなほこらの傍に
泉はあった

そこに灰色の山椒魚たちはいた

数珠の卵は
連なっていた

そこに記憶の起源もあるだろう

水に濡れて連なるものたちのなかに
透明な儚い根を這わす

さよならといって
生まれてきた

 

 

danger 危険

春の
海だった

春の海でだった
小舟でひとり沖にでた

平らな海に
そよ風は吹いてた

それがとつぜん嵐になった

波のうえに
ほんとに木の葉だった

ペラは波の上に空転した
エンジンは止まった

もうだめなんだなと思ったんだ

ゆっくりと
景色を見たんだ

 

 

 

pretty かわいらしい きれいな

庭に
沈丁花の花が咲いた

白木蓮の蕾もひらいて
咲いた

休日に子どもたちの撮った写真展に
いきました

被災地を撮った写真でした

景色のなかに姉や弟や妹や
母や父や友だちの笑顔がありました

いといヒトたちを
抱きしめたいと思いました

 

 

leaf 葉

昨日
白木蓮の花が咲いた

のびた枝の先の蕾から
小さな白い花をすこし開いた

白木蓮は花が散ったあとに
丸い葉をひろげる

緑の丸い葉をたくさんひろげて
実を膨らませる

白木蓮のいのちは
繰り返している

白木蓮は繰り返している
今を生きることを繰り返している