もう
話せなくなった
食べれなくなった
自分で息もできなくなった
あなたを
見ていた
見ていた
なにもいえなかった
なにもコトバがでなかった
生きている
あなたの目蓋を指でひらいて見ていた
ただ見つめていた
ただ見つめていた
もう
話せなくなった
食べれなくなった
自分で息もできなくなった
あなたを
見ていた
見ていた
なにもいえなかった
なにもコトバがでなかった
生きている
あなたの目蓋を指でひらいて見ていた
ただ見つめていた
ただ見つめていた
雪はとけて
田んぼにはすみれの花の咲いて
山々は白く
風はわたっていった
雲雀が鳴いていたな
空高く鳴いていたな
母はながく臥せていた
姉はふとってしまった
ないものに与えよ
ただひとつの不在をあたえよ
ないものたちにひとつの不在をあたえよ
昨日は
突堤をみていた
風が強く吹いていた
休日には
いつも突堤をみている
突堤の向こうに
海と空が水平にひろがっている
変わらないものの
あちらとこちらに物語を探している
無い物語を探している
物語は始まっていた
物語は終わっていた
今朝
新幹線の窓から光る海原を見た
帰ったら
庭の白木蓮の花がひらいていた
沈丁花の小さな花も咲いて
匂っていた
晴れた空のしたに
海は青くひろがり風は渡っていった
カモメたちは
ならんでゆったりと空に浮かんでいた
確かなことは風のようだ
休日は
海にいくんです
わたし休日には海にいくんです
なにもかも失った
わけじゃないんです
なにもかも失くしたわけではないんです
今朝
スープをつくりました
鰹だしで
お味噌と牛乳をいれてみました
おいしかったな
君と食べたいな
朝の
裏山の
ほそい暗い道の
先の
ちいさなほこらの傍に
泉はあった
そこに灰色の山椒魚たちはいた
数珠の卵は
連なっていた
そこに記憶の起源もあるだろう
水に濡れて連なるものたちのなかに
透明な儚い根を這わす
さよならといって
生まれてきた
春の
海だった
春の海でだった
小舟でひとり沖にでた
平らな海に
そよ風は吹いてた
それがとつぜん嵐になった
波のうえに
ほんとに木の葉だった
ペラは波の上に空転した
エンジンは止まった
もうだめなんだなと思ったんだ
ゆっくりと
景色を見たんだ
庭に
沈丁花の花が咲いた
白木蓮の蕾もひらいて
咲いた
休日に子どもたちの撮った写真展に
いきました
被災地を撮った写真でした
景色のなかに姉や弟や妹や
母や父や友だちの笑顔がありました
いといヒトたちを
抱きしめたいと思いました
庭の隅の沈丁花の
花が咲いたよ
小さなピンクの花が
たくさん咲いたよ
匂いで気付いたんだ
すずしい匂いがしてきたんだ
庭の隅で咲いた
庭の隅で咲いた
昨日
子供たちの写真をみた
子供たちが被災地を撮った
写真だった
写真は片隅だとおもった
昨日
白木蓮の花が咲いた
のびた枝の先の蕾から
小さな白い花をすこし開いた
白木蓮は花が散ったあとに
丸い葉をひろげる
緑の丸い葉をたくさんひろげて
実を膨らませる
白木蓮のいのちは
繰り返している
白木蓮は繰り返している
今を生きることを繰り返している