鬼ごっこ *

 

さとう三千魚

 
 

昨日
帰ってきた

西馬音内では
女たちや

男たちが
編笠や頭巾を被り

かがり火に照らされてお囃子で踊るのを見ていた
みどりの稲穂が平らにひろがり風に揺れるのを見ていた

鬼が

鬼たちが
つかまえられない

母に送った薔薇が姉の庭に深紅に咲いていた
桑原正彦の絵が母の部屋の漆喰の壁に掛かっていた

母も
桑原も

いないが
いつか

また
会おう

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”スポーツとあそび” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

浜辺では

 

さとう三千魚

 
 

一日
部屋にいて

本を開いたり
写真を

サイトに上げたり
してた

夕方には
クルマで

浜辺に行った
珈琲をポットに入れて

ディランを聴いて
行った

“One too many mornings” だった

波がうねってた
飛沫があがってた

そのヒトは最後に母の詩を書いた

そして
九月に逝った

浜辺では激しい雨を受けた
浜辺では激しい雨を受けていた

 

* 2023年8月15日 敗戦の日に

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

公園で

 

さとう三千魚

 
 

七月には

近所の公園の
花たちに

水をやった

サルビア
ジニア
コリウス

どれも地上の花たちだった

毎朝
水をやった

たまに
夕方もやった


おいしいかい

花たちに話しかけた

七月が
終わった

八月に福生の街を女と歩いたことがあった

遠い日
夏草が茂っていた

光ってた

塀の外へ
歩いた

草叢に佇ってた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ラストダンスはわたしに ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 48     jyun 様へ

さとう三千魚

 
 

赤や
黄色

白や
ピンク

むらさきいろ

ドレスは
いろいろ

箪笥にある

わたしは百日草だった
ダンスホールの花だった

遠いのか
近いのか

遅いのか
早いのか

青いのか
深緑か

わたしにはわからない

最後に
踊りましょう

わたしと

 

 

***memo.

2023年7月24日(月)、自宅にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った48個めの詩です。

タイトル ”ラストダンスはわたしに”
好きな花 ”百日草”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ベランダ ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 47     yu 様へ

さとう三千魚

 
 

地上だろう

ベランダこそ
地上だろう

乾いている

なにも
置かない

洗濯物が風に揺れていた
いつまでも

風は
吹いた

そのひとは佇つだろう
ベランダに佇つだろう

佇む

あじさいだった
青い

 

 

***memo.

2023年7月17日(月)、自宅にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った47個めの詩です。

タイトル ”ベランダ”
好きな花 ”あじさい(青)”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

塀の外へ

 

さとう三千魚

 
 

昨日
こだまに乗った

いつも
こだまに乗る

11番A席だった

海側の席に座り
由比と

熱海と
小田原で

海を見る

新宿駅で降りた
中村屋で秋艸道人の書を見る

横浜の新高島駅のBankARTでAyakaのタイ語の絵を見る
URUNOの動くオブジェを見る

塀の外へ

歩いてみる
残るものがあるのか

歩いてみる

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

ミシンとギター ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 46     jyuki 様へ

さとう三千魚

 
 

ジーンズの


空いた穴

ザクザク
ミシンで

縫った

縫い目
尖って

ギター
キィーン 鳴った

薔薇赤い

赤い
赤い

薔薇

咲いた
裂いた

 

 

***memo.

2023年7月2日(日)、静岡市水曜文での即興詩イベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第十五回で作った46個めの花の詩です。

タイトル ”ミシンとギター”
好きな花 ”薔薇の花”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

いちばん古い記憶 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 45     kokoro 様へ

さとう三千魚

 
 

わすれてた

たぶん
おぼえて

ない
風が流れてた

れんげ草の
花の

香りがした

とつぜん
なみだ

流れた

 

 

***memo.

2023年7月2日(日)、静岡市水曜文での即興詩イベント、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」第十五回で作った45個めの詩です。

タイトル ”いちばん古い記憶”
好きな花 ”れんげ草の花”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

花嫁のお目覚め *

 

さとう三千魚

 
 

雨は
やんだ

庭の金木犀の木立の
下の

カサブランカの


落ちていた

一度に落ちたのか
雨に濡れて

花弁は
透明に

土の上に重なっていた

残っていた

花を落として
雌蕊は

残っていた

雌蕊は目覚めていた
育むものがある

 
 

* 高橋悠治のCD「サティ・ピアノ曲集 02 諧謔の時代」”スポーツとあそび” より

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

塀のこちらに

 

さとう三千魚

 
 

ちいさな
花を

いくつか
集めて

咲いた

白いあじさいの
花は茶色に変色した

緑に膨らませていた花芽をひらいて
咲いた

カサブランカ
香っていた

子どものころわからなかった
ヨイヨイ

ということ
わかったよ

そう言い
根石さんは電話の向こうで笑った

昼なのに暗い
雨にならない

塀の
こちらに

カサブランカの白く佇っている

ヨイヨイがいて
ボンクラがいる

 

 

 

#poetry #no poetry,no life