貨幣について、桑原正彦へ 26

 

昨日は
信濃町の駅で降りた

若い頃
ここに女と棲んでた

男の仔が生まれた

信濃町で
井上洋介さんの絵をみた

死体の横で
女たちが犯されていた

街が真っ赤に燃えてた
鬼が開いた女陰に合掌していた

今日
午睡から目覚めた

サイレンが鳴りひびいていた

 

 

 

貨幣について、桑原正彦へ 25

 

朝‬
‪雨だった‬

‪地面を叩きつけていた‬
‪東海道線の電車に乗った‬

‪雨も‬
‪買わないな‬

‪ヒトは冬の雨も買わない‬

‪電車の窓硝子が白く曇っていた‬
‪その向こうを‬

‪景色は‬
‪過ぎていった‬

‪リノリウムの床が‬
‪窓のカタチに光っていた‬

‪窓硝子の向こうを景色は流れていった‬

 

 

 

貨幣について、桑原正彦へ 24

 

アマリリスの花も萎れてしまった

一つ目の花は萎れてしまった
四つ目の花は

まだ
咲いている

萎れた花を
ヒトは買わないだろう

咲いている花も
萎れてしまった花も

アマリリスのピンク色の花だが

萎れてしまった
萎れている

萎れた花をヒトは買わない

 

 

 

貨幣について、桑原正彦へ 23

 

日野の駅で
雪の降るのを見てた

ゆらゆら
雪は

降りてきた

ゆらゆら
ゆらゆら

雪は
降りてきました

買わないだろう

ヒトは
雪を買わないだろう

ゆらゆらゆらゆらと降りてきた

アマリリスの花も萎れてしまった

萎れた花も
ヒトは買わないだろう

 

 

 

貨幣について、桑原正彦へ 22

 

昨日も
長い電車に乗って帰ってきた

暗い
多摩川を渡った

新丸子の
夜道を帰ってきた

ペルトを聴いてた
佇ちどまる

佇ちどまっていた

いつだったのか
日野の駅で

雪の降るのを見ていた

朝まで
見ていた

雪はゆらゆらと降りてきた
いくつも

 

 

 

貨幣について、桑原正彦へ 21

 

今日も

新丸子の
夜道を帰ってきた

老いた姉妹のいるウィンドウのまえで
佇ちどまる

貨幣は
この老女たちを買うことができるのか?

特別な者たちを
貨幣は低い場所に引き摺り落とす

無い言葉を抱け
亡き者たちを抱け

貨幣は亡き者を買うことができない

 

 

 

貨幣について、桑原正彦へ 20

 

貨幣も
焦げるんだろう

貨幣も燃やせば燃えるんだろう

新丸子の
夜道を帰ってきた

夜道では
老いた姉妹のいるウィンドウのまえで

佇ちどまる

それから
黄色い花のまえで佇ちどまる

過ぎ去るものと
佇ちどまるものと

それを包むものが世界にはある

 

 

 

貨幣について、桑原正彦へ 19

 

貨幣も
焦げるんだろう

貨幣も燃やせば燃えるんだろう

貨幣を燃やしたことがない
一度もない

新幹線から
流れていく景色を見てた

駅のホームで
過ぎていく貨物列車を見ていた

貨幣は
通過するだろう

貨幣は通過する幻影だろう

消えない
幻影だ