爽生ハム

 

 

女を殺した
好きすぎて殺した
ほっぺたに花弁を並べて
女の夏の涙と
生きてることへの興味を
不快にうばった
チョコレートを食べたら
帰ろう

異を唱える
女は漬物をつけていた
茄子だったと思う
女も仕事へ行った
女とは、よく車ででかけた
地図をピンクのマーカーでなぞり
来た道は消すようにした
空について
雲について
語り、景色を交換した
女は骨がなかった
病気らしい
女の身体はやわらかく
人差し指でつくと、腫れ物のように女の身体の裏側へ、女の裏側の肉が膨らんだ
乳首が増えていくようで
必死に母乳をのんだ
甘い塗装で車の盗難は
すぐ暴露た
盗難車でよく自殺をした
朝焼けが綺麗な日は
女を連れてよく自殺をした
女は綺麗だった
余計に申し訳なかった
女はプレハブのようだった
簡易的な匂いで
吐き気を誘う。女の前で吐くと
よく殺された
本当に美しい鈍器だった
水のような音がした
よく女とコンクリートになった
飛行機が上空を飛んでゆく
女は裸で手をふった
それを見て笑っていた
ずっと

 

 

 

300分

 

爽生ハム

 

 

腹痛だ
記憶の雨にうたれて
また腹痛だ
凍るバイクにえぐられた
それに近い全滅なのか
雨が入ってくる
にゅうこ 気づく にゅうこ にゅうこ触りで
のけぞる 見えたままの記憶
君の時間が見える
暮らしが灯る
腹痛の底になにかいる
優しく愛でた私の露悪が
汚い言葉ではない
いつものお茶のように
煎れて出して
君が作った飲みものだ
君が作った人がいる
私のような私がいる
暮れて産科を学びだす
凍るバイクにまたがった君が去ってゆく じとじとと投げだされた
ミルクと実技
きっと放心した被害の立像で降ろされる
呂律が怪しいならピン留めして
その言葉だけを喋ればいい
言葉が必要なら本物の言葉を返せばいい
ここまでにしとくか
キツく締まった娯楽に殺されそう

 

 

 

脱水しそう冒険しそう

 

爽生ハム

 

 

鎮魂がとっぴな組合の労働と等しくなった。
労働というのは時間がかかるもので、月光を待つまで働くこともできる。
私もそこに参加し、崇高な思い込みに辿りつく。
ひとつのプレイでふたつの鬱憤。
何億回のプレイで妊娠漬けが盛られる。
「勝手に流れましたね」詫びるために降りた駅で、私のみ、性欲に、うすら笑いを浮かべる。
時間の使い方が飾られている。
ふと、Hな気持ちが溢れそうでしたので、急いで凧をあげた。
遠方はるばる、凧をあげにきたのかと錯覚した。
空だった、いつのまにか、そこは空と呼ばれていた。
明るみの夕暮れを背に、遊覧ごっこしてしまう。
そこは、そのまま夜だったかもしれない。
商店街を歩く、風がそよいでる、魚拓を拾う。
なんだ、魚市場か。
凧もまだ空にある。
人が通り過ぎて愛撫ごと、その風が、私の魚拓の淵をさする。
聞く、私に似ているよ君は、「パレードについて知っていたら、教えてください」
私は詫びたくはなかった。
伝えたかった。
吐露で謝りたかった。
歩く人の道を照らす、パレードは中止だ。

 

 

 

オトズレル

 

爽生ハム

 

 

だれか来た
かおが来た
あしおと鳴らして
かた揺らし
身動きできないのか愛する人
だれかわからない
こえもする
したが伸びて風に揺れる
これはあの人のあの人じゃないか
何の音?何の音?
だれだろ、「はーい、はーい」
ここで出逢うか
かおに風が吹いている
骨のような
膜のような
ぶぶんに音が跳ねている

 

 

 

訛る

 

爽生ハム

 

 

皿を重ねれば
モスクが建ちました
所有された悲嘆は
もう聞こえません
皿は割れます
さっきの押し売りも
いまでは引いて買えます
皿に水をはれますか
スープでも構いません
皿の上のものを
食べます
無欲なホルモンです
数寄な憑きものです
仕方ありません
隙間を埋めます
これからは
いつも重ねます
皿を踏んでいます

 

 

 

最寄り駅には慣れた

 

爽生ハム

 

 

ガードレール越しに
空手家に恐喝された
その頃は
人を笑うと怒られ
笑ったように見えたら更に怒られ

飛び降り自殺も見たが
それは人間のようだった
今では断言できない

そういえば
私は笑わなかった
確実に
人を笑う事はしなかった

笑い顔はよく見ると
笑っていないかもしれない

私も
そろそろ
人を恐喝する歳になった

私も
ようやく
喜びと悲しみを混ぜこぜ、ぐちゃぐちゃ、ハツラツ、ハレンチ、メイド、久々といった感じです

能動的に突き動かされている
分割する
私も知りたいが

新聞を読める程度にまわりの人が死んでしまう

 

 

 

AR蛇籠

 

箪笥から、たぶん、狼狽した春を抜きだした。
そんな、手触りだけが残った。
墨のような、
跳ねが爪を食っている。
まさに今、食らう。
私はまもなく校歌をうたう、できるかぎりの轟音で。
例月、例月、例月、まわり、例月が年月を許さない。
区別がつかなくなってきている。
このまま、為体は、ねとねと。
淡緑の羊羹だというさじ加減か。

そろそろかな、うちあがりは。
この吸引、この吸収というべきか、のどごしに頼って疎かになった姿のまま待つ。
待つこともないが、

しゃあしゃあと終える時に、着衣していた土が香りだす。
柔軟剤より遥か遠くまで柔軟しきっていた。
香りに蜂が寄り道するように、このまま一生、目線を落とし、
偽わろうと寄り道を真似る。

道端の花束はこの街が機能しなかった場所を炙りだし、
機能しなかった校歌のように
そこを陣取る。

と、同等に雨が降る。
天気というものは、
こんなもんなんだと思います。

真面目に聴けない。
雨音が跳ねている。
どろりと脈うつ、
聴いたという感触の端から。
それは耳の輪郭と、この現象の端から
丸みだけを抽出して、
まるで
得体のしれない、
フルーツの盛り合わせである。

 

 

 

電源

 

爽生ハム

 

 

味噌汁の電源を入れ、
火気を床の間へはこんだ。
恐る恐る団子状になった生き物が
集まってくる、恐る恐る。
寛容な儀式のはじまり。
とある先生が着物で玄関先に立ち
袖口から、ぽろぽろと
銀紙のような皮膚片を無意識に落としている。
雪と桜を混ぜたような
目ざわりな排卵を、ぽろぽろと落とす。
招かれるのを待つ、傲慢な先生
迷ったあげく、待ちくたびれている。
まなざしの多さで先生は
もう、ほぼ、ブロンズ像である。
其の侭、先生をふさぎにいく
生き物の団子は
いずれ、形を覚え、先生の前で
接点のある人かのように通り過ぎていく。
先生の肩にぶつかり
先生を吊るしあげ、
感謝するのだろう。
先生よ、はやく床の間へ来てくださいね。と

 

 

 

草原は針のようで、水は途切れない

 

爽生ハム

 

 

ひたすら旅して、これ以上やってもつまらないな、飽きたなって事になって、そのまま悪意を置いて、帰ってこれれば、家族とか仕事とか作って幸せになっていたかもしれない。ていうか、私以外の旅仲間のおおよそは幸せになった。しかし、私は悪意を捨てきれず、なんせ一応、とても大きな悪意が、こんな綺麗な形で残っているのは、奇跡に近く、価値もあったので、まだ捨てずに取っておこうとした。それを懐にいれ現実に帰ってきたものの、その悪意を現実の方で爆発させたくなった。ただの街角で悪意を捨てるでも、置くでもなく、稀少価値があり純度や解像度が高く、他人に見てほしくて、ついつい計画的に悪意を放り投げた。

旅仲間はというと、惑星の中華街を出て谷底と川を渡った先くらいまでの、退廃した市民を対象とした市民ホールで、弧を描いて徘徊する黒い陽炎のあとを追い続け、弧を描く運動に参加する人になったり。勿論、旅仲間はオーディションを待っている迄の時間の訓練のようだが、実際のところ時計がないので、オーディションまで、あと何分というのを知らないでいる。でも旅仲間の時間の使い方には目を見張るものがあり、ホールの事務所で、この世界の元々の住人だと思われる事務スタッフの横のデスクに座り、ランチをとっていたりする。その時、陽炎は、旅仲間の弁当を見てたりする。それほど、ぱっと見、仲が良いが成立している。

弧を描く旅仲間は、最終オーディションまで来たので、明確な目標と情熱を持ちはじめた。其処にとどまった。
実際のところ、その先を知る前に私達は歩きはじめたので、弧を描く旅仲間の事を、一生、最終オーディション手前で弧を描く、永遠のランナーのようにして、私達はその旅仲間から、記憶するように別れた。

私達は、と言っても、私には、私、私、私、くらいに私の個人活動へ移りつつあったように思えた。距離感ができてきていて、惑星の道の草を触ったり、触らなかったりの判断と精度が恐ろしくあがっているように見えた。なにしろ、私は最後尾を歩いていたので見えるようにして見ていた、のだろう。
思い描くように触れ、思い過ぎたように触れなかった旅仲間の後ろ姿と手の両翼っぷりは、完全に悪意たっぷりに、悪意を蓄積していた。癒されていたとは逆の、伝染してるだった。

私達は中華街に戻り、階段の隅の方で、少なくとも四方のうちの半分は壁に覆われている、いかにもの代表的な階段の隅だった。そこで、思い悩み、歩き疲れただの、どうせ一緒だの、見ても見なくてもどっちでもいいだの、人間と風景がおかしいだの、そもそもの他人を他人からはじめるのが面倒だだの。だだっ広い大地の中の、狭い建築物の中の壁にもたれ、見た事が正確であるかのように、正確な、がっかりを披露していた。

 

 

 

ペーパームーン

 

爽生ハム

 

 

ダム湖に 住みつく研究者
浮いている主義の人

揺れる針の旋律を望み
脚がつかないように欠如を求め
病院へ 欠かさず 通う

雲がよどんでく

広告が街にばら撒かれ、東の方から、、、、雲がしおれてく

病院の帰り道に
いつもの、 ように
この街の公園は
郵便番号ごと消えた

過ぎる風を気にしてか
またとない散骨がグレンチェックの毛布に巻かれていた

「忘れてしまう あの番号を」
と、祖父は言う

「大丈夫 送れるよ」
と、私は言う

爽やかに行方をくらまし、祖父は麻痺した子供になる
プレパラートを爪で持つと、めりこむ透明は子供を覆った

「大丈夫」って
言うんじゃなかった
愛らしいけど 針に違いない

この街は容器だから
私も祖父も…
ホットスポットで、SF片手に
インベーダーゲームをしていた

公園が消えると
容器に水をはれる
水面下と
人の
思考が交わる
嬉しい悲鳴と新しい悲鳴

たぶん
この新しい悲鳴の方は
祖父には届かない
共鳴に近い
またとなく破損した、音階だから

ペーパームーン
に賄賂をおくる
人格化したから
なにもよりも 先に、祈るよ

「祖父を麻痺させたのも私じゃないか?」

また公園、

広告のコピーは、
脳裏に焼きつく 管理が媚びりつく
漏れてしまう
染みてしまう ペーパームーン

雲がくれ 動揺の戦慄
人格障害かもしれないが
必ず祈るよ

祖父と私は
順番が逆だったかもしれない

「お陰様で 自由になり、先程
退院したばっかりでして」

耳を、外気にめりこませ
冬の猿のように会話を
捜しはじめる

純喫茶 式 回廊 で、音階をすすり すすり スリルで
すする そして、ここは街