@140710  音の羽

 

萩原健次郎

 

写真 14-07-05 16 26 41

 

水の催し
そこから羽化した、小さな蝿が
暗雲に混じって
ぶれている。
そういう視界に
生き物とそうでないものの
区別をつけて
あるいは、蝿たちが見ている
わたしという、一塊も、そうでないものと
別けられている。

無機の兆しが
景に満ちて
だれかに、なつかしく思われたいと
夏の坂道に、ある。

ぶうぶう、ぶうぶう、
ずっと遠くから鳴っている
それが、営みの末なのか端なのか
確かめようともしない。

川の両岸に
花の子が、空へ垂直に
よろこんで、立っているようで
紅も、白も不憫で
あまり見つめられない。

ちらちらと、生きているようで
さみしそうにもしていない

里の人に育てられた
茄子に、ビニールの覆いにも
黙礼をして、
ただ、背を押されるようにして
気を、降ろしていく。

荷のない午後に
逆さまに。

 

 

 

suit スーツ

今日
荒井くんと会った

吾妻橋の藪で蕎麦を食べた
鳥わさが美味だった

荒井くんは
ジーンズと柄物のシャツだった

スーツは持ってないだろう

荒井くん

ぼくはやっと
スーツが似合うようになったよ

吾妻橋には雨が降っていた
吾妻橋に雨が降っていた

 

 

 

shirt ワイシャツ

おじさんは
麦わら帽子をかぶっていた

白いワイシャツを
着ていた

自作の浮きと仕掛けで
初夏の海浜公園で釣りをしていた

メジナを
たくさん釣っていた

おじさんはサラリーマンだったんだね

白いワイシャツで
釣りをしていた

メジナを釣っていた

 

 

 

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めざめると

窓から
西日が射していた

窓のむこうに
西の山は立っていた

雨は
あがっていた

突破するものたち
突き抜けるものたち

ヒトビトの思いに
沈み

ひかりを突破する

ないひかりを突破する
ないひかりのなかを突き抜けていく

 

 

 

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恵比寿で
佐藤時啓さんの

写真展をみた

会場の入り口と
出口に

原発と円形石柱遺跡の写真があり
ひかりは生まれていた

プリントは
印刷することだが

焼き付けることでもあったろう

記憶を焼き付ける

遠い
ヒトビトの

ない
記憶を焼き付けていた